語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【都知事選】の戦い方 ~事実上の国政選挙に~

2014年01月09日 | 社会
 (1)この正月、もっとも旨い酒を飲んだのは誰か?
 申すまでもなく、東京電力に融資した銀行の幹部たちだ。
 昨年末、東電の事故処理について、
  (a)国民の税金と電力料金で銀行の借金を無傷で返し、
  (b)廃炉、除染、汚染水処理で新たな負担が生じても、全て国民と消費者にツケ回しして、銀行には一切危険が及ぶことはない、という仕組みが事実上完成した。
 かくて、特別背任を覚悟で実施した福島原発事故直後の東電への2兆円の無担保追い貸しも完全無傷で守られる。本当に運のよい人たちだ。
 彼らにコバンザメのように付き添って、そっと旨い汁を吸っている経産省官僚と自民党議員も、美酒に酔った口だ。

 (2)逆に、浮かない顔で新年を迎えた人も多い。
 消費増税の影響をもろに受ける小売店業者。
 遅々として進まぬ復興に苛立ちを強めながら新年を迎えた被災地の人々。
 猪瀬知事の失脚で知事選を迎える都民の中にも、オリンピックムードに水をかけられ、大事な時期にまた大金を使って選挙とは・・・・と浮かぬ顔をしている都民も多そうだ。

 (3)都知事選も悪くないかもしれない。
 「都知事選は地方選だ」と安倍首相は予防線をはった。
 しかし、東京は日本の顔。「どうせやるなら、東京から日本を変えよう」、change、change・・・・という都知事選にはならないか。
 国政の大きなテーマをとりあげて、都知事選を事実上の国政選挙にしてしまうのだ。

 (4)公約の第一は、脱原発。
 東京都エネルギー戦略会議を立ち上げ、脱原発のエネルギー基本計画を作る。東電の大株主として、東電に脱原発を迫る。猪瀬知事は、脱原発を口にできなかった。東京に電力を販売する独占的企業=東電に対して、電力料金に係る説明を求める条例を作るのだ。

 (5)公約の第二は、日米地位協定の改定。
 米軍の巨大な支配空域(「横田ラプコン」)を日本側に取り戻す。
 受け入れない場合、横田基地(東京都)への各種サービスを停止する、と通告する。
 横田ラプコンがなくなれば、1都8県にまたがる治外法権の空域が日本に取り戻され、羽田離着陸の際に房総沖まで旋回を強要される民間機の、大幅な飛行時間縮減が可能になる。羽田の利便性向上にも寄与できる。
 名護市長選とのタイアップも可能だ。

 (6)基地問題は、特定秘密保護法の問題でもある。
 騒音対策、安全対策などに係る米軍のとの過去の折衝の議事録を前面開示するよう政府に要求する。
 情報公開法、公文書管理法の抜本的改正とともに、特定秘密保護法についても、第三者による監視機関の設置や、都職員が特定秘密を取り扱うこともあることから、国による都職員の適性評価の制限を求める。

 (7)徳州会マネー問題の徹底追求を衝けば、安倍政権も慌てるだろう。
 石原都政や国政とのつながりを解明する突破口を提供することになれば、自民党政権そのものが揺らぐ可能性がある。

 (8)その他、農業、医療などでの大胆な規制緩和など、安倍政権がやらない課題を掲げるのだ。
 単なる人気投票、後出しじゃんけん、などと揶揄される都知事選だが、こうしたテーマで戦える候補者が出てくれば、地方選挙とはいえ、真剣に政策が議論され、安倍政権に「ノー」を突きつける選挙になるだろう。

□古賀茂明「謹賀新年 都知事選の夢 ~官々愕々第93回~」(「週刊現代」2014年1月18日号)
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