趣味で蒐集した「きっぷ」を見て考えたこと、とか…
JR直営の印刷場名は国鉄時代の印刷場名を使用します。
古紙蒐集雑記帖
いすみ鐵道の急行券 ~大多喜駅発行分
いすみ鐵道では、かつてJR大糸線を走っていたキハ52型気動車を譲り受けて、大多喜~大原間に臨時急行列車を運転しています。
いすみ鐵道キハ52 125
今や貴重になった旧国鉄型気動車による運行で大変興味のそそられる同社の急行列車ですが、今回の運転に際して急行料金が設定され、硬券による急行券を発売しています。
これから数回に亘り、同社の魅力的な急行券のいろいろを御紹介したいと思います。
まずは自由席扱いである急行券です。
本社のある途中駅である大多喜駅で発行された急行券です。
国鉄の昭和42年3月改定以前の発駅表示に矢印のない様式をモデルとしているようですが、当時の様式は実際には等級制があることと、「発売日共2日間有効」以下の部分の配置は昭和44年5月のモノクラス券に近いことから、「国鉄券に準じたオリジナル様式」といった感じの券です。
赤色国鉄地紋のA型で、かつて国鉄東京印刷場で調製された券に似た体裁の券です。恐らく、関東交通印刷で調製されたものと思われます。
発駅は印刷されたものとなっており、大多喜駅から乗車する旅客専用に設備されています。
この券は大人・小児用となっていますが、観光鉄道を謳った同社ですから家族連れでの利用客も多く見込まれ、また、小児用として小児断線を切断した券を発売するのもいかかがなものかと考えられたのでしょうか、同じ区間の小児用券も設備されています。
小児用券です。
大人・小児用券同様に「国鉄券に似たオリジナル様式」券で、赤色国鉄地紋のA型券となっています。
急行券の裏面です。
注意書きと、社名が書かれています。
急行券ではありますが、「普通急行列車」と「準急行列車」に乗車できる旨が書かれています。
昭和43年10月以前の準急列車が運転されていた時代、急行券は「普通急行券」と「準急行券」に別れていましたが、準急行列車が存在した末期には、概ね走行キロが100km程度の列車を準急行列車、それ以上が普通急行列車、それより速い列車が特別急行列車であり、準急行列車と普通急行列車の急行料金は同額でしたから、それで良いのでしょう。
これはキハ52の写真のヘッドマークからお分かりと思いますが、運転日によって千葉所縁の列車のヘッドマークを掲げて運転されるため、日によって急行列車だったり準急行列車だったりすることからこのように記載されているものと思われます。
(急行そと房運用時のキハ52)
その他、JRの急行列車には乗車できない旨が記されていますが、現在JR外房線には急行列車は走っていませんので、単なる遊び心か、もしくは、将来的にJRが臨時急行列車を運転させた時にトラブルが起きないように事前に危険予知をしているものと思われます。
最後に社名が記されていますが、なぜか(いすみ鉄道)となっており、なぜ(いすみ鐵道)としなかったのかが疑問です。
しかし、ある意味、観光鉄道だからこそできる遊び心がいっぱい詰められた券です。
乗車券蒐集家にとっては国鉄地紋の硬券を見せられるとハッとしますが、この券を手にされた一般の旅客は、いったいどのように感じられるのでしょうか?