語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【TPP】米国製薬会社の要求 ~日本医療制度の営利化~

2012年03月28日 | 社会
 3月12日、TPPに係る国際シンポジウムが都内で開かれた。
 同じ日、TPP慎重派の国会議員と海外から招かれたゲストが有楽町駅前で街頭演説した。ピーター・メバードック・米NPO法人パブリック・シチズン医薬品担当課長いわく・・・・

 いま秘密裏に行われているTPP交渉の機密文書を一部入手した。これによれば、日本は、TPPの交渉のテーブルにつくことすらできない。にも拘わらず、米国や多国籍企業(製薬会社)は日本にTPPへの参加を求め、要求している。
 ●先発医薬品メーカーが治験データの独占権を持ち、ジェネリックを売りたい後発医薬品メーカーは治験をもう1回行わなければならない。
 ●日本の薬価を決める委員会(中央社会保険医療協議会)に米国の製薬会社を参加させること。
 ●政府が独自で決めたことについては、企業に異議申し立てする権利を与えること(ISD条項)。
 ●手術方法も特許にすること。特許を持つ企業の利益になる一方、医師の手術は制約を受けることになる。

 これは前代未聞の独占状態を招く。日本がTPP交渉に参加し、この提案が通れば、日本の医療制度は大きく変わる。【メバードック課長】
 米製薬会社の要求どおり独占権が強まると、医薬品価格がアジア太平洋全体で上昇し、安価な購入は阻害される。
 高齢者激増による医療費増大を抑制しようとしている厚労省は、ジェネリック薬品の割合を増やそうとしているが、こうした施策がTPP参加で進められなくなる。徹底した歳出削減が前提の消費税増税と、TPP参加は矛盾する。【山田正彦・前農林水産大臣】

 また、機密文書によれば、日本の厚生労働省や国民皆保険制度が標的にされている。健康を権利と考えている日本の医療制度は、営利モデルに置き換えられる。
 日本医師会は、3月14日、定例記者会見で、改めてTPP交渉参加に反対の立場を明らかにした。たとえ、米国が国民皆保険制度そのものの廃止は求めてこなかったとしても、医療に関係する特許や金融サービスなどの個別分野の制度改正によって国民皆保険制度の中身が空洞化する恐れがあるからだ。

 以上、横田一(ジャーナリスト)「TPP交渉の機密文書を入手 米企業が狙う日本医療制度の営利化」(「週刊金曜日」2012年3月23日号)に拠る。

 【参考】「【TPP】蚕食される医療保険制度 ~審査業務という盲点~
     「【経済】TPP>米韓FTAの「毒素条項」 ~情報を隠す政府~
     「【経済】TPPは寿命を縮める ~医療と食の安全~
     「【経済】中野剛志の、経産省は「経済安全保障省」たるべし ~TPP~
     「【経済】中野剛志『TPP亡国論』
     「【震災】原発>TPP亡者たちよ、今の日本に必要なのは放射能対策だ
     「【経済】TPPをめぐる構図は「輸出産業」対「広い分野の損失」
     「【経済】TPPで崩壊するのは製造業 ~政府の情報隠蔽~
     「【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~
     「【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差
     「【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~
     「【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~
     「【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~
     「【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~
     「【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~
     「【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判
     「【経済】TPPはいまや時代遅れの輸出促進策 ~中国の動き方~
     「【震災】復興利権を狙う米国
     「【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~
     「【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済再生の方向づけ
     「【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題
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