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JR北海道の事故多発と国鉄分割民営化

2013-10-15 07:03:46 | 鉄道・公共交通/安全問題
(この記事は、当ブログ管理人が「週刊新社会」2013年10月15日号向けに執筆した原稿をそのまま掲載したものです。)

 9月19日、函館本線で起きた貨物列車の脱線事故以降、JR北海道の事故、トラブル、検査・保守作業の手抜きは底なしの様相を見せている。2007年に相次いだレール破断から危険が表面化し、2011年には石勝線を走行中の特急列車がトンネル内で火災を起こし、乗客が避難。今年になって、車両からの出火、燃料漏れ、脱線事故が続発している。

 すでに、2011年度の会計検査院の検査により、自社で決めた保守点検マニュアルすら守られていない実態や、点検記録そのものの不備が指摘されていた。にもかかわらず、JR北海道は放置し続け今日の事態につながった。現場では、線路が4センチ近くも広がりながら、人員や予算に余裕がなく、1年も修理されない場所もあった。本社に資材の更新を要求しても予算はつかず、人員も減らされた現場は疲弊。ついには運転士の覚せい剤使用や、ミスを起こした運転士が発覚を恐れてATS(自動列車停止装置)をハンマーで破壊する事件まで起きた。

 JR北海道は、会社発足時点と比較して、社員数を半分(民営化時14000人を現在、6800人)に削減したにもかかわらず、特急列車の運転本数は2倍(民営化時78本から現在、140本)に増やした上、スピードアップ(札幌~釧路間で45分短縮)も行っている。民営化前後の極端な採用抑制と人員削減の結果、会社の中核を担うべき40歳代の社員が全体の1割しかいないという、歪な年齢構成も明らかになっている。人員削減と強引な列車増発によって労働者が極限まで追い詰められていることが、重大な事故・トラブル続発の背景にある。保線作業の外注化、下請化も進行しており、経験のない未熟練労働者が現場に送り込まれていることも安全確保を困難にしている。



 表は、2012年度末におけるJR各社の概要である。営業キロ1km当たり社員数は、JR北海道が際だって少なく、以下、四国、九州、西日本、東日本、東海の順。経営状態の悪い会社ほど人減らしが進行していることは一目瞭然だ。

 一連の事故によって利用者のJR離れも広がっており、今年の乗客数は対前年比2割減少したとの報道もある。予算不足が事故を招き、利用者のJR離れがさらに会社の経営を悪化させる負のスパイラルに陥っている。国鉄分割民営化28年を経て、JR体制の破たんは明らかである。

 根本的原因は、日本での新自由主義改革の先駆けである国鉄分割民営化にある。10万人もの労働者を新会社から締め出した国家的不当労働行為はあらゆる企業に波及し、「首切り自由」社会、経営者やりたい放題社会の入口になった。

安倍政権は、「日本を世界で一番企業が活動しやすい国にする」と公言し、「首切り特区」導入などグローバル資本の無法の公認さえ狙う。労働者を全くの無権利状態に突き落とし、カネのために市民の命を脅かす「アベノミクス―成長戦略」に退場を宣告するときだ。

 英国では、鉄道民営化後、線路の傷みが放置された結果、4人が死亡する脱線事故(ハットフィールド事故)が起き、政府が民営化の失敗を宣言。鉄道施設の保有と維持管理が非営利企業(レールトラック社)に移され、事実上再公有化された。日本でも、JRの責任追及を徹底し市民の厳しい監視と規制で再国有化を求める運動のうねりを作り出さなければならない。

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