放射能は、閉じこめることが原則だ。薄めて広げるのではなく、極限化、コンパクトにして閉じこめるのが放射能に向き合うときの原則だ。
だから、ガレキを全国にばらまくのは、原則に反している。特に国がやろうとしていることは、
(a)全国の自治体の焼却場で燃やせ。
(b)燃やして出てきた焼却灰はそれぞれの自治体が勝手に処分しろ。
という二本柱だ。その二つとも間違っている。
(1)設備
放射能は、放射能を取り扱うために設計された施設以外で扱ってはいけない。普通の焼却場で燃やしてはいけない。そんなことをすれば、放射能が外に飛び出してしまう。
もし全国の焼却場で燃やすのであれば、放射能が飛び散らないようになっているかどうか、まず確認する。飛び散ってしまうようであれば、飛び散らないように設備を追加する。
たいていの焼却施設にはついているはずのバグフィルターが正しく運用されていれば、セシウムはそれなりに取れると思う。ただし、本当にフィルターで放射能を捕捉できるか、確かめなければならない。バグフィルターで駄目なら、セラミックフィルターなり高性能フィルターなりを追加して、放射能を閉じこめる必要がある。
(2)焼却灰
出てきた焼却灰をそれぞれの自治体で埋めてはいけない。
本来は、専用の焼却場を現地に作るのが望ましい。
そして、福島第一原発に返すのだ【注】。今後建設されるべき石棺や地下ダムに使用されるコンクリートに焼却灰を使うとよい。
(3)ガレキの自治体引き受けは次善の策
国は、ガレキ対策を一切やっていない。いまだにガレキが野ざらしになっている。この状態を放置してしまうと、汚染した地域の子どもたちが被曝し続ける。
子どもの被曝を全体でどれだけ減らせるかが勝負だ。だから、全国で引き受けるのは仕方ないと思う。ただし、引き受けるには前記2つの条件を満たさなければならない。
(4)廃炉の方法
極端に言えば2つの方法がある。
(a)原発をそのままそこで墓場にする。人が近づかないようにドアを封印して使えないようにする。比較的何もしないでいいし、被曝も少なくて済むが、原発そのものがゴミになってしまう。
すると、国土の狭い日本でやるのは得策ではない。ということで、日本は正反対の方法をとる、としている。今までの法律によれば、廃炉は次のように行われることになっている。
(b)原発をどんどん切り刻んでいって、①圧力容器のような猛烈に汚れているもの、②あまり汚染されていないもの、を仕分けする。①は手のつけようがないので、深い穴を掘って底に埋める。②は、放射能としてお守りしたら大変だから、一般廃棄物として取り扱う(「クリアランス」)。
一つの原発を切り刻んでいくと、60万立米のゴミが出る。それを放射能の汚れ度合いごとに仕分けしていくと、90何%かはほとんど汚れていないから、一般ゴミにできるはずだ。
<例>放射能で汚れた鉄材は、一般ゴミにして、くず鉄業者が買い取って再生する。それが例えば家庭用フライパンになり、そのフライパンを使って食べたときに、人間の被曝量が10μSv/年を超えないと計算できるならばクリアンスしていい、という理屈だ。
ただ、福島第一原発事故の場合、これまでの話とは事情が全然違う。
まず、使用済み燃料を掴み出せるかどうか、不明だ。解体することは、まずできない。いずれにしても石棺だろうが、今までの普通の何でもない原発を廃炉にするのでも、30年、40年、50年かかると言っていた。だから、福島第一原発を廃炉にするには、はるかに長い時間がかかる。
【注】汚染を引き起こしたのは東京電力の所有物だ。だから、東京電力に返すのがいちばん筋が通る。もともと福島第一原発にあったものだから、福島第一原発に返すのがいい。広大な敷地があるので、そこに核のゴミを持って行って墓場にすればいい。ただ、現在は事故を収束させるための戦場になっているので、難しいかもしれない。では、どうするか。(1)東京電力の本店に持って行って、本店のビルを核のゴミで埋め尽くす。社長室から始めて、次々と埋めていったらいい。(2)福島第二原発に持って行く。そこも膨大な敷地がある。これだけの厄災をばらまきながら、まだ自分の原発を動かしたいなどと東電に言わせてはいけないし、自分が引き起こした事故の責任をとらせることが必要だ。【小出裕章「東電、政府、保安院、御用学者--この国ではなぜ「大権力であれば責任を取らなくてよい」ことになっているのか」(「SIGHT」2012年SPRING)】
以上、小出裕章「私たちは放射能とどう闘えばよいのか」(「週刊金曜日」2012年3月16日号)に拠る。
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だから、ガレキを全国にばらまくのは、原則に反している。特に国がやろうとしていることは、
(a)全国の自治体の焼却場で燃やせ。
(b)燃やして出てきた焼却灰はそれぞれの自治体が勝手に処分しろ。
という二本柱だ。その二つとも間違っている。
(1)設備
放射能は、放射能を取り扱うために設計された施設以外で扱ってはいけない。普通の焼却場で燃やしてはいけない。そんなことをすれば、放射能が外に飛び出してしまう。
もし全国の焼却場で燃やすのであれば、放射能が飛び散らないようになっているかどうか、まず確認する。飛び散ってしまうようであれば、飛び散らないように設備を追加する。
たいていの焼却施設にはついているはずのバグフィルターが正しく運用されていれば、セシウムはそれなりに取れると思う。ただし、本当にフィルターで放射能を捕捉できるか、確かめなければならない。バグフィルターで駄目なら、セラミックフィルターなり高性能フィルターなりを追加して、放射能を閉じこめる必要がある。
(2)焼却灰
出てきた焼却灰をそれぞれの自治体で埋めてはいけない。
本来は、専用の焼却場を現地に作るのが望ましい。
そして、福島第一原発に返すのだ【注】。今後建設されるべき石棺や地下ダムに使用されるコンクリートに焼却灰を使うとよい。
(3)ガレキの自治体引き受けは次善の策
国は、ガレキ対策を一切やっていない。いまだにガレキが野ざらしになっている。この状態を放置してしまうと、汚染した地域の子どもたちが被曝し続ける。
子どもの被曝を全体でどれだけ減らせるかが勝負だ。だから、全国で引き受けるのは仕方ないと思う。ただし、引き受けるには前記2つの条件を満たさなければならない。
(4)廃炉の方法
極端に言えば2つの方法がある。
(a)原発をそのままそこで墓場にする。人が近づかないようにドアを封印して使えないようにする。比較的何もしないでいいし、被曝も少なくて済むが、原発そのものがゴミになってしまう。
すると、国土の狭い日本でやるのは得策ではない。ということで、日本は正反対の方法をとる、としている。今までの法律によれば、廃炉は次のように行われることになっている。
(b)原発をどんどん切り刻んでいって、①圧力容器のような猛烈に汚れているもの、②あまり汚染されていないもの、を仕分けする。①は手のつけようがないので、深い穴を掘って底に埋める。②は、放射能としてお守りしたら大変だから、一般廃棄物として取り扱う(「クリアランス」)。
一つの原発を切り刻んでいくと、60万立米のゴミが出る。それを放射能の汚れ度合いごとに仕分けしていくと、90何%かはほとんど汚れていないから、一般ゴミにできるはずだ。
<例>放射能で汚れた鉄材は、一般ゴミにして、くず鉄業者が買い取って再生する。それが例えば家庭用フライパンになり、そのフライパンを使って食べたときに、人間の被曝量が10μSv/年を超えないと計算できるならばクリアンスしていい、という理屈だ。
ただ、福島第一原発事故の場合、これまでの話とは事情が全然違う。
まず、使用済み燃料を掴み出せるかどうか、不明だ。解体することは、まずできない。いずれにしても石棺だろうが、今までの普通の何でもない原発を廃炉にするのでも、30年、40年、50年かかると言っていた。だから、福島第一原発を廃炉にするには、はるかに長い時間がかかる。
【注】汚染を引き起こしたのは東京電力の所有物だ。だから、東京電力に返すのがいちばん筋が通る。もともと福島第一原発にあったものだから、福島第一原発に返すのがいい。広大な敷地があるので、そこに核のゴミを持って行って墓場にすればいい。ただ、現在は事故を収束させるための戦場になっているので、難しいかもしれない。では、どうするか。(1)東京電力の本店に持って行って、本店のビルを核のゴミで埋め尽くす。社長室から始めて、次々と埋めていったらいい。(2)福島第二原発に持って行く。そこも膨大な敷地がある。これだけの厄災をばらまきながら、まだ自分の原発を動かしたいなどと東電に言わせてはいけないし、自分が引き起こした事故の責任をとらせることが必要だ。【小出裕章「東電、政府、保安院、御用学者--この国ではなぜ「大権力であれば責任を取らなくてよい」ことになっているのか」(「SIGHT」2012年SPRING)】
以上、小出裕章「私たちは放射能とどう闘えばよいのか」(「週刊金曜日」2012年3月16日号)に拠る。
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