カテゴリー別目次
2023-08-26
頭髪四色中を立て直した話5
4月から修学旅行前までの国語授業は順調だった。
なんの問題もなかった。
生徒の能力は高かった。
4月はじめの学級開きはきつかった。
いつも通りレクをいくつか混ぜたが、女子5、6人は座ったまま全く動かなかった。
僕は笑顔のままひと通り済ませた。
レクで叱るのは素人だ。
修正できないねじれた感情があるのはわかった。
で、修学旅行だ。
修学旅行の企画は当然済んでいた。
僕が何を準備したり指導したりしたのか全然覚えていない。
ただ、
「席を立ったらイスを入れる」
「靴は向き直ってそろえる」
ことはコツコツ言っていたと思う。
関西方面の修学旅行は完璧に終わった。
【班別にタクシー】で移動した。
全員でぞろぞろ歩く場所もあった。
僕は二条城の前のチェックポイントで待つ役だった。
いい天気だった。
4月からの授業と生徒の様子を見たら、何も心配はしなかった。
二晩目の夜に、ひと部屋に80人近く集まって【レク大会】をした。
僕は種目とルールを決め、事前にメンバーと手順を確認させた。
絶対に失敗できない。
これを失敗したら、4月からここまで何をしてきたかわからない。
レクの直前、あまりに緊張して僕はめまいがして吐きそうになり、学年主任に、
「もしかしたら代わってもらうかも」
と言った。
レクは大成功だった。
ものすごく楽しかった。男子も女子も全員が熱狂した。
レク大会が壊れそうなハプニングは教員が協力して処理した。
夜の就寝時間に、生徒は【時間通りに電気を消した】。
これは、前にもあとにもこれ一度きりのことだった。
もう一つの一度きりがあった。
男子の部屋の入口にある【スリッパは全部向きを揃えて】並んでいた。
出かけて帰ったあと。一斉の夕飯から帰ったあと。寝る前。
七つか八つの部屋すべてのスリッパが、つま先を出口に向けてそろって並んでいた。
僕は、ひと部屋ひと部屋、それを称賛して回った。
朝の起床時間には、大人の先手を打ち、男子は寝具を片付けた。
帰りに中学校に向かうバスの中は、満足感であふれていた。
生徒も教員もみんな笑っていた。
生徒を帰し、職員は会議室に集まった。
ジュースで乾杯して反省会をした。
校長を含めた職員8人のうち、僕ともう一人の若手が新入りだった。
去年の宿泊学習を覚えている6人が一人ひとりしゃべった。
【「こんな修学旅行になるとは思わなかった」】
「完璧に時間を守って行動できたのは、(僕)が毎日遅刻を見て板書したためだ」
皆、感極まり途中で言葉を詰まらせた。
去年、煙草の吸殻を拾った行事とは大違いだった。
でも、生徒は皆同じ人物だった。
この記事が「立て直した話」だから傲慢にも書くが皆が、僕のおかげだと言ってくれた。
とんでもありません、と答えたが僕もそうだと思った。
とにかく、生徒がほとんど皆、優秀だったんだ。
2023-08-26
頭髪四色中を立て直した話5
4月から修学旅行前までの国語授業は順調だった。
なんの問題もなかった。
生徒の能力は高かった。
4月はじめの学級開きはきつかった。
いつも通りレクをいくつか混ぜたが、女子5、6人は座ったまま全く動かなかった。
僕は笑顔のままひと通り済ませた。
レクで叱るのは素人だ。
修正できないねじれた感情があるのはわかった。
で、修学旅行だ。
修学旅行の企画は当然済んでいた。
僕が何を準備したり指導したりしたのか全然覚えていない。
ただ、
「席を立ったらイスを入れる」
「靴は向き直ってそろえる」
ことはコツコツ言っていたと思う。
関西方面の修学旅行は完璧に終わった。
【班別にタクシー】で移動した。
全員でぞろぞろ歩く場所もあった。
僕は二条城の前のチェックポイントで待つ役だった。
いい天気だった。
4月からの授業と生徒の様子を見たら、何も心配はしなかった。
二晩目の夜に、ひと部屋に80人近く集まって【レク大会】をした。
僕は種目とルールを決め、事前にメンバーと手順を確認させた。
絶対に失敗できない。
これを失敗したら、4月からここまで何をしてきたかわからない。
レクの直前、あまりに緊張して僕はめまいがして吐きそうになり、学年主任に、
「もしかしたら代わってもらうかも」
と言った。
レクは大成功だった。
ものすごく楽しかった。男子も女子も全員が熱狂した。
レク大会が壊れそうなハプニングは教員が協力して処理した。
夜の就寝時間に、生徒は【時間通りに電気を消した】。
これは、前にもあとにもこれ一度きりのことだった。
もう一つの一度きりがあった。
男子の部屋の入口にある【スリッパは全部向きを揃えて】並んでいた。
出かけて帰ったあと。一斉の夕飯から帰ったあと。寝る前。
七つか八つの部屋すべてのスリッパが、つま先を出口に向けてそろって並んでいた。
僕は、ひと部屋ひと部屋、それを称賛して回った。
朝の起床時間には、大人の先手を打ち、男子は寝具を片付けた。
帰りに中学校に向かうバスの中は、満足感であふれていた。
生徒も教員もみんな笑っていた。
生徒を帰し、職員は会議室に集まった。
ジュースで乾杯して反省会をした。
校長を含めた職員8人のうち、僕ともう一人の若手が新入りだった。
去年の宿泊学習を覚えている6人が一人ひとりしゃべった。
【「こんな修学旅行になるとは思わなかった」】
「完璧に時間を守って行動できたのは、(僕)が毎日遅刻を見て板書したためだ」
皆、感極まり途中で言葉を詰まらせた。
去年、煙草の吸殻を拾った行事とは大違いだった。
でも、生徒は皆同じ人物だった。
この記事が「立て直した話」だから傲慢にも書くが皆が、僕のおかげだと言ってくれた。
とんでもありません、と答えたが僕もそうだと思った。
とにかく、生徒がほとんど皆、優秀だったんだ。