森見登美彦氏の小説『有頂天家族』のアニメが、絶賛、かどうかは知らないが、放映中。
森見氏はこれまで京都を舞台にしたファンタジー色の強い小説を多く書かれている。
近頃では『聖なる怠け者の冒険』を上梓している。
氏の名を大いに高めた、『夜は短し歩けよ乙女』もまた、京都が舞台である。
さて、『有頂天家族』の第二回放送に、六道珍皇寺が出てくる。
主人公のお兄さんである、カエルになってしまった狸のいる井戸のある寺が、それだ。
ややこしい言い回しである。
原作を読んでいない人、アニメを見ていない人には、さっぱり事情が分かるまい。
分からぬ人は分からぬで良い。
要は、六道珍皇寺というお寺が、京都の東山にあると分かれば良い。
六道珍皇寺には、井戸がある。
この井戸は、そんじょそこらの井戸ではない。
皿を割った女中が化けて出てくる井戸!?
それも的外れな間違いではない。
何と、この井戸はあの世と繋がっているという。
ただ、ここから幽霊が出てきたという話は聞かない。
この井戸にまつわる話というのは、かつてここを通ってあの世と行き来していた人物がいたというものだ。
その人物の名を小野篁という。
系譜的にいうと、かの小野小町のお祖父さんといわれている人物だ。
小野篁は、閻魔大王の部下として、地獄の入口で、死んだ者の裁判の補佐をしていたという。
もちろん、伝説、である。
いってみれば都市伝説である。
なぜそんな伝説が生まれたのかは、良く分からない。
正義感の強い、潔白な人物であったとも言われるから、その辺りが影響しているのだろうか。
六道珍皇寺の付近は、かつて葬送の地の入口に当たり、そんなところも、伝説を尤もらしく思わせる理由であっただろう。
そういえば小野小町というのは、全国十数か所に墓があるという。
お祖父さんのことを思えば、死んではまた井戸を通ってこの世へ戻ってきて、また死んで、を繰り返していたのかもしれない。
この門前には、「幽霊子育飴」なるものを売る店もある。
幽霊が墓の中で産んだ(!?)子に、毎晩飴を買い与えていたという話に由来する。
子育て中の知人へのお土産に良いかもしれない。
どうせ今年も暑い夏。
テレビや映画のホラーも良いが、この世とあの世の境目へ出かけてみて、少し涼しい気分になってみてはどうだろう。
”あいらんど”