2010/12/24upわかる目次 |
映画・夕陽のガンマン |
十数年前だが、やたらに『ダーティー・ハリー』シリーズが
テレビ放映された時期があった。
たいして面白くもなく、
クリント・イーストウッドもあんまりカッコよくなくて、
僕は映画評論家の友人に尋ねた。
「イーストウッドって、まじめな人なの?」
僕が知っているのは小学生の時に見た『荒野の用心棒』の彼で、
ずいぶんと印象が違ったのだ。
映画評論家の友人は答えた。
「まじめな人だよ。とてもまじめな人。
だから、映画でも正義のために闘うわけ」
『夕日のガンマン』は
『荒野のガンマン』の次のいわゆるマカロニウェスタンだ。
イタリア製の西部劇だから、マカロニ。
原題を
”FOR A FEW DOLLARS MORE”(もう少しのドルのために)
というんだそうだ。
賞金稼ぎが、他人の命を金に代えた物語ということだ。
ガキの頃から、
もう何度観たかわからないような気がしていたが、
テーマ音楽があまりにも印象的なせいだろう。
とにかく傑作である。
こんなに良くできた映画だとは思わなかった。
子どもの時には、
いろんなことを分からないまま見過ごしているのだなあ。
でも、忘れるわけではない。
あとになって、その記憶の意味を紡ぎはじめるのだ。
「だから、大人は、子どもの前で、
壊れた甕のような姿を見せてはならない。
子どもは、すべて覚えている」
亡くなった茨木のり子氏は、詩の中でそう書いている。
1965年のイタリア映画で、
クリント・イーストウッドは1930年生まれだから
彼はえーっと35歳だった。
35歳!
知って驚いた。
僕は今日まで三十数年間、
あのときのイーストウッドを
二十代前半の兄ちゃんだと思っていたからだ。
だが、あの渋さは考えれば35歳のものかもしれない。
世に出るのはわりと遅かったってことだね。
だが、まさか拳銃を振り回していたお兄さんが、
数十年後、世界中の人を感激させる名監督になろうとは
誰も想像しなかったに違いない。
素敵な人生だ。
2008-07-05 20:45