語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>放射能がれき ~自治体受け入れの2つの条件~

2012年03月18日 | 震災・原発事故
 放射能は、閉じこめることが原則だ。薄めて広げるのではなく、極限化、コンパクトにして閉じこめるのが放射能に向き合うときの原則だ。
 だから、ガレキを全国にばらまくのは、原則に反している。特に国がやろうとしていることは、

   (a)全国の自治体の焼却場で燃やせ。
   (b)燃やして出てきた焼却灰はそれぞれの自治体が勝手に処分しろ。

という二本柱だ。その二つとも間違っている。

(1)設備
 放射能は、放射能を取り扱うために設計された施設以外で扱ってはいけない。普通の焼却場で燃やしてはいけない。そんなことをすれば、放射能が外に飛び出してしまう。
 もし全国の焼却場で燃やすのであれば、放射能が飛び散らないようになっているかどうか、まず確認する。飛び散ってしまうようであれば、飛び散らないように設備を追加する。
 たいていの焼却施設にはついているはずのバグフィルターが正しく運用されていれば、セシウムはそれなりに取れると思う。ただし、本当にフィルターで放射能を捕捉できるか、確かめなければならない。バグフィルターで駄目なら、セラミックフィルターなり高性能フィルターなりを追加して、放射能を閉じこめる必要がある。

(2)焼却灰
 出てきた焼却灰をそれぞれの自治体で埋めてはいけない。
 本来は、専用の焼却場を現地に作るのが望ましい。
 そして、福島第一原発に返すのだ【注】。今後建設されるべき石棺や地下ダムに使用されるコンクリートに焼却灰を使うとよい。

(3)ガレキの自治体引き受けは次善の策
 国は、ガレキ対策を一切やっていない。いまだにガレキが野ざらしになっている。この状態を放置してしまうと、汚染した地域の子どもたちが被曝し続ける。
 子どもの被曝を全体でどれだけ減らせるかが勝負だ。だから、全国で引き受けるのは仕方ないと思う。ただし、引き受けるには前記2つの条件を満たさなければならない。 

(4)廃炉の方法
 極端に言えば2つの方法がある。
 (a)原発をそのままそこで墓場にする。人が近づかないようにドアを封印して使えないようにする。比較的何もしないでいいし、被曝も少なくて済むが、原発そのものがゴミになってしまう。
 すると、国土の狭い日本でやるのは得策ではない。ということで、日本は正反対の方法をとる、としている。今までの法律によれば、廃炉は次のように行われることになっている。
 (b)原発をどんどん切り刻んでいって、①圧力容器のような猛烈に汚れているもの、②あまり汚染されていないもの、を仕分けする。①は手のつけようがないので、深い穴を掘って底に埋める。②は、放射能としてお守りしたら大変だから、一般廃棄物として取り扱う(「クリアランス」)。
 一つの原発を切り刻んでいくと、60万立米のゴミが出る。それを放射能の汚れ度合いごとに仕分けしていくと、90何%かはほとんど汚れていないから、一般ゴミにできるはずだ。
 <例>放射能で汚れた鉄材は、一般ゴミにして、くず鉄業者が買い取って再生する。それが例えば家庭用フライパンになり、そのフライパンを使って食べたときに、人間の被曝量が10μSv/年を超えないと計算できるならばクリアンスしていい、という理屈だ。

 ただ、福島第一原発事故の場合、これまでの話とは事情が全然違う。
 まず、使用済み燃料を掴み出せるかどうか、不明だ。解体することは、まずできない。いずれにしても石棺だろうが、今までの普通の何でもない原発を廃炉にするのでも、30年、40年、50年かかると言っていた。だから、福島第一原発を廃炉にするには、はるかに長い時間がかかる。

 【注】汚染を引き起こしたのは東京電力の所有物だ。だから、東京電力に返すのがいちばん筋が通る。もともと福島第一原発にあったものだから、福島第一原発に返すのがいい。広大な敷地があるので、そこに核のゴミを持って行って墓場にすればいい。ただ、現在は事故を収束させるための戦場になっているので、難しいかもしれない。では、どうするか。(1)東京電力の本店に持って行って、本店のビルを核のゴミで埋め尽くす。社長室から始めて、次々と埋めていったらいい。(2)福島第二原発に持って行く。そこも膨大な敷地がある。これだけの厄災をばらまきながら、まだ自分の原発を動かしたいなどと東電に言わせてはいけないし、自分が引き起こした事故の責任をとらせることが必要だ。【小出裕章「東電、政府、保安院、御用学者--この国ではなぜ「大権力であれば責任を取らなくてよい」ことになっているのか」(「SIGHT」2012年SPRING)】

 以上、小出裕章「私たちは放射能とどう闘えばよいのか」(「週刊金曜日」2012年3月16日号)に拠る。
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【震災】がれき受け入れの利権 ~島田市長と産業廃棄物業者~

2012年03月18日 | 震災・原発事故
 桜井勝郎・静岡県島田市長は、昨年12月、岩手県のガレキを受け入れる意向を表明し、一躍、時の人となった。
 島田市は、茶の産地だ。その7割が東北や関東で消費されている。昨年5月、桜井市長は茶を持って被災3県を回った。被災地の惨状を目の当たりにし、できる限りの協力をしよう、と思ったという。
 その後、川勝平太・静岡県知事が県内市町村に「ゴミ処理能力の余力の1%でガレキの受け入れを」と呼びかけた。これに呼応したのが桜井市長だった。
 島田市のゴミ焼却移設は高性能で、処理量に余裕があり、最終処分場も自前のものだった。受け入れるガレキは、岩手県山田町と大槌町の木材に限定。放射性セシウムが100Bq/kg以下、焼却灰で500Bq以下という国より厳しい独自基準を設けた。

 しかし、一般市民の不安は根強かった。
 島田市は、ガレキの「試験焼却」を実施した。焼却灰の放射線量を測定し、数値を公表した。市役所のロビーなどで公開した。
 数値は、島田市の家庭ゴミだけのものが48Bq、ガレキの木材を混ぜたものが64Bqだった。
 島田市は、灰を専門機関に鑑定してもらい、3月中に受け入れの是非を正式決定する【注】。
 「これは損得ではなく、善悪の問題だ」と桜井市長は語り、一歩も引かない姿勢を明らかにする。

 他方、受け入れに反対する市民も譲らない。放射性物質への不安や恐れだけが理由ではない。
 (a)行政は、自分たちに都合のよい情報しか流さない(情報を操作する)。
 (b)被災自治体内で本当に処理する方策はないのか。
 (c)ガレキの広域処理は、国や東電の責任を曖昧にしてしまう。国や東電が責任を持ってやるべきだ。

 【注】桜井市長は、3月15日、市役所で会見し、岩手県大槌、山田両町の震災がれき(木材チップ)の受け入れを正式に表明した。

 以上、記事「放射線量がゼロでなければノー 漂流するがれき広域処理の行方」(「週刊ダイヤモンド」2012年3月10日号)に拠る。

   *

 桜井勝郎は、桜井資源株式会社(産業廃棄物処理業)の元社長。現社長は、桜井の親族だ。
 桜井は、高裁および最高裁で「競争入札妨害」で違法性を認定された(2011年4月12日確定)【注】。廃棄プラスチック処理業務を、入札額漏洩、談合、癒着により親族会社に受注させたのだ。

 【注】「島田市民の皆さん・関係業者の皆さん、市職員の皆さん、高裁と最高裁で「競争入札妨害」で違法性を認定された桜井勝郎市長に怒りの声を上げませんか!「天の声」「談合」「癒着」に関する情報を求めます」(HP「藤森克美法律事務所」) 

 以上、「被災がれき受け入れの静岡県島田市長、親族が産業廃棄物処理業者(市長は元社長)で、市長も廃プラスチック処理に絡む入札額漏洩癒着に絡み、4月に判決確定したばかりのクズ!と話題騒然」(ブログ「日々雑感」)に拠る。

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