京のおさんぽ

京の宿、石長松菊園・お宿いしちょうに働く個性豊かなスタッフが、四季おりおりに京の街を歩いて綴る徒然草。

貫く棒の如きもの

2009-12-19 | インポート

 

     眠る山にかへる雲あり南禅寺

 

 この句は高浜虚子の作です。

 有名なものではないですが、印象的な句です。

 この句の季語は「眠る山」。

 冬は山が眠るというのが、俳句の世界。

 春は笑い、夏は滴り、秋は粧うというそうで。

 なるほど、簡潔に四季それぞれの山の趣を表している言葉ではあります。

 春、ぱっと笑顔になったように若葉が萌え出ます。

 夏、滴らんばかりに色濃くなった緑は眩しいほどです。

 秋、華やかな化粧をしたように、赤や黄色に色づきます。

 そして冬、トーンを落とした山は、まるで眠るよう。

 やがてまた春がやってきて……。

 四季の巡りを感じさせてくれますね。

 ここで言う山は、南禅寺の背後にそびえる東山連山のことでしょう。

 京都の町から見れば、当然東の方角にあります。

 東から西へと流れることが多い雲の動きを、見事に描ききった句だと思います。

 それを寂しいと思うも良し、侘びがあると思うもよし。

 俳句に詳しくない人でも、聞けば心が動かされますね。

 こうした句の一つを知りながら歩くのと、そうでないのとでも、京都旅行の感興は変わってくるでしょう。

 皆様も是非、一つ心に句を携えて、京都散策をしてみてはいかがでしょうか。

”あいらんど”