法務問題集

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2015-03-19 00:00:00 | 民訴法
【事例】
・BはAに5,000万円の貸金債権を有しており、B所有の時価6,000万円の土地Xに、
 この貸金債権を被担保債権とする第1順位の抵当権の設定を受け、その登記を経ている。
・CはAに4,000万円の売買代金請求訴訟を提起し、確定勝訴判決を得ているが、担保権の設定は受けていない。

【問題】
01. Bが土地Xについて抵当権に基づく担保不動産競売を申し立て、その開始が決定した場合、Cは、どのような方法で土地Xから自身の債権の回収を図れるか、説明しなさい。

02. Cが土地Xについて強制競売を申し立て、その開始が決定した場合、Bは、どのような方法で土地Xから自身の債権の回収を図れるか、説明しなさい。

【解答例】
01.
 ・Cは担保権を持たない債権者(一般債権者)だが、Aに対する4,000万円の債権について確定勝訴判決を得ている。
 ・この場合、Cが土地Xから自身の債権を回収するための方法としては、
   (1)Bが申し立てた担保不動産競売について配当要求をする方法と、
   (2)土地Xを自ら差し押さえる方法
  が考えられる。

 ・まず、(1)の方法について、債務名義を有する債権者は、担保不動産競売について配当を要求できる
  (法188条、51条1項、87条1項2号)。
 ・債務名義の種類は法定されており、例えば、以下等がこれに該当する。
  ・確定判決
  ・仮執行の宣言を付した判決
  ・訴訟上の和解等の確定判決と同一の効力を有するもの
 ・配当が要求された場合、原則として、裁判所は配当期日において、債権者らの各債権の額や執行費用等の他、
  民法等の法律の規定に従って配当の順位や額を定め、これに基づいて配当表を作成する(法85条1項本文)。
 ・本事例についてみると、CはAに対する4,000万円の売買代金債権について、確定判決という債務名義を有しており、
  Bが申し立てた担保不動産競売について配当を要求できる。
 ・Bは5,000万円の貸金債権を被担保債権とする抵当権を有しており、Cは一般債権者である。
 ・したがって、Cが配当を受けられるのは、土地Xの価格6,000万円からBの被担保債権額5,000万円を控除した
  残り1,000万円ということになる。(執行費用等の点は除く)

 ・次に、(2)の方法について、配当要求の終期までに強制競売を申し立てた差押債権者は、
  強制競売による売却代金の配当を受けられる(法87条1項1号)。
 ・なお、本事例では、土地Xについて、Cが差し押さえるより先に、
  Bが担保不動産競売をすでに申し立てて開始が決定しているため、二重に申し立てられたことになるが、
  この場合、裁判所は、Cによる申し立てについてもさらに開始を決定する(二重開始決定。法47条1項。
 ・Cは、これによって自身の債権の回収を図れる。
 ・配当額等については、(1)の方法によるのと同様である。

 ・(1)の方法と(2)の方法を比較すると、(1)の方法は、コストがかからないというメリットがある。
 ・他方、(2)の方法は、(1)の方法よりもコストがかかる反面、先行する競売の申し立てが取り下げされた場合や
  取り消された場合にも、手続きがそのまま続行されるというメリットがある。

02.
 ・Bは、土地Xに一番抵当権の設定を受けている。
 ・この場合、Bが自身の債権を回収するための方法としては、
   (1)土地Xを自ら差し押さえる方法と、
   (2)Cが申し立てた強制競売について配当を受ける方法
  が考えられる。

 ・まず、(1)の方法については、土地Xには、Bが差し押さえるより先に、
  Cが強制競売をすでに申し立てて開始が決定しているため、二重に申し立てられたことになる。
 ・この場合、解答例01の(2)の方法と同様に、裁判所は、Bによる申し立てについてもさらに開始を決定する
  (二重開始決定、法188条、47条1項)。
 ・したがって、Bはこれによって自身の債権の回収を図れる。

 ・次に、(2)の方法については、担保権者は、他の債権者が強制競売をする場合においても、その差し押さえの前に担保権の
  設定登記を経ているときは、配当を自ら要求しなくとも、配当を当然に受けられる(法87条1項4号)。
 ・本事例についてみると、BはCが差し押さえる前に抵当権の設定登記をすでに経ていることから、
  配当要求等をすることなく配当を受け、自身の債権の回収を図れる。
 ・配当額等については、解答例01の場合と同様である。

【参考】
民事執行法 - Wikipedia