安全問題研究会(旧・人生チャレンジ20000km)~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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ローカル鉄道に国・自治体・住民はどう向き合うべきか(月刊『住民と自治』 2022年8月号掲載)
核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集(緑風出版)

●安全問題研究会が、JRグループ再国有化をめざし日本鉄道公団法案を決定!

●安全問題研究会政策ビラ・パンフレット
こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

破たんするJR体制、再国有化目指す闘いを

2013-10-12 14:08:08 | 鉄道・公共交通/安全問題
(この記事は、当ブログ管理人が「労働情報」第873号(2013年10月15日号)向けに執筆した原稿をそのまま掲載したものです。)

●JR西日本免罪の不当判決

 2005年、カーブで列車が脱線、乗客・運転士あわせて107人が死亡したJR福知山線脱線事故の裁判で、神戸地裁は9月27日、「事故を予見できなかった」として、JR西日本歴代3社長(井手正敬、南谷昌二郎、垣内剛の各被告)全員を無罪とする判決を言い渡した。労働者いじめの「日勤教育」など事故を生み出した企業体質、列車が所定時刻通りに走れない過密ダイヤ、人減らしなどの問題にいっさい触れないままだ。国鉄分割民営化で生まれた巨大国策企業・JR西日本におもねり、企業犯罪をことごとく免罪にしてきたこれまでの流れに沿った不当判決である。

 この裁判は、神戸地検が不起訴とした3社長について、遺族・被害者が神戸第1検察審査会に不服申し立てをした後、同審査会による2度の「起訴相当」議決を受けて強制起訴されていたものだ。

 閉廷後、神戸地裁正門前で行われた会見では、遺族側が「検察官役の指定弁護士の主張はすべて退けられ、弁護側の主張のみが丸ごと聞き入れられた。全く理解できない」などと判決を強く批判。井手被告はJR西日本主催の慰霊式をはじめ、2009年に発覚した航空・鉄道事故調査委員会(現・運輸安全委員会)の調査報告書漏えい事件を受けた説明会など、あらゆる場に欠席して逃げ回り、事故発生から裁判開始まで一度も遺族・被害者の前に姿を見せなかった。同被告の裁判での「謝罪」に関して、遺族のひとり、藤崎光子さんは「裁判所の心証をよくするためだけのものにしか見えず、信用できない」と怒りを表明した。企業犯罪の責任を問うために、組織罰を導入する新法の制定を求める声も相次いだ。

 JR西日本の「天皇」と呼ばれ、強権的な企業体質を作った張本人の井手正敬・元社長は、法廷でニヤニヤ笑いながら上を向く傲慢な態度だった。その姿にある遺族は「ナイフでも手元にあったら投げつけてやりたい」と怒りを爆発させた。

 遺族の意向を受け、検察官役の指定弁護士は控訴する見込み。JR史上最悪の列車事故の刑事責任を問うJR西日本歴代3社長の裁判は今後、高裁に舞台を移す。

●JR北海道から破たんする民営JR体制

 9月19日、函館本線で起きた貨物列車の脱線事故以降、JR北海道の事故、トラブル、検査・保守作業の手抜きは底なしの様相を見せている。2007年に相次いだレール破断から危険が表面化し、2011年には石勝線を走行中の特急列車がトンネル内で火災を起こし、乗客が避難。今年になって、車両からの出火、燃料漏れ、脱線事故が続発している。

 安全無視の実態も明らかになった。自社で決めた保守点検マニュアルすら守らず、線路は4センチ近くも広がったまま放置。歪みが見つかりながら1年も修理されない場所もあった。現場が本社に資材の更新を要求しても予算はつかず、人員も減らされた現場は疲弊。ついには運転士の覚せい剤使用や、ミスを起こした運転士が発覚を恐れてATS(自動列車停止装置)をハンマーで破壊する事件まで起きた。乗客の安全を守るべき鉄道の現場で、労働者が極限まで追い詰められている。

 北海道以外のJR各社も同じだ。JR東海は、会社発足以来、新幹線の保線を担当していた熟練労働者を外国人であることを理由に解雇。JR西日本でも、偽名で登録させられた下請労働者が、仕事で負傷したのに労災適用が受けられず訴訟で闘っている例がある。

 下請労働者の偽名による登録がまん延している理由について、ある労働者は次のように指摘する。「実際に現場に送り込まれているのは、昨日今日、来たばかりの未熟練労働者なのに、協力企業(下請け)の経営者は自分たちを熟練労働者の名前で登録させようとする。送り込んでいるのが熟練労働者であれば、JRからは高い請負契約料が支払われるので、協力企業の経営者にとってはうまみが大きいのです」。

 JR北海道の状況は筆者も未調査だが、JR西日本と同じ状態にあるのではないかと推測する。石勝線列車火災事故から2年以上も経つのにJR北海道がトラブルの原因さえ究明できずにいるのを見ると、現場で保線労働に従事しているのが熟練労働者だとJRは信じていたのに実際は未熟練労働者だった、ということはじゅうぶんにあり得るからだ。

 多重下請構造の中で労働者が誰に雇用されているのかわからないというのは、原発労働者と全く同じだ。JRでも原発でも、安全のため最も崇高な現場で働いている労働者をモノ扱いする企業の違法行為が、安全崩壊となって市民の生命を脅かしている。

●元凶は新自由主義

 危機的事態をもたらした根本的原因は、日本での新自由主義改革の先駆けである国鉄分割民営化にある。10万人もの労働者を新会社から締め出した国家的不当労働行為はあらゆる企業に波及し、「首切り自由」社会、経営者やりたい放題社会の入口になった。

安倍政権は、「日本を世界で一番企業が活動しやすい国にする」と公言し、「首切り特区」導入などグローバル資本の無法の公認さえ狙う。労働者を全くの無権利状態に突き落とし、カネのために市民の命を脅かす「アベノミクス―成長戦略」に退場を宣告するときだ。

 英国では、鉄道民営化後、線路の傷みが放置された結果、4人が死亡する脱線事故(ハットフィールド事故)が起き、政府が民営化の失敗を宣言。鉄道施設の保有と維持管理が非営利企業(レールトラック社)に移され、事実上再公有化された。日本でも、JRの責任追及を徹底し市民の厳しい監視と規制で再国有化を求める運動のうねりを作り出さなければならない。

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