「消費増税関連法案」が今国会で成立するか否か、不透明だが、仮に成立しても一体改革はすでに失敗に終わっている。その理由は、次のとおり。
(1)2016年度以降の財源確保が、結局できていない。消費税率を10%に上げても、プライマリー・バランスを黒字化するには、あと17兆円足りない【注1】。
(2)引き上げた5%分のうち、なんと1%を使ってさらに社会保障を充実させる、としている。財源が確保できていないのに支出を拡大させるのは、無責任きわまる。
(3)そもそも、一般会計だけの帳尻合わせに収支している。財政再建の目標に「プライマリー・バランスの黒字化」を掲げた弊害が、ここに現れている。
(3)については、捕捉説明が必要だろう。
規模にして一般会計の2倍以上に及ぶ特別会計【注2】220兆円には、何ら手がつけられていないのだ。
<例>年金受給者への給付を行う「年金特別会計」のj年間の年金支給総額45兆円の内訳は、①国庫負担金(一般会計から出す)10兆円、②現役世代からの保険料+年金積立金の取り崩し=35兆円だ。
問題は、この積立金すら先食いして取り崩していることだ【注3】。さらには、今回の一体改革で導入を目指していたのだが、「マクロ経済スライド」【注4】に至っては、結局先送りする始末だ。
その結果、2012年度は、前年度比37%増と、過去最大規模の8兆8,000億円が取り崩される見込みだ。5年前には150兆円近くあった積立金は、2012年度末には3分の2の100兆円に減少。このペースでいけば2028年度には枯渇する。
そうなれば、国庫負担がまたも引き上げられる。結局は、一般会計も悪化する。社会保障改革と一体でなければ、いくら増税しても財政再建は不可能だ。
【注1】国と地方を合わせた政府債務の残高は、863兆円だ(2011年3月末)。GDP比で2倍の水準だ。そこで、政府は現在、財政再建の目標として基礎的財政収支を2020年度までに黒字にする、という国際公約を掲げている。現状では、国債償還20兆円を除く歳出70兆円に対し、税収による歳入はわずか40兆円。差額は30兆円にも上る。対GDP比7%弱の赤字を毎年垂れ流している。このプライマリー・バランスを黒字にするには、差額30兆円を埋めなければならない。だから政府は、何が何でも消費税を引き上げたい、としている。だが、これは迂遠なやり方だ。消費税率を5%引き上げても税収はわずか13兆円しか増えないのだ。これだけでも足りないのに、一方の歳出は増加の一途を辿っている。政府は、歳出の半分近くを占める社会保障費の自然増1兆円強は「自然増」として抑制する様子はない。
【注2】受益者負担や事業ごとの収支をより明確にすべきものについて、一般会計とは別に設けられている。
【注3】未だに4.1%という高い運用利回りを稼ぐ前提で年金制度が設計されていること、保険料の未納率が高いこと、が背景にある。
【注4】人口減少や物価に応じて年金給付額を変動させる。
以上、記事「社会保障と税の一体改革はすでに失敗している」(「週刊ダイヤモンド」2012年4月14日号)に拠る。
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(1)2016年度以降の財源確保が、結局できていない。消費税率を10%に上げても、プライマリー・バランスを黒字化するには、あと17兆円足りない【注1】。
(2)引き上げた5%分のうち、なんと1%を使ってさらに社会保障を充実させる、としている。財源が確保できていないのに支出を拡大させるのは、無責任きわまる。
(3)そもそも、一般会計だけの帳尻合わせに収支している。財政再建の目標に「プライマリー・バランスの黒字化」を掲げた弊害が、ここに現れている。
(3)については、捕捉説明が必要だろう。
規模にして一般会計の2倍以上に及ぶ特別会計【注2】220兆円には、何ら手がつけられていないのだ。
<例>年金受給者への給付を行う「年金特別会計」のj年間の年金支給総額45兆円の内訳は、①国庫負担金(一般会計から出す)10兆円、②現役世代からの保険料+年金積立金の取り崩し=35兆円だ。
問題は、この積立金すら先食いして取り崩していることだ【注3】。さらには、今回の一体改革で導入を目指していたのだが、「マクロ経済スライド」【注4】に至っては、結局先送りする始末だ。
その結果、2012年度は、前年度比37%増と、過去最大規模の8兆8,000億円が取り崩される見込みだ。5年前には150兆円近くあった積立金は、2012年度末には3分の2の100兆円に減少。このペースでいけば2028年度には枯渇する。
そうなれば、国庫負担がまたも引き上げられる。結局は、一般会計も悪化する。社会保障改革と一体でなければ、いくら増税しても財政再建は不可能だ。
【注1】国と地方を合わせた政府債務の残高は、863兆円だ(2011年3月末)。GDP比で2倍の水準だ。そこで、政府は現在、財政再建の目標として基礎的財政収支を2020年度までに黒字にする、という国際公約を掲げている。現状では、国債償還20兆円を除く歳出70兆円に対し、税収による歳入はわずか40兆円。差額は30兆円にも上る。対GDP比7%弱の赤字を毎年垂れ流している。このプライマリー・バランスを黒字にするには、差額30兆円を埋めなければならない。だから政府は、何が何でも消費税を引き上げたい、としている。だが、これは迂遠なやり方だ。消費税率を5%引き上げても税収はわずか13兆円しか増えないのだ。これだけでも足りないのに、一方の歳出は増加の一途を辿っている。政府は、歳出の半分近くを占める社会保障費の自然増1兆円強は「自然増」として抑制する様子はない。
【注2】受益者負担や事業ごとの収支をより明確にすべきものについて、一般会計とは別に設けられている。
【注3】未だに4.1%という高い運用利回りを稼ぐ前提で年金制度が設計されていること、保険料の未納率が高いこと、が背景にある。
【注4】人口減少や物価に応じて年金給付額を変動させる。
以上、記事「社会保障と税の一体改革はすでに失敗している」(「週刊ダイヤモンド」2012年4月14日号)に拠る。
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