米国の原子力技術者アーニー・ガンダーセンは、インターネットの動画で、3号機の爆発において使用済み核燃料プールで即発臨界が起こった可能性について解説している。今は爆発の原因を厳密に特定するのは困難な段階だが、上向きのベクトルで劇的な爆発が起こったこと、爆発位置の偏りを考えると、核燃料プールで不慮の臨界が起こった、と考えるのが自然だ。
4号機の核燃料プールは、今も日本列島を物理的に分断するほどの力を持っている。震災時、このプールに炉心数個分の使用済み核燃料が入っていた。大気圏内で行われた過去の核実験で放出された総量に匹敵するほどの放射性セシウムが眠っている。
恐ろしいことに、核燃料プールは遮蔽されていない。放射性物質が漏出し続けている。まさに「格納されていない炉心」だ。今は水で冷やしているが、プールにひびが入るなどして水位が下がり、冷却できなくなると、温度が上がって燃料棒の鞘であるジルコニウム合金が発火する。こうなると、もはや水では消火できない。核燃料が大気中で燃える。人類の誰も体験したことのない恐ろしい状況になる。今回の事故とは桁違いの膨大な放射性物質が出てくる。大惨事だ。
震災直後、日本では1、3号機の爆発に気をとられていたが、米原子力規制委員会(NRC)は、この事態を非常に心配していた。
ボロボロの4号機の燃料プールがガラッと崩れて、核燃料がバラバラと飛び散る事態も心配で、科学にとって未知の事態になる。今のところ、燃料プールに亀裂が入っただけで済んでいる。
事故現場は、大規模な余震に再び襲われる可能性が高い。福島原発の前に70kmを超える「双葉断層」が横たわっているからだ。阪神・淡路大震災のエネルギーの8倍に相当するM7.9の内陸直下型地震が起こるおそれがある。
過去を振り返れば、大地震の後には、再び大きな地震が起こることが多い。2004年、インド洋大津波を引き起こしたインドネシアのスマトラ島沖のM9.1地震の3ヵ月後にはM8.6の地震が起こった。
余震がとても怖い。地殻が大変化した日本では、どこでも大地震が起こり得る時代が続く。すべての原発を今すぐ廃絶しないといけない。
溶けた核燃料は、圧力容器から漏れて、その下のコンクリートの床に落ちた。メルトダウンした高温の核燃料が、コンクリートの土台も溶かして地中にめり込んだ可能性がある。溶け落ちた核燃料の温度が非常に高くなっていたと思われるからだ。昨年7月16日付けの茨城の地元紙「常陽新聞」によれば、気象庁気象研究所(つくば市)で、モリブデンやテクネチウムを大気中で検出した。4,000度異常の超高温でしか気化しない物質が、170km離れた筑波まで飛んできたのだ。それほど高温の核燃料は、コンクリートを突き抜けるのではないか。
核燃料が1ヵ所に集中して落ちていれば。他方、広がって落ちれば、全体の温度は徐々に下がっていく。そうすれば抜け落ちない。どういう形状で落ちたかで変わってくる。現時点では、誰も確認できない。
しかし、突き抜けていても、いなくても、格納容器からは既に大量の汚染水が漏れている以上、問題ではない。
日本では何故かセシウムのことしか議論しない。モリブデンやテクネチウムが飛んでいるとは、それより沸点の低いプルトニウムやウランなども放出されている、ということだ。しかし、議論すらしていない。
ガンダーセンが福島の子どもが履いた靴を測定すると、放射線量は靴底より靴紐のほうが高かった。結び目に溜まりやすいのだろう。セシウム以外の放射性物質も検出した。
スリーマイル島原発事故では、11年後の1990年になって、やっと大量の放射能が漏れていたことが分かった。白血病や肺癌の増加が指摘された。肺癌は、事故で放出された放射性キノセンとクリプトンの吸入によるものだろう。
今回の事故でもキノセンやクリプトンも出たが、まったく話題になっていない。内部被曝を防ぐ手だてがほとんど行われていない。
ガンダーセンの試算では、将来的に少なくともフクシマ事故の影響で100万人は癌が増える。
米国にも今回の事故による放射性物質が飛んできている。特に西海岸のオレゴンで高い数値が出ている。アラスカの先のアリューシャン列島の上空を通って、カナダ方面から西海岸の北側に辿り着いたのだろう。
海洋汚染は、すでにハワイまで広がっている。米国が日本に売った原発によって、米国の海洋が汚染されたのだ。
ストロンチウムはカルシウムと置き換わって骨や歯に蓄積する。乳歯を集めてみれば、分布が分かる。
しかし、法律上、本人の許可が必要で、難しい。
東日本ではもうすぐ雪が溶け、大量に川に流れ出し、河口地帯から汚染が広がっていく。
魚が汚染し、海底にも堆積する。
多くの人が福島にとどまっているが、政府は放射性物質の厳密な調査も行っていない。
極めて厳しい闘いが、今後数十年以上続く。
以上、広瀬隆&アーニー・ガンダーセン「福島第一原発事故は収束していない! 米国が恐れる「核燃料火災」の大惨事」(「週刊朝日」2012年3月16日号)に拠る。
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4号機の核燃料プールは、今も日本列島を物理的に分断するほどの力を持っている。震災時、このプールに炉心数個分の使用済み核燃料が入っていた。大気圏内で行われた過去の核実験で放出された総量に匹敵するほどの放射性セシウムが眠っている。
恐ろしいことに、核燃料プールは遮蔽されていない。放射性物質が漏出し続けている。まさに「格納されていない炉心」だ。今は水で冷やしているが、プールにひびが入るなどして水位が下がり、冷却できなくなると、温度が上がって燃料棒の鞘であるジルコニウム合金が発火する。こうなると、もはや水では消火できない。核燃料が大気中で燃える。人類の誰も体験したことのない恐ろしい状況になる。今回の事故とは桁違いの膨大な放射性物質が出てくる。大惨事だ。
震災直後、日本では1、3号機の爆発に気をとられていたが、米原子力規制委員会(NRC)は、この事態を非常に心配していた。
ボロボロの4号機の燃料プールがガラッと崩れて、核燃料がバラバラと飛び散る事態も心配で、科学にとって未知の事態になる。今のところ、燃料プールに亀裂が入っただけで済んでいる。
事故現場は、大規模な余震に再び襲われる可能性が高い。福島原発の前に70kmを超える「双葉断層」が横たわっているからだ。阪神・淡路大震災のエネルギーの8倍に相当するM7.9の内陸直下型地震が起こるおそれがある。
過去を振り返れば、大地震の後には、再び大きな地震が起こることが多い。2004年、インド洋大津波を引き起こしたインドネシアのスマトラ島沖のM9.1地震の3ヵ月後にはM8.6の地震が起こった。
余震がとても怖い。地殻が大変化した日本では、どこでも大地震が起こり得る時代が続く。すべての原発を今すぐ廃絶しないといけない。
溶けた核燃料は、圧力容器から漏れて、その下のコンクリートの床に落ちた。メルトダウンした高温の核燃料が、コンクリートの土台も溶かして地中にめり込んだ可能性がある。溶け落ちた核燃料の温度が非常に高くなっていたと思われるからだ。昨年7月16日付けの茨城の地元紙「常陽新聞」によれば、気象庁気象研究所(つくば市)で、モリブデンやテクネチウムを大気中で検出した。4,000度異常の超高温でしか気化しない物質が、170km離れた筑波まで飛んできたのだ。それほど高温の核燃料は、コンクリートを突き抜けるのではないか。
核燃料が1ヵ所に集中して落ちていれば。他方、広がって落ちれば、全体の温度は徐々に下がっていく。そうすれば抜け落ちない。どういう形状で落ちたかで変わってくる。現時点では、誰も確認できない。
しかし、突き抜けていても、いなくても、格納容器からは既に大量の汚染水が漏れている以上、問題ではない。
日本では何故かセシウムのことしか議論しない。モリブデンやテクネチウムが飛んでいるとは、それより沸点の低いプルトニウムやウランなども放出されている、ということだ。しかし、議論すらしていない。
ガンダーセンが福島の子どもが履いた靴を測定すると、放射線量は靴底より靴紐のほうが高かった。結び目に溜まりやすいのだろう。セシウム以外の放射性物質も検出した。
スリーマイル島原発事故では、11年後の1990年になって、やっと大量の放射能が漏れていたことが分かった。白血病や肺癌の増加が指摘された。肺癌は、事故で放出された放射性キノセンとクリプトンの吸入によるものだろう。
今回の事故でもキノセンやクリプトンも出たが、まったく話題になっていない。内部被曝を防ぐ手だてがほとんど行われていない。
ガンダーセンの試算では、将来的に少なくともフクシマ事故の影響で100万人は癌が増える。
米国にも今回の事故による放射性物質が飛んできている。特に西海岸のオレゴンで高い数値が出ている。アラスカの先のアリューシャン列島の上空を通って、カナダ方面から西海岸の北側に辿り着いたのだろう。
海洋汚染は、すでにハワイまで広がっている。米国が日本に売った原発によって、米国の海洋が汚染されたのだ。
ストロンチウムはカルシウムと置き換わって骨や歯に蓄積する。乳歯を集めてみれば、分布が分かる。
しかし、法律上、本人の許可が必要で、難しい。
東日本ではもうすぐ雪が溶け、大量に川に流れ出し、河口地帯から汚染が広がっていく。
魚が汚染し、海底にも堆積する。
多くの人が福島にとどまっているが、政府は放射性物質の厳密な調査も行っていない。
極めて厳しい闘いが、今後数十年以上続く。
以上、広瀬隆&アーニー・ガンダーセン「福島第一原発事故は収束していない! 米国が恐れる「核燃料火災」の大惨事」(「週刊朝日」2012年3月16日号)に拠る。
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