(1)大学3年の後半から一斉に始まる就職活動が、人によっては卒業まで1年半も続くほど長期化している。何百もの会社にエントリーしても面接まで残るのは数社、といった過酷な就職活動がありきたりのものになっている。
「就職ルック」「就職メイク」はもとより、就職のための「プチ整形」まで行う学生もいる。まさに「全身就活」だ。
しかし、「全身就活」は外見のことだけを意味するものではない。
(2)就職の採用基準は、学生にとって明らかではない。ために、不採用となった学生は、自己の内面を否定し続けることを強いられる。「自己分析」や「コミュニケーション能力」といった錦の御旗の下に、「会社にどうしたら気に入られるか」を考え続けることになる。その過程で、自分の考え方や感情を会社にとって好ましいものへ適合させようとする学生は少なくない。
全身就活とは、学生が自分の心や精神までをも就職先へ総動員する状態を指す。
(3)就職活動の実質的なスタートは、大学入学時点だ。1年生から就職向けの講座を受講したり、就活交通費のためのアルバイトを開始する学生は多い。
多くの学生が、サークル、ゼミ、アルバイト、留学などを「就職にとって有利か否か」という基準で選択する。
学生生活のあらゆる活動が、就活を成功させるための手段として位置づけられる
学生生活全体が、就活へ向けて組織化される「全身就活」が学生の間に広がっている。
(4)「全身就活」は諸アクターが、一緒になって支える。
(a)学費を負担している親・保護者・・・・正規雇用に就くことを強く望む。
(b)大学・短大・・・・少子化時代、学生を集めるのに腐心し、新卒就職率を上げることに全力を注いでいる。
(c)就職情報専門会社・・・・就活に必死な人が増えるほど利潤が上がるから、「就活の厳しさ」をアピールし、学生の不安を煽る。
(5)「全身就活」とは、学生の多くが自分の心身や学生生活全体を動員しなければならない過酷な状況のことだ。
「全身就活」しても、就職は簡単には決まらない。人件費削減によって利益を引き上げる企業の増加により、非正規雇用が増し、正規雇用が激減しているからだ。
「全身就活」は学生を追い込む。「就活鬱」や精神疾患が増加している。最悪の選択が「就活自殺」だ。就活の失敗が、自分の人格や全人生の否定であるかのように感じられてしまうことから発生している。「全身就活」の過酷さは明かだ。
(6)「ブラック企業」であることがわかていても、就職を決断する学生もいる。「全身就活」の過酷さから早く抜け出したい、という気持ちが「ブラック企業」であっても就職する動機の一つになっている。
就活の過程で世の中の現実に直面し、それまでは忌避していた「ブラック企業」への入社も「やむを得ない」ものと納得してしまうケースもある。「全身就活」は、理不尽さを受忍するプロセスになっている。
(7)「日本型雇用」が解体したにも拘わらず、新卒一括採用システムはそのままだ。
中途採用システムの整備、職業訓練の充実は、十分には進んでいない。
そんな旧態依然の状況の中で、学生の多くは「全身就活」を行わざるを得ないのだ。
□大内裕和「ブラックバイト・全身就活・貧困ビジネスとしての奨学金」(「現代思想」2013年12月号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【ブラック企業】ブラックバイト ~学生の苦難(1)~」
「【ブラック企業】激変する若年労働者市場 ~労使間の話し合いが不可欠 ~」
「【ブラック企業】調査対象の8割で違法行為 ~厚労省初「ブラック企調査」~」
「【ブラック企業】対策講座 ~騙されないための心得~」
「【ブラック企業】対策講座 ~就活~」
「【社会】ブラック企業大賞2013 ~ワタミフードサービス~」
「【社会】「ブラック企業」への反撃 ~被害対策弁護団が発足~」
「【社会】「ワタミ」の偽装請負 ~渡辺美樹・前会長/参議院議員~」
「【社会】学校もこんなにブラック ~公教育の劣化~」
「【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負」
「【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負・その後 ~裁判~」
「【本】ブラック企業 ~日本を食いつぶす妖怪~」
「【本】ブラック企業の実態」
「【社会】若者を食い潰すブラック企業 ~傾向と対策~」
「【本】ブラック企業の「辞めさせる技術」 ~違法すれすれ~」
「【心理】組織の論理とアイヒマン実験 ~ブラック企業の心理学~」
「【社会】第二回ブラック企業大賞候補 ~7社1法人~」
「【社会】ブラック企業における過労死、ずさんな労務管理 ~ワタミ~」
「【社会】ブラック企業の見抜き方 ~その特徴と実例~」
「就職ルック」「就職メイク」はもとより、就職のための「プチ整形」まで行う学生もいる。まさに「全身就活」だ。
しかし、「全身就活」は外見のことだけを意味するものではない。
(2)就職の採用基準は、学生にとって明らかではない。ために、不採用となった学生は、自己の内面を否定し続けることを強いられる。「自己分析」や「コミュニケーション能力」といった錦の御旗の下に、「会社にどうしたら気に入られるか」を考え続けることになる。その過程で、自分の考え方や感情を会社にとって好ましいものへ適合させようとする学生は少なくない。
全身就活とは、学生が自分の心や精神までをも就職先へ総動員する状態を指す。
(3)就職活動の実質的なスタートは、大学入学時点だ。1年生から就職向けの講座を受講したり、就活交通費のためのアルバイトを開始する学生は多い。
多くの学生が、サークル、ゼミ、アルバイト、留学などを「就職にとって有利か否か」という基準で選択する。
学生生活のあらゆる活動が、就活を成功させるための手段として位置づけられる
学生生活全体が、就活へ向けて組織化される「全身就活」が学生の間に広がっている。
(4)「全身就活」は諸アクターが、一緒になって支える。
(a)学費を負担している親・保護者・・・・正規雇用に就くことを強く望む。
(b)大学・短大・・・・少子化時代、学生を集めるのに腐心し、新卒就職率を上げることに全力を注いでいる。
(c)就職情報専門会社・・・・就活に必死な人が増えるほど利潤が上がるから、「就活の厳しさ」をアピールし、学生の不安を煽る。
(5)「全身就活」とは、学生の多くが自分の心身や学生生活全体を動員しなければならない過酷な状況のことだ。
「全身就活」しても、就職は簡単には決まらない。人件費削減によって利益を引き上げる企業の増加により、非正規雇用が増し、正規雇用が激減しているからだ。
「全身就活」は学生を追い込む。「就活鬱」や精神疾患が増加している。最悪の選択が「就活自殺」だ。就活の失敗が、自分の人格や全人生の否定であるかのように感じられてしまうことから発生している。「全身就活」の過酷さは明かだ。
(6)「ブラック企業」であることがわかていても、就職を決断する学生もいる。「全身就活」の過酷さから早く抜け出したい、という気持ちが「ブラック企業」であっても就職する動機の一つになっている。
就活の過程で世の中の現実に直面し、それまでは忌避していた「ブラック企業」への入社も「やむを得ない」ものと納得してしまうケースもある。「全身就活」は、理不尽さを受忍するプロセスになっている。
(7)「日本型雇用」が解体したにも拘わらず、新卒一括採用システムはそのままだ。
中途採用システムの整備、職業訓練の充実は、十分には進んでいない。
そんな旧態依然の状況の中で、学生の多くは「全身就活」を行わざるを得ないのだ。
□大内裕和「ブラックバイト・全身就活・貧困ビジネスとしての奨学金」(「現代思想」2013年12月号)
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【参考】
「【ブラック企業】ブラックバイト ~学生の苦難(1)~」
「【ブラック企業】激変する若年労働者市場 ~労使間の話し合いが不可欠 ~」
「【ブラック企業】調査対象の8割で違法行為 ~厚労省初「ブラック企調査」~」
「【ブラック企業】対策講座 ~騙されないための心得~」
「【ブラック企業】対策講座 ~就活~」
「【社会】ブラック企業大賞2013 ~ワタミフードサービス~」
「【社会】「ブラック企業」への反撃 ~被害対策弁護団が発足~」
「【社会】「ワタミ」の偽装請負 ~渡辺美樹・前会長/参議院議員~」
「【社会】学校もこんなにブラック ~公教育の劣化~」
「【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負」
「【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負・その後 ~裁判~」
「【本】ブラック企業 ~日本を食いつぶす妖怪~」
「【本】ブラック企業の実態」
「【社会】若者を食い潰すブラック企業 ~傾向と対策~」
「【本】ブラック企業の「辞めさせる技術」 ~違法すれすれ~」
「【心理】組織の論理とアイヒマン実験 ~ブラック企業の心理学~」
「【社会】第二回ブラック企業大賞候補 ~7社1法人~」
「【社会】ブラック企業における過労死、ずさんな労務管理 ~ワタミ~」
「【社会】ブラック企業の見抜き方 ~その特徴と実例~」