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頭髪四色中を立て直した話9

2023-09-08 18:32:24 | 生活指導
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2023-09-08
頭髪四色中を立て直した話9
9月末の体育祭から、合唱コンコンクールまで1か月弱の期間があった。
自然な準備期間だ。
授業を削らず、生徒の負担が重すぎない。
担任も十分な準備ができる。

半年前の異動の時に、
「この学年は全く歌わない。声を出さない。どうしていいかわからない」
と聞いた。
夏休み前の授業と行事を見て、何で歌だけ歌わないのか不思議だった。
だから【選曲】は片目をつぶって無理しなかった。
中3にはやさしめの曲を候補にして、クラスに聞かせて決めさせた。

練習中、クラスの生徒は全員、誰一人乱れなかった。
歩きまわらずフラフラせず、僕のアドバイスに集中した。
生徒の指揮者、伴奏者に集中した。
歌のセンスも声量も、どの中学校にも引けを取らなかった。
練習の1か月間、歌の質を上げること以外で苦労することは一つもなかった。

1年生、2年生のとき、全く声を出さなかったと学年職員が言ったのはどういうことだろう。
こんなに真面目で上手なら「大地讃頌」を歌わせるんだったと、しばしば思った。

練習の前に生徒に訊いた。
「パートリーダーって、いたの?」
「いなかった」
「……そう。パートリーダーいたほうがいい。
 絶対に、いたほうがいい。
 俺が言うんだから間違いない。信じる? 作る?」
クラスの多くはうなずいたが、なかったものを信じろと言っても難しい。
抜群の合唱指導をする知人に、そのくだりを話すと彼は言った。
「よくそこまで言えるよな」

僕は例年通りに、楽譜を研究して、コツを学んで、生徒に伝えて、練習中に部分を繰り返させた。
模造紙に歌詞を書いて、ブレスや曲想を書き込み、練習ごとに黒板にぶらさげて教えた。
ただ、残念ながら僕は合唱コンクールでクラスを優勝させたことはなかった。
歌をある程度上手にさせるのはできた。
でも、そんなことは誰でもできる。
勝つために、どうすればいいかは退職までとうとうわからなかった。

生徒は、初めてのパートリーダー中心に練習した。
ものすごくよく練習して、上達した。

3年生がたったの2クラスで、優勝も何もないが、勝ったのは隣の担任クラスだった。
とてもいい曲で、伴奏も指揮も歌も、すごく上手だった。
僕のクラスもうまかった。
うまかったから、生徒は悔しがった。
コンクールのあと、体育館から教室に戻るまで、クラスの生徒はたくさん文句を言った。

僕は20年間負けてばかりだったから、フォローの言葉は豊富だった。
行事で勝っても負けても、その直後の担任の話は、ものすごく重要だ。
だって、プロじゃないんだから。
担任と学年が何かを学習させるのが、義務教育の、中学3年生への仕事だからだ。

僕は、クラスの全員が着席するまで何も言わなかった。
静かに、全員を見渡して、ゆっくりとしゃべり始めた。
「体育館から教室まで、お前たちが言ったグチ、文句はすべて忘れてやる……。」
そのあとを忘れた。
当時の学級通信には書いたけど捨ててしまった。
我ながら、過去一番のいい話だった。
ある男子が、合唱コンの感想で、
「先生の話を聞いて、感動した。気持ちが変わった」
みたいなことを書いたのは覚えている。
要するに、勝ったクラスが喜んで、負けたクラスが落ち込んで、
その後の授業にも影響があって、負けたら失敗だったやらなきゃよかった、
と赤ちゃん並みのことしか考えられないなら、行事などやらないほうがいい。
職員のいくらかも、赤ちゃん並みの思考しかないことが多い。

コンクール直後に、二、三人のベテランが僕の席に来て、言ってくれた。
「比べようがなかった」
「レベルが高くて、音楽科以上のことは分からなかった」
過去、2年間全く声を出さなかったという学年に、他学年の腕利きがわざわざ言った。
前年度まで勤めた中学校はものすごく合唱のレベルが高かった。
だから、僕も隣のクラスも高レベルでないのはわかっていた。
しかし、成り立たなかった合唱コンクールが、かなりイケてるレベルで人の心を打った。
それは成功としか言えない。
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