(1)2014年から、医療・介護を中心とする社会保障制度の見直しが立て続けに進む。
2013年秋の臨時国会は、本来「成長戦略国会」になるはずだった。が、特定秘密保護法をめぐる喧噪に隠れて、目立たないまま、今後の社会保障制度改革の工程表を定める「社会保障制度改革プログラム法」が成立した。
その内容は多岐にわたる。負担増、給付抑制を伴う制度改正が多数盛り込まれ、実施時期も明示された。
(2)介護ではすでに、従来一律1割負担だった自己負担に初の2割負担を導入するなど、制度改正作業が大詰めを迎えている。政府は、2014年1月の通常国会に法案を提出し、2015年4月に施行する方針だ。
続いて今後、見直しが本格化してくるは医療だ。手はじめに2014年度から、特例で1割に据え置いてある70~74歳の事故負担を、法律どおりの2割に、今後5年間で段階的に引き上げ、年間2,000億円の税金投入を止める。また、高額療養費の上限額を所得に応じて一段と細かく設定、高所得者層の負担を増やす。
さらに、これからの改革で最も時間が必要になる医療提供体制(病院・病床機能)の見直しに向けては、その土台となる医療法の改正案を22014年度に提出。続く2015年度から、健康保険料の上限額引き上げを始めとする保険制度改定へ一気に駒を進める。
6年ごとに訪れる診療報酬・介護報酬の童子改定が次に予定されるのは2018年。そこまでに、医療・介護の改革をひととおり完成させるスケジュールだ。
(3)だが、道のりは坦々たるものではない。
中でも難航が予想されるのは、高齢者医療支援金に対する「総報酬割」の前面導入だ。現在、75歳以上が加入する後期高齢者医療に対する現役世代からの支援金は、加入者数に応じた「加入者割」が基本だが、これを所得連動の総報酬割に前面転換することがプログラム法に盛り込まれている。
総報酬割が全面導入されたら、中小企業の負担が軽くなる反面、高資金の大企業の負担は確実に増える。経団連や大企業で作る保険組合は反対している。制度改正が詰めの段階を迎える頃には、抵抗が一段と強まるはずだ。
(4)世界最速で進む高齢化を背景に、社会保障支出は急増、保険財政も苦しくなる。制度維持のためには、支払い能力の高い層については、ある程度負担を重くしていかざるを得ない。
だが、今回の社会保障改革は、単なる不乱増ちゃ給付抑制だけではない。医療と介護は、これからの10年間よりも、団塊世代が75歳を迎える2025年から先の10年間のほうが大変だ。
現在の供給体制のまmでは、特に首都圏や大都市部において医療・介護の受け入れ能力が圧倒的に不足する。
そのために行われるのが、自治体の権限強化だ。
医療については、国民健康保険の運営を市町村から都道府県に広げ、病床のコントロールも含めた差配を都道府県に一本化。一方の市町村は、国保の運営責任を緩めることで介護に役割を集中させる。
要するに、それぞれの地域に合った受け入れ体制となるように、自治体の役割を整理する・・・・これば、負担増に並ぶ、改革のも一本の幹になっている。
ただし、国保は高齢化によって支払いがかさむ反面、非正規雇用の増加から、収入基盤が細り、赤字が慢性化。こうした赤字体質を解消することが、都道府県に国保の運営を移す前提条件になっている。
その補填財源を生みだす方策として浮上したのが、「総報酬割」の全面導入だ。これが暗礁に乗り上げるようなことでもあれば、国保の持続可能性が高まらないどころか、2025年に向けた受け皿整備までも頓挫してしまう。
重要な歯車が一つでも欠けると、改革全体が機能不全に陥る可能性が出てくる。
今回の改革は。10%消費増税が決まった時点で、大枠が決定づけられていた。誰が政権をとっても逃れられない問題だ。安部政権は、実行力を試される。
□記事「医療・介護改革が本格化 受け入れ体制整備を急ぐ」(「週刊東洋経済」2013年12月28日-2014年1月4日号)
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2013年秋の臨時国会は、本来「成長戦略国会」になるはずだった。が、特定秘密保護法をめぐる喧噪に隠れて、目立たないまま、今後の社会保障制度改革の工程表を定める「社会保障制度改革プログラム法」が成立した。
その内容は多岐にわたる。負担増、給付抑制を伴う制度改正が多数盛り込まれ、実施時期も明示された。
(2)介護ではすでに、従来一律1割負担だった自己負担に初の2割負担を導入するなど、制度改正作業が大詰めを迎えている。政府は、2014年1月の通常国会に法案を提出し、2015年4月に施行する方針だ。
続いて今後、見直しが本格化してくるは医療だ。手はじめに2014年度から、特例で1割に据え置いてある70~74歳の事故負担を、法律どおりの2割に、今後5年間で段階的に引き上げ、年間2,000億円の税金投入を止める。また、高額療養費の上限額を所得に応じて一段と細かく設定、高所得者層の負担を増やす。
さらに、これからの改革で最も時間が必要になる医療提供体制(病院・病床機能)の見直しに向けては、その土台となる医療法の改正案を22014年度に提出。続く2015年度から、健康保険料の上限額引き上げを始めとする保険制度改定へ一気に駒を進める。
6年ごとに訪れる診療報酬・介護報酬の童子改定が次に予定されるのは2018年。そこまでに、医療・介護の改革をひととおり完成させるスケジュールだ。
(3)だが、道のりは坦々たるものではない。
中でも難航が予想されるのは、高齢者医療支援金に対する「総報酬割」の前面導入だ。現在、75歳以上が加入する後期高齢者医療に対する現役世代からの支援金は、加入者数に応じた「加入者割」が基本だが、これを所得連動の総報酬割に前面転換することがプログラム法に盛り込まれている。
総報酬割が全面導入されたら、中小企業の負担が軽くなる反面、高資金の大企業の負担は確実に増える。経団連や大企業で作る保険組合は反対している。制度改正が詰めの段階を迎える頃には、抵抗が一段と強まるはずだ。
(4)世界最速で進む高齢化を背景に、社会保障支出は急増、保険財政も苦しくなる。制度維持のためには、支払い能力の高い層については、ある程度負担を重くしていかざるを得ない。
だが、今回の社会保障改革は、単なる不乱増ちゃ給付抑制だけではない。医療と介護は、これからの10年間よりも、団塊世代が75歳を迎える2025年から先の10年間のほうが大変だ。
現在の供給体制のまmでは、特に首都圏や大都市部において医療・介護の受け入れ能力が圧倒的に不足する。
そのために行われるのが、自治体の権限強化だ。
医療については、国民健康保険の運営を市町村から都道府県に広げ、病床のコントロールも含めた差配を都道府県に一本化。一方の市町村は、国保の運営責任を緩めることで介護に役割を集中させる。
要するに、それぞれの地域に合った受け入れ体制となるように、自治体の役割を整理する・・・・これば、負担増に並ぶ、改革のも一本の幹になっている。
ただし、国保は高齢化によって支払いがかさむ反面、非正規雇用の増加から、収入基盤が細り、赤字が慢性化。こうした赤字体質を解消することが、都道府県に国保の運営を移す前提条件になっている。
その補填財源を生みだす方策として浮上したのが、「総報酬割」の全面導入だ。これが暗礁に乗り上げるようなことでもあれば、国保の持続可能性が高まらないどころか、2025年に向けた受け皿整備までも頓挫してしまう。
重要な歯車が一つでも欠けると、改革全体が機能不全に陥る可能性が出てくる。
今回の改革は。10%消費増税が決まった時点で、大枠が決定づけられていた。誰が政権をとっても逃れられない問題だ。安部政権は、実行力を試される。
□記事「医療・介護改革が本格化 受け入れ体制整備を急ぐ」(「週刊東洋経済」2013年12月28日-2014年1月4日号)
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