語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【TPP】その先にあるFTAAP ~国家ビジョンの不在~

2012年04月11日 | 社会
 TPPの狙いとされるのは、次の4つ。
 (1)関税の撤廃・・・・輸出がしやすくなる。
 (2)共通のルール作り・・・・新興国での企業の活動や投資がしやすくなる。
 (3)FTAAPへのステップ・・・・参加国拡大でさらに大きな経済圏へ。
 (4)日本にとっての開放・・・・構造改革、競争力の強化。

 TPP推進派によれば、TPPは実は通過点にすぎない。徐々に参加国を増やしてアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)につなげるのが最終ゴールだ。
 FTAAPは、APEC21ヵ国・地域の貿易自由化をめざす。実現すれば、世界のGDPの56%を占める経済圏となる。TPPで作ったルールはFTAAPでもベースとなる可能性が高い。だから今のうちに参加しておくべし、というのが推進派の意見だ。

 FTAAPへの道筋として次の4つを同時並行で進めていくのが日本の戦略とされる。
 (a)TPP
 (b)ASEAN+3(日中韓) 
 (c)ASEAN+6(日中韓印豪、ニュージーランド)
 (d)日中韓FTA

 米国のTPP推進には、中国主導の(b)や日本主導の(c)が実現し、世界の成長センターであるアジアから締め出される事態を恐れた、という側面がある。また、存在感を示す中国をあわよくば(a)で作った自国に有利なルールに引きこみ、ダメなら対抗する、という狙いもある。

 日本は、中国に対しては(a)参加を、米国に対しては(b)、(c)、(d)をちらつかせて有利な条件を得ようとする。現在交渉が進むのは(a)だけで、他はまだ研究段階、という現実もある。

 (a)が刺激となって(d)が動き出したが、日本の目論みどおりにいく保証はない。
 いいとこどりを実現するには高度な戦略と交渉手腕が必要だ。本来、将来の日本がどうあるべきかという国家ビジョンがあって、そのための通商戦略があり、その上で(a)以下がある。
 ところが、政府は国家ビジョンを示していない。国民が混乱する所以だ。

 以上、記事「TPPの最大の利点は「輸出増」ではない」および「TPPはただの通過点 本当の問題は“その先”」(「週刊ダイヤモンド」2012年4月14日号)に拠る。

 【参考】「【TPP】米国製薬会社の要求 ~日本医療制度の営利化~
     「【TPP】蚕食される医療保険制度 ~審査業務という盲点~
     「【経済】TPP>米韓FTAの「毒素条項」 ~情報を隠す政府~
     「【経済】TPPは寿命を縮める ~医療と食の安全~
     「【経済】中野剛志の、経産省は「経済安全保障省」たるべし ~TPP~
     「【経済】中野剛志『TPP亡国論』
     「【震災】原発>TPP亡者たちよ、今の日本に必要なのは放射能対策だ
     「【経済】TPPをめぐる構図は「輸出産業」対「広い分野の損失」
     「【経済】TPPで崩壊するのは製造業 ~政府の情報隠蔽~
     「【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~
     「【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差
     「【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~
     「【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~
     「【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~
     「【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~
     「【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~
     「【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判
     「【経済】TPPはいまや時代遅れの輸出促進策 ~中国の動き方~
     「【震災】復興利権を狙う米国
     「【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~
     「【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済再生の方向づけ
     「【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題
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