語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【経済】金持ちに1%の富裕税を課せ ~消費税の2倍の税収~

2012年03月08日 | 社会
 日本経済を苦しめてきた要因は、富裕老人・億万長者が激増し、彼らが多くの資産を独占していることだ。
 彼らの資産を社会に還元しなければ、日本経済の復活はあり得ない。富裕税は、今の日本にとって欠くべからざる制度だ。
 富裕から税を徴収するのは、実は簡単だ。日本全体から見れば、富裕層は1割に満たない存在だからだ。国民の多数が支持すれば、政治も霞が関も動かざるを得ない。

 財務省は、昨今、「所得」や「消費」にばかり課税しようとしてきた。特にバブル前後からは、低所得者の所得や消費に対する課税を強化してきた。
 日本の税収の3本柱は、法人税、消費税、所得税だ。
 しかし、税金は「資産」にもかけることができる。しかも、そのほうが、所得や消費にかけるよりも公平で大きな税収が得られる。
 所得税増税は給料を減らし、生活を苦しくさせ、消費を減らし、不景気を呼ぶ。消費税増税も、物価が上がり、生活を苦しくさせ、消費を減らし、景気を冷え込ませる。
 他方、所得-消費=資産は、いわば予備のお金だ。消費に影響しないし、国民生活が苦しくなるわけではない。
  今の日本経済は、資産が異常に膨らんでいる。先進国と比較して、所得や消費は高くないのに、資産だけが大きい。低所得者の所得や消費にばかり課税し、金持ちの資産に課税しなかったからでもある。

 資産に課税しなかったのは、金持ちが抵抗してきたからだ。資産持ち=金持ちが政治家に圧力をかけてきたからだ。
 そもそも、政治家自身が金持ちだ。小泉純一郎しかり、田中真紀子しかり、鳩山兄弟しかり。

 では、富裕層にどう課税するか。もっとも有効なのは富裕税だ。余剰資金にかける税金だ。フランスなど先進国の一部で導入されている。
 <例>1億円以上の資産の持ち主に1%の税金をかける。
 富裕税は、国民生活に直結しないし、金持ちにとっても負担感はさほど大きくない。
 そして、わずかな税率で、莫大な税収を生む。
 日本には個人金融資産が1,400兆円あり、不動産などと合わせれば8,000兆円の資産がある。これに1%の富裕税を課せば、80兆円の税収となる。資産の少ない人を課税免除しても、少なくとも20兆円以上になる。
 10年間の震災復興費(20兆円余)とほぼ同じ額の税収が、1年間で得られることになる。
 消費税を10%に増税した場合に新たに得られる税収(約10兆円)の2倍の税収を得られることになる。しかも、消費税増税は、消費の大幅減少や格差拡大につながるが、富裕税は消費に影響しないし、格差を改善する。
 富裕税を恒久税とすれば、毎年この額が入る。今の日本の財政問題はこれですべて片づくし、中間層以下の人たちにも大幅な減税ができるだろう。そうすれば消費も上向く。
 富裕税1%で、日本の懸案事項のほとんどが解決するのだ。
 金持ちが文句を言ってくれば、多数決で締めあげればよい。

 富裕税1%を課しても、海外へ資産を移したりはしない。海外に資産を移すだけで、資産の数%~数十%目減りするからだ。また、海外で資産を管理すれば、毎年数%以上の手数料がかかる。現実にはあり得ない。
 フランスでは富裕税を逃れるために海外に流出する金持ちが毎年数百人いる。2005年には649人いた。ただ、フランスには相続税もかかる。
 日本では、相続税の代替として富裕税を創設すれば、この弊害は防げる。相続税より富裕税のほうが実質的な負担感は低いのだ。
 また、フランスは同じ言語や文化を持つ地域が国外にたくさんあり、日本とは事情が違う。
 わずか1%の富裕税を逃れるために海外で暮らそうとする人は、まずいないだろう。

 以上、武田知弘「金持ちに1%の富裕税を課せ! ~数字が見抜く理不尽ニッポン 第10回~」(「週刊金曜日」2012年3月2日号)に拠る。

 【参考】「【経済】年々減る給与、年々増える会社の貯金 ~企業の内部留保金300兆円~
     「【経済】税制が作った“富裕老人”400万人
     「【経済】消費税は失業者を増やす
     「【経済】「億万長者激増」の原因 ~税制~
     「【経済】「億万長者激増=景気低迷原因」説 ~日本に5万人の億万長者~

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