福島県郡山市は、測定地点の多くが空間線量0.2μSv/時を超える。外部被曝量だけで年間1mSvを大幅に超える(推計)。
昨年6月、同市の小中学生14人らが、安全な場所で教育が受けられるよう、郡山市に対して疎開/避難を求める仮処分を申し立てた。この通称「ふくしま集団疎開裁判」は、「避難するかどうかを個人の自己責任にすべきではない」として、郡山市に疎開の措置を求めたものだ。経済的負担、自分だけ転校することへの子どもたちの抵抗などから、避難したくてもできずに悩んでいる家庭は多い。
昨年12月16日、福山地方裁判所郡山支部は、申し立てを却下した。その理由にいわく、
(a)100mSv未満の被曝では、晩発性障害の発生確率について実証的な裏づけがない。
(b)年間1mSv超の被曝量が見込まれるとしても、「これによりただちに生命身体に対する切迫した危険性が発生するとまでは認めることができない」。
(c)区域外通学などの手段(自主避難のこと)もある。
矢ヶ崎克馬・琉球大学名誉教授が裁判所に提出した意見書によれば、郡山市はチェルノブイリなら移住義務地域に相当し、子どもたちには今後、汚染度が郡山市と同程度の地域(ベラルーシのゴメリ地区)で発生したような深刻な健康被害が予想される。
ゴメリ地区では子どもたちに癌や心臓病などの健康被害が増えた、というデータがある。郡山市の子どもたちも、避難しないでいると、同様に癌や心臓病などの疾病を発症する可能性がある。・・・・そう訴えた申立人に対し、裁判所は事実認定することなく、「ただちに健康に影響はない」という政府の立場に従うにとどまったのだ。また、自主避難の方法もあるとして、避難を各家庭の問題とする立場をとった点でも行政に追随した。
戦争中ですら学童の集団疎開が行われた。14人の子どもたちの救済を求めることで、残りの福島の子どもたちを救う糸口になれば、という意図があったが、危険性を黙殺した人権侵害裁判だ。【柳原敏夫・弁護士/申立人代理人の一人】
申立人らは即時抗告し、2月末に抗告理由書と証拠を仙台高等裁判所に提出。それに対し、郡山市は4月16日までに反論を提出する予定だ。
昨年10~11月の2ヶ月間、希望者に個人積算線量計で測定したところ、年間8mSvに匹敵するくらい被曝していた未就学児がいた。にも拘わらず、郡山のアドバイザーは「健康に害のある数値ではない」と答え、市も教育委員会も「子どもたちの健康被害については誰もわからない」という認識だ。国から郡山市に出る除染費用は、今年度だけで330億円。これを使えば子どもたちを避難させられるが、市は避難よりも、除染で郡山をどう盛り上げるか、ということしか考えていない。【駒崎ゆき子・郡山市議】
ベラルーシではチェルノブイリ以前は甲状腺癌は10万人に0.1人しかいなかった。南相馬市、川俣町、浪江町、飯舘村の4市町村の30%の子どもの甲状腺にしこりと嚢胞が見つかった。これは深刻な「警告」だ。あらゆる健康異常に対して万全の備えをすることが子どもたちの命を救うことにつながる。放射能汚染は100年規模で続くもので、健康保護の対応は今からでも決して遅くはない。【矢ヶ崎名誉教授の仙台高裁へ提出した意見書】
申立人らは、この問題を申立人の児童・生徒だけの問題としないため、また裁判所に市民の声をアピールするため、ネットで賛同の呼びかけを行っている。
また、社会の問題として主権者である市民に疎開裁判の是非を問いかけるべく、2月に東京・日比谷で、3月に郡山市で、「世界市民法廷」を開催し、実際の裁判での一連のやりとりを再現した。陪審員となった市民/参加者の評決は、「避難させるべき」という意見がほとんどだった。
ブログ「ふくしま集団疎開裁判」は、現在もネット上で陪審員の評決を募集している。
以上、市川はるみ(フリージャーナリスト)+取材班「「ふくしま集団疎開裁判」に要注目」(「週刊金曜日」2012年4月13日号)に拠る。
【参考】「【原発】なし崩しの原発再稼働に抗えないメディア ~監視するアーカイブ~」
「【震災】原発>メディアで異変、脱原発世界会議、ふくしま集団疎開裁判」
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昨年6月、同市の小中学生14人らが、安全な場所で教育が受けられるよう、郡山市に対して疎開/避難を求める仮処分を申し立てた。この通称「ふくしま集団疎開裁判」は、「避難するかどうかを個人の自己責任にすべきではない」として、郡山市に疎開の措置を求めたものだ。経済的負担、自分だけ転校することへの子どもたちの抵抗などから、避難したくてもできずに悩んでいる家庭は多い。
昨年12月16日、福山地方裁判所郡山支部は、申し立てを却下した。その理由にいわく、
(a)100mSv未満の被曝では、晩発性障害の発生確率について実証的な裏づけがない。
(b)年間1mSv超の被曝量が見込まれるとしても、「これによりただちに生命身体に対する切迫した危険性が発生するとまでは認めることができない」。
(c)区域外通学などの手段(自主避難のこと)もある。
矢ヶ崎克馬・琉球大学名誉教授が裁判所に提出した意見書によれば、郡山市はチェルノブイリなら移住義務地域に相当し、子どもたちには今後、汚染度が郡山市と同程度の地域(ベラルーシのゴメリ地区)で発生したような深刻な健康被害が予想される。
ゴメリ地区では子どもたちに癌や心臓病などの健康被害が増えた、というデータがある。郡山市の子どもたちも、避難しないでいると、同様に癌や心臓病などの疾病を発症する可能性がある。・・・・そう訴えた申立人に対し、裁判所は事実認定することなく、「ただちに健康に影響はない」という政府の立場に従うにとどまったのだ。また、自主避難の方法もあるとして、避難を各家庭の問題とする立場をとった点でも行政に追随した。
戦争中ですら学童の集団疎開が行われた。14人の子どもたちの救済を求めることで、残りの福島の子どもたちを救う糸口になれば、という意図があったが、危険性を黙殺した人権侵害裁判だ。【柳原敏夫・弁護士/申立人代理人の一人】
申立人らは即時抗告し、2月末に抗告理由書と証拠を仙台高等裁判所に提出。それに対し、郡山市は4月16日までに反論を提出する予定だ。
昨年10~11月の2ヶ月間、希望者に個人積算線量計で測定したところ、年間8mSvに匹敵するくらい被曝していた未就学児がいた。にも拘わらず、郡山のアドバイザーは「健康に害のある数値ではない」と答え、市も教育委員会も「子どもたちの健康被害については誰もわからない」という認識だ。国から郡山市に出る除染費用は、今年度だけで330億円。これを使えば子どもたちを避難させられるが、市は避難よりも、除染で郡山をどう盛り上げるか、ということしか考えていない。【駒崎ゆき子・郡山市議】
ベラルーシではチェルノブイリ以前は甲状腺癌は10万人に0.1人しかいなかった。南相馬市、川俣町、浪江町、飯舘村の4市町村の30%の子どもの甲状腺にしこりと嚢胞が見つかった。これは深刻な「警告」だ。あらゆる健康異常に対して万全の備えをすることが子どもたちの命を救うことにつながる。放射能汚染は100年規模で続くもので、健康保護の対応は今からでも決して遅くはない。【矢ヶ崎名誉教授の仙台高裁へ提出した意見書】
申立人らは、この問題を申立人の児童・生徒だけの問題としないため、また裁判所に市民の声をアピールするため、ネットで賛同の呼びかけを行っている。
また、社会の問題として主権者である市民に疎開裁判の是非を問いかけるべく、2月に東京・日比谷で、3月に郡山市で、「世界市民法廷」を開催し、実際の裁判での一連のやりとりを再現した。陪審員となった市民/参加者の評決は、「避難させるべき」という意見がほとんどだった。
ブログ「ふくしま集団疎開裁判」は、現在もネット上で陪審員の評決を募集している。
以上、市川はるみ(フリージャーナリスト)+取材班「「ふくしま集団疎開裁判」に要注目」(「週刊金曜日」2012年4月13日号)に拠る。
【参考】「【原発】なし崩しの原発再稼働に抗えないメディア ~監視するアーカイブ~」
「【震災】原発>メディアで異変、脱原発世界会議、ふくしま集団疎開裁判」
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