趣味で蒐集した「きっぷ」を見て考えたこと、とか…
JR直営の印刷場名は国鉄時代の印刷場名を使用します。
古紙蒐集雑記帖
井笠バス 福山から110円区間ゆき乗車券
井笠バス福山営業所(福山駅乗車券発売所)で発行された、福山から110円区間ゆき乗車券です。
青色PRCしせつてつだう地紋のB型券です。おそらく岡山県のシンコー印刷にて調製されたものと思われます。
シンコー印刷調製の券は大都市圏ではあまりお目にかかれないものですが、似たようなものとして、下津井電鉄で使用されているRTCてつどうじょうしゃけん地紋やBUSじどうしゃじょうしゃけん地紋となどといったものが岡山近県で使用されており、地紋は違いますが、関東の大手私鉄でも、小田急電鉄や京王帝都電鉄等で使用されていた実績があります。
地紋を拡大してみました。大変個性的な地紋ですが、決して井笠鉄道用というわけではなかったものと思われます。
裏面です。バスの乗車券であるという性格上、料金機に投入された際に裏返しになっても良いように、裏面にも金額の表記があります。
鉄道時代の井笠鉄道乗車券です。やはり、バスの乗車券と同じ地紋です。
井笠バスは岡山県笠岡市に本社のある、昭和46年までナローゲージの鉄道路線を持っていた井笠鉄道のバス部門で、コッペル製のSLや個性溢れる気動車が走る、典型的は軽便鉄道として有名な会社でしたが、この会社を全国的に知らしめたのは、昨年10月のNHK全国ニュースで突然報道された破綻の一報でした。
これは、10月12日の午後に流れた「井笠鉄道 破産申立へ」「10月末日限りで路線廃止」というニュースで、そのあまりに突然な第一報がNHKの全国ニュースとして駆け巡り、衝撃を与えられました。
交通事業者の経営破綻というのは決して珍しいことではありませんが、会社更生法や民事再生法といった再生型の破綻ではなく、会社清算という清算型の破綻という手法が採られており、1年以上前からの路線廃止や事業廃止を予告してではない「突然死」的な清算方法は極めて異例でした。
鉄道事業廃止以降はバス事業を主たる事業として岡山県西部から広島県東部地区の乗合バス事業を中心に行っていましたが、バス事業としては昭和56年3月期に売上高約22億円を計上していたものの、地域人口の減少、自家用車の普及により末期には収支率50%という完全自立不可能な状況に陥ってしまい、平成24年5月から事業廃止に向けて協議を開始したようです。しかし、同年8月には運転資金の欠乏から従業員への給料遅配が発生し、10月12日にバス事業の廃止の発表に至ったのが今回の顛末であったようです。
NHKのスクープ報道の日から残された時間はわずか19日、営業日ベースでは13日しかないというカウントダウン状態で会社の営業が続けられました。10月12日に中国運輸局岡山運輸支局へバス事業の廃止届を提出し、中国バス、北振バス、寄島タクシー等へ代替運行を要請し、10月31日付で全従業員を解雇するというスピード清算でした。
現在、井笠バス路線は両備グループに移管され、両備グループの井笠バスカンパニーとして再生されています。