語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~

2014年01月20日 | 社会
 (1)若者の「安部崇拝」とでもいえる現象をどう理解するか。
 2013年12月29日付け朝日新聞が報じた、年代ごとの自民党に対する「イメージ」調査の結果に手がかりがある。
  (a)「安定」と「変革」の程度について、1を最も変革、6を最も安定として数字で表して(中間点が3.5)自民党に対するイメージを調べると、
   ①年代が若いほど、「変革」のイメージが強くなる。
   ②70歳以上では、変革と安定の中間点3.5よりわずかに「安定」寄りの3.51だが、
   ③年代が若くなるに従って「変革」の度が強まり、20代では、3.03まで上がる。
   ④昨年夏の参院選比例区で自民党に投票した20代は、2.92と特に高い。
 (b)一方、もう一つのイメージ軸として、「左寄り」(最も左が1)か、「右寄り」(最も右が6)か、質問すると(中間点3.5)、
   ①どの年代でも「右寄り」と見ているが、
   ②70歳以上では、4.09とかなりの右翼だと見ているのに対して、
   ③20代では、3.61と、中間点に近いイメージを持っている。

 (2)(1)の2つの軸による調査は、次の2つの政策軸による古賀茂明の分析を踏襲したもののようだ。
 今後の日本政治の進路を議論する際に、最も重要な政策の軸が2つある。
  (a)横軸・・・・<右方向>経済・社会政策の「改革」(民主導・既得権と闘う・バラマキ反対)vs.<左方向>「守旧」(官主導・既得権擁護・バラマキ志向)。
  (b)縦軸・・・・<上方向>外交・安保政策のタカ派vs.<下方向>ハト派。
 この2軸で測れば、政治家の立ち位置が明確化できる。
 安部総理は、明らかに極度のタカ派であることに異存はあるまい(図の最上部)。一方、改革は叫んでいるが、実際の政策は守旧派寄りだから、左右で言えばほぼ中央だ。予算のバラマキには熱心だが、規制改革などの成長戦略はまったく実行できないのがその証左だ。つまり、タカ派の似非改革派だ。

 (3)(1)の調査結果を(2)の政策軸に置き換えて見ると、20代の若者は、自民党をかなりの改革派で、ハト派ではないが、若干のタカ派(右上=第1象限)と見ている可能性が高い。
 これまで、若者の「右傾化」と「安定志向ないし保守化」現象は、あちこちで指摘されてきた。安部自民党の勝因は、若者世論の右傾化と保守化の表れ、と見る向きもあったが、必ずしもそれは正しくはないのではないか。
 (1)の調査では、愛国心教育について20代が最も消極的だった。命の危険があっても国のために戦う、と答えたのも、30代12%についで20代は12%という低い数字は、右傾化どころか、逆に平和志向が強いとも言える。

 (4)その若者に安部首相支持が多いのは何故か。
 若者たちは、安部自民党がタカ派で、実は守旧派であることに気づいていないからだ。
 若者が、実は「改革志向で平和志向」なら、(2)の分類では右下の領域=第4象限の潜在的支持層だ。しかし、そこを代表する政党はない。
 「安部の詐術」の虜になった若者を解放するには、真の「第4象限の党」の出現に期待するしかない。

 【注】
記事「(20代はいま)保守化懸念、広く存在」(朝日デジタル 2013年12月28日22時34分)
記事「(20代はいま)保守化懸念、広く存在」(朝日デジタル 2013年12月28日21時59分)
記事「右傾化は際立たず 朝日新聞世論調査「20代はいま」」(朝日デジタル 2013年12月29日05時00分)

□古賀茂明「若者を虜にする「安部の詐術」 ~官々愕々第94回~」(「週刊現代」2014年1月15日・2月1日号)
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