(1)荒川弘『銀の匙(Silver Spoon)』
「Contests Award of Japan Food(日本食・日本食文化表彰)」グランプリ。
われわれは、他の命を食することによって自らの命をつないでいくという事実に若者たちが真摯に向き合う物語。
さわやかな酪農青春グラフィティ。少年から一般人にまで酪農産業をしっかり理解させる面を持つ、すばらしい啓発漫画。
1,200万部超。アニメ化済み。実写版映画が制作中。
(2)石川雅之『もやしもん』
「Contests Award of Japan Food(日本食・日本食文化表彰)」漫画部門金賞。
第12回手塚治虫文化賞マンガ大賞。
第32回講談社漫画賞(一般部門)。
肉眼で菌を見ることのできる特異な能力を持つ学生(もやしもん)を中心とした農大発酵研究室に集う学生たちの青春コメディ。
「発酵」という日本文化に欠かせない特徴に着目し、「菌が見え、会話もできる」といわれる日本の発酵職人の技能を学園グラフィティ漫画に取り入れている。その発酵解説は、十分な生物化学的な知識に裏打ちされている。みそ、しょうゆ、調味料などを正確に描いていて、発酵食品を積極的に食べる食生活(菌活)ブームの火付け役の一つ。
ゴスロリ女装、ボンテージ系ファッションなどのサブカルチャー味を織り込み、日本の若者文化感をよく「醸し」ている。海外の興味を引く要素が少なくない。要するに、漫画自体の面白さとともに、海外への発信能力がある。日本文化の基幹を成す発酵食文化輸出にも貢献し得る作品。
テレビドラマ化、アニメ化済み。
(3)尾瀬あきら『夏子の酒』
「Contests Award of Japan Food(日本食・日本食文化表彰)」漫画部門銀賞。
主人公(夏子)が兄の死を機に実家(酒造)に帰り、幻の酒「龍錦」を復活させて日本一の銘酒を造る物語。
酒造りの各工程の詳細を描いただけでなく、酒米と酒の関係、日本酒業界の問題にも触れた。
「龍錦」は、実在の「亀の尾」がモデル、とされる。
一般には知られていなかった日本酒の裏舞台を、綿密な調査に基づき、物語性豊かな漫画に仕立て、広く周知した。この漫画がきっかけとなって、日本酒を飲む女性が飛躍的に増えた、とされる。日本中の酒造に影響を与え、日本酒全体の品質向上につながった。少し前の作品だが、環境問題への対処も含め、日本酒の味、魅力、文化を海外に向けて発信し得る魅力を持つ作品。
本作品の根底には、人が気づき、学び、育つことへの深くて優しいまなざしがある。
テレビドラマ化済み(1994年)。
(4)安部夜郎『深夜食堂』
「Contests Award of Japan Food(日本食・日本食文化表彰)」漫画部門銅賞。
第55回小学館漫画賞(一般向け部門)。
第39回日本漫画家協会賞大賞。
大都会の片隅で深夜から早朝に開く小さな「めしや」を舞台にした物語。メニューは豚汁定食、ビール、酒、焼酎のみ。とはいえ、マスターが手持ちの材料で多彩な食事を作ってくれる。
日本の食生活の基盤「食堂」と多様な人間群を交差させたユニークな短編群。蘊蓄系漫画とは一線を画し、食と個人的な思いと思い出を結びつける物語が味わい深い。
マスターと多彩な常連客との交流が織りなす人間模様と、その時々にマスターが作る食事の妙味が若い女性も惹きつける。
海外へも、日本の「めしや」「食堂」という食生活の基盤を伝える作品。伝説の漫画雑誌「ガロ」的画風と、昭和の赤ちょうちん的食堂の人情物語の交わりが絶妙な味わいを醸す。
韓国、台湾、中国でも評判の作品。
テレビドラマ化済み(2009年)。
(5)雁屋哲・原作/花咲アキラ・作画『美味しんぼ』
「Contests Award of Japan Food(日本食・日本食文化表彰)」漫画部門審査委員特別賞。
第32回小学館漫画賞(青年一般部門)。
食の蘊蓄を縦糸に、新聞記者とその父(美食家)の親子対決を横糸にする物語。
食産業を本格的に取り上げた初めての漫画。
全国の食堂やラーメン屋に一番そろえられている漫画。各地の食を全国に知らしめ、地域の食の切磋琢磨を促した。
食の安全性などに係る時事性を盛り込んで論議を呼ぶこともあるが、今や食漫画の古典。漫画を通じて食に注目を集めた貢献度は抜群。特別賞が授与されたゆえんだ。
単行本は1億冊を超え、テレビアニメ化済み、テレビドラマ化済み、映画化済み。
あげくのはては、連載30周年の2013年に、朝日新聞と読売新聞が「究極vs.至高」のメニュー対決をおこなった。
□妹尾堅一郎「海外への発信力も抜群 食文化に貢献する漫画 ~戦略思考への鍛え方 新ビジネス発想塾 第82回~」(「週刊東洋経済」2013年12月28日-2014年1月4日号)
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「Contests Award of Japan Food(日本食・日本食文化表彰)」グランプリ。
われわれは、他の命を食することによって自らの命をつないでいくという事実に若者たちが真摯に向き合う物語。
さわやかな酪農青春グラフィティ。少年から一般人にまで酪農産業をしっかり理解させる面を持つ、すばらしい啓発漫画。
1,200万部超。アニメ化済み。実写版映画が制作中。
(2)石川雅之『もやしもん』
「Contests Award of Japan Food(日本食・日本食文化表彰)」漫画部門金賞。
第12回手塚治虫文化賞マンガ大賞。
第32回講談社漫画賞(一般部門)。
肉眼で菌を見ることのできる特異な能力を持つ学生(もやしもん)を中心とした農大発酵研究室に集う学生たちの青春コメディ。
「発酵」という日本文化に欠かせない特徴に着目し、「菌が見え、会話もできる」といわれる日本の発酵職人の技能を学園グラフィティ漫画に取り入れている。その発酵解説は、十分な生物化学的な知識に裏打ちされている。みそ、しょうゆ、調味料などを正確に描いていて、発酵食品を積極的に食べる食生活(菌活)ブームの火付け役の一つ。
ゴスロリ女装、ボンテージ系ファッションなどのサブカルチャー味を織り込み、日本の若者文化感をよく「醸し」ている。海外の興味を引く要素が少なくない。要するに、漫画自体の面白さとともに、海外への発信能力がある。日本文化の基幹を成す発酵食文化輸出にも貢献し得る作品。
テレビドラマ化、アニメ化済み。
(3)尾瀬あきら『夏子の酒』
「Contests Award of Japan Food(日本食・日本食文化表彰)」漫画部門銀賞。
主人公(夏子)が兄の死を機に実家(酒造)に帰り、幻の酒「龍錦」を復活させて日本一の銘酒を造る物語。
酒造りの各工程の詳細を描いただけでなく、酒米と酒の関係、日本酒業界の問題にも触れた。
「龍錦」は、実在の「亀の尾」がモデル、とされる。
一般には知られていなかった日本酒の裏舞台を、綿密な調査に基づき、物語性豊かな漫画に仕立て、広く周知した。この漫画がきっかけとなって、日本酒を飲む女性が飛躍的に増えた、とされる。日本中の酒造に影響を与え、日本酒全体の品質向上につながった。少し前の作品だが、環境問題への対処も含め、日本酒の味、魅力、文化を海外に向けて発信し得る魅力を持つ作品。
本作品の根底には、人が気づき、学び、育つことへの深くて優しいまなざしがある。
テレビドラマ化済み(1994年)。
(4)安部夜郎『深夜食堂』
「Contests Award of Japan Food(日本食・日本食文化表彰)」漫画部門銅賞。
第55回小学館漫画賞(一般向け部門)。
第39回日本漫画家協会賞大賞。
大都会の片隅で深夜から早朝に開く小さな「めしや」を舞台にした物語。メニューは豚汁定食、ビール、酒、焼酎のみ。とはいえ、マスターが手持ちの材料で多彩な食事を作ってくれる。
日本の食生活の基盤「食堂」と多様な人間群を交差させたユニークな短編群。蘊蓄系漫画とは一線を画し、食と個人的な思いと思い出を結びつける物語が味わい深い。
マスターと多彩な常連客との交流が織りなす人間模様と、その時々にマスターが作る食事の妙味が若い女性も惹きつける。
海外へも、日本の「めしや」「食堂」という食生活の基盤を伝える作品。伝説の漫画雑誌「ガロ」的画風と、昭和の赤ちょうちん的食堂の人情物語の交わりが絶妙な味わいを醸す。
韓国、台湾、中国でも評判の作品。
テレビドラマ化済み(2009年)。
(5)雁屋哲・原作/花咲アキラ・作画『美味しんぼ』
「Contests Award of Japan Food(日本食・日本食文化表彰)」漫画部門審査委員特別賞。
第32回小学館漫画賞(青年一般部門)。
食の蘊蓄を縦糸に、新聞記者とその父(美食家)の親子対決を横糸にする物語。
食産業を本格的に取り上げた初めての漫画。
全国の食堂やラーメン屋に一番そろえられている漫画。各地の食を全国に知らしめ、地域の食の切磋琢磨を促した。
食の安全性などに係る時事性を盛り込んで論議を呼ぶこともあるが、今や食漫画の古典。漫画を通じて食に注目を集めた貢献度は抜群。特別賞が授与されたゆえんだ。
単行本は1億冊を超え、テレビアニメ化済み、テレビドラマ化済み、映画化済み。
あげくのはては、連載30周年の2013年に、朝日新聞と読売新聞が「究極vs.至高」のメニュー対決をおこなった。
□妹尾堅一郎「海外への発信力も抜群 食文化に貢献する漫画 ~戦略思考への鍛え方 新ビジネス発想塾 第82回~」(「週刊東洋経済」2013年12月28日-2014年1月4日号)
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