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アイヌアート、寒湖温泉で体感 「ミュージアム事業」着手

2018-06-10 | アイヌ民族関連
北海道新聞 06/10 05:00
 【阿寒湖温泉】阿寒観光協会まちづくり推進機構(大西雅之理事長)は9日、本年度の通常総会を釧路市阿寒町阿寒湖温泉で開き、温泉街の空き店舗やホテルに、アイヌ民族らの芸術作品を飾る「まちなかアイヌアートミュージアム事業」に着手するなど事業計画を決めた。
 「阿寒湖アイヌシアター イコロ※」では、アイヌ民族の伝説を映像などで表現する「デジタルアート」の上演を今夏にも始める。アイヌアートミュージアム事業と併せ、本年度中に観光客がアイヌ文化を楽しみながら温泉街を巡る回遊コースをつくる方針だ。
 ミュージアム事業では、温泉街中心部の物産店跡をギャラリーに改修し、ホテルやアイヌコタンのアイヌ生活記念館「ポンチセ」などにも作品を飾る。
 温泉街では来夏、阿寒湖畔の泥火山「ボッケ」周辺で、アイヌ民族の伝説を題材に夜の森を光や音楽で演出する、より大掛かりな体験型デジタルアート事業が展開される。本年度取り組む回遊コースづくりはその先駆けになる取り組みだ。。(佐竹直子)
※イコロのロは小さい字
残り:220文字/全文:650文字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/197994/

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消えたと思い込んでいる人も 「ゴールデンカムイ」に学ぶアイヌの知恵

2018-06-10 | アイヌ民族関連
AERAdot.2018.6.9 16:00週刊朝日岩下明日香

 いまアイヌ民族が注目されている。自然と共存し、動植物などあらゆるものに「カムイ」が宿ると考える文化を持つ。明治後期の北海道を舞台に、アイヌ民族も登場する人気漫画「ゴールデンカムイ」が、手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)のマンガ大賞に決まった。アニメも放送されている人気作を参考に、アイヌの知恵を楽しく学んでみよう。
 日露戦争から戻った「不死身」と言われる主人公の杉元佐一が、北海道に隠された金塊の手がかりをアイヌ民族の少女・アシリパと探す。日本軍や新選組の関係者も登場し、個性的なキャラクターたちが金塊を巡って争いを繰り広げる。
 こんなストーリーのゴールデンカムイは、2014年に「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載が始まった。単行本は13巻まで出ており、累計で530万部を突破。14巻は6月19日に発売予定だ。アニメも4月からTOKYO MXなどで放送されている。
 手塚治虫文化賞の選考では、「面白さが安定している」と高く評価された。作品ではアイヌの生活や文化も描かれている。著者の野田サトルさんは、アイヌの魅力についてこう語る。
「生活用品の彫刻とか、衣装や宗教観など全部ひっくるめて、おとぎ話の世界のような幻想的な感じに引かれている」
 アイヌとはアイヌ語で「人間」を意味する言葉だ。北海道を中心に東北地方や樺太(現サハリン)南部など広い地域で、狩猟や植物採集をして暮らしてきた。シペ(サケ)を調理する場面など、作品を読むと暮らしぶりがよくわかる。
 野田さんは複数の博物館などをまわって、衣服や道具などを実際に見てきた。樺太のアイヌの資料のために、ロシアにも行ったという。
「取材できるのは出版社の後ろ盾が大きい。新人の漫画家だったときは、博物館で撮影や取材をすることは難しかった」(野田さん)
 丹念な取材に基づく描写で、アイヌについて初めて詳しく知った人も多い。
 アイヌには長年差別されてきた歴史がある。日本は「単一民族国家」という意識が強く、アイヌ民族へは根強い偏見があった。作品でアイヌ語の監修をしている中川裕・千葉大教授はこう指摘する。
「アイヌについて考えさせる良いきっかけになっている。ほとんどの人は、アイヌという存在自体を知らない。自然に消えるのを待っているような状態で、『もう消えちゃったんだ』と思い込んでいる人もいる。実際はアイヌの人たちは今も消えていないし、伝統文化を残そうと努力している人も多い。だから、まずは知ることが大事だ」
 作品を読めば、自然の恵みを巧みに利用していたことがわかる。
 例えばサケはアイヌにとって主食で、「本当の食べ物」と呼ばれる。身は凍らせてルイペ(ルイベ)にする。冷凍することによって長期間保存でき、寄生虫のリスクを減らせる。加熱しないため、ビタミンを摂取できる利点もある。エラや上あごの真ん中にある氷頭などは、刃物でチタタプ(細かくたたいたものという意味)にして食べる。皮はチュプケレという靴の材料にする。サケはこうして余すところなく活用される。
 自然の恵みに頼って生きることは、不安定な生活を受け入れることでもある。サケは年によって川に戻ってくる量が大きく変わる。調理の場面で少女・アシリパが「川に鮭(さけ)が極端に少ない年は餓死するものが出た」と話しているように、今の「飽食の時代」とは価値観が異なる。
 アイヌにとって大切な概念が、作品のタイトルにも含まれている「カムイ」だ。通常、「神」や「精霊」などと訳される言葉だが、中川さんは一言では言い表せないという。
「動物や植物など自然界のすべてに魂があって、それをカムイと名付けている。船など人工物にも魂はあって、それがないとそもそも動かないと考えている。人間を取り巻くものすべてに、意思を持った霊魂があるのだ。カムイは霊魂として存在しているので本来は目に見えないが、人間と交流するために動物の毛皮など、それぞれの衣装を身につけて人間世界にやってくる」
 カムイは「環境」と言い換えることもできるという。取り巻く環境が人間と良い関係になっていれば、幸せに暮らせる。環境を破壊するようなことがあれば、環境のほうが腹を立て、人間はしっぺ返しを食らう。サケを粗末に扱ったり川を荒らしたりすると、カムイが怒ってサケが取れなくなり、人間がひもじい思いをする。
 身の回りの全てのものに敬意を払い感謝するカムイの概念は、いまの私たちも学ぶべきところが多い。様々な商品や情報があふれ、人間関係でも疎外感に悩む現代人にとって、アイヌの知恵は役に立つはずだ。
 ゴールデンカムイは、こうした知恵に触れられる貴重な作品となっている。ギャグも織り交ぜ楽しく読めることもあって、若者だけでなく年齢の高い層からも支持されている。週刊ヤングジャンプ編集部の大熊八甲さんはこうアピールする。
「冒険活劇や歴史浪漫、狩猟やグルメなど全部煮込んだ『和風闇鍋ウェスタン!』。どれもメインに成り得る食材を全部煮込んでまずくならないのは、野田シェフの腕が素晴らしいからです」
 アニメも戦闘シーンなど見どころたっぷりだ。声優らの華やかなイベントをネット中継で見た野田さんは、「もはや作品が別のものになって独り歩きしているような錯覚を覚えます」と感慨深げだ。
 作品には主人公を始め、筋肉美のキャラクターが登場する。連載が終わったら「ボディービルダーになろうと思っています」という野田さん。物語は現在「6合目あたり」で、今後もしばらくはアイヌの知恵を紹介してくれそうだ。(本誌・岩下明日香)
週刊朝日 2018年6月15日
https://dot.asahi.com/wa/2018060700012.html?page=1

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「鹿の脳みそも食べた」 人気漫画『ゴールデンカムイ』の作者のこだわりとは

2018-06-10 | アイヌ民族関連
AERAdot.2018.6.9 11:30 週刊朝日岩下明日香

 第22回手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)の贈呈式が6月7日にあった。マンガ大賞に選ばれた『ゴールデンカムイ』(集英社)は、日露戦争後の北海道を舞台にし、アイヌ民族が登場する冒険マンガだ。
 贈呈式後は、作者の野田サトルさんとアイヌ語を監修した千葉大学の中川裕教授が、受賞記念の対談をした。進行は週刊ヤングジャンプ編集部の担当編集者の大熊八甲さん。対談ではアイヌ文化の魅力などが語られ、大人気作の創作秘話も飛び出した。主なやりとりは以下の通り。
*  *  *
中川 賞を取るのは、当たり前だとずっと思っていました。ストーリー展開の巧みさ、効果的に演出する力、ちゃんと表現する画力の三つがそろった作品だと思います。私のようにアイヌ文化やアイヌ語の振興と復興に関わっている身からすると、アイヌ民族と文化にスポットライトを当てたという点で非常にインパクトがある。
 最近、週刊朝日(6月15日号)でも巻頭グラビアでアイヌ文化を特集している。今までアイヌ文化について、ほとんど関心を示さなかったマスコミが取り上げている。この状況を作り上げたのは、ゴールデンカムイであることに間違いはない。その状況の原動力になっているのは「アシリパ」(「リ」は小文字が正式表記)という名前の魅力的なヒロインなんですね。
 最初に、著者の野田さんと編集担当の大熊さんから、第1話の原稿を見せてもらった時には、まだ「アシリパ」という名前ではなかった。野田さんが考えていた名前はやめてもらって、その後、いくつか名前を考えてきてくれた中からアシリパという名前がいいんじゃないかと、提案したのです。アシリパは野田さんが考えたのですが、どこからその名前を持ってきたのですか。
野田 いくつか候補をあげて、中川先生に見てもらいました。まず、ひとつは「シノッチャ」。
中川 アイヌ語で唄を歌うという意味ですね。みんなで楽しむ時に唄を歌うことをシノッチャといいます。
野田 ほかにも「アシルパ」っていう名前を中川先生のところへ持って行った。それが中川先生に、イメージが合っていると言われて、「アシリパ」に決まっていった。
中川 その名前の案はどこから来たんですか。
野田 忘れちゃいました(笑)。「ステノ」というのもありました。ステノさんは実在する人物で、明治生まれの女性なんですけれども、7歳くらいの時に和人のところへ使いに行ったことがあるようなんです。そして、持って帰ってきたのが味噌(みそ)だったんです。それを見て「あ、うんこだ!」と言って、かたくなに食べなかったとうエピソードがあったんです。それを、アシリパにも当てはめた(作品でもユーモラスなエピソードとして登場する)。明治時代生まれのアイヌの人には入れ墨があるんです。入れ墨は、はりで刺すのではなくて、放射状に傷を入れてくんですよね。
大熊 ゴールデンカムイの中でも、刑務所で囚人が入れ墨をしていますが、あれはどうやっているんですか。
野田 灰と唾(つば)で入れているですが、アイヌもそうなんですか。
中川 漫画のなかでおばあちゃんが「入れ墨をする年頃なのになってもアシリパはしないのか」と言って、アシリパが「今では若い子はしていないんだ」と言うシーンがあります。舞台は日露戦争の後ですよね。昔、アイヌの女性は口の周りに入れ墨していましたが、1876年に法律で禁止されています。アシリパの世代では、とっくの昔に禁止されていたので、アシリパが入れ墨したら法律違反です。
大熊 アシリパの衣装についてはどうですか。
中川 最初に第1話でアシリパの衣装を見ると、山へ行く時の格好が全部そろっていた。その絵を見た時にこれはかっこいいと、そしてよくここまで調べて描いたなと思いました。山に行くときには、タシロという山刀やマキリという小刀、矢筒と弓、クワという山杖などを身に着けるのですが、一式そろって写った写真はないと思います。野田さんが組み合わせて描いていた。この絵を見た時に、これは絶対にいけると思い、監修を受けることに決めました。
 その時には気が付かなかったのですが、連載が始まってから、脚に履いているものについて「あれは何ですか」と聞かれたんです。調べてみると、女の人は狩りに行かないので、狩りの時に何を履いていたのかはそもそもわかりようがないが、男の人は何も履いていない。真冬の雪の中を狩りに行くときでも、何も履いていなかったということがわかりました。では、野田さんは、アシリパの脚に何を履かせているのか。
野田 もも引きみたいなものです。
中川 その答えは後で聞いたんですが、最初、絵を見てタイツみたいなものを履いているのだろうかと思い、タイツについて調べてみた。そうしたら、タイツは19世紀の中ごろにフランスで発明されていた。この漫画の始まりの舞台は小樽ですから、アシリパは輸入したタイツを一足先に履いていたのだと。そういう設定でいいのではないかとトークイベントで話したところ、北海道の小樽市総合博物館の石川直章館長に、「そうなんです。証拠写真を見せましょう」と言われて、当時、すでに小樽の女性はストッキングをはいていたことがわかったんです。
大熊 リアルがフィクションに追いついた瞬間ということですね。
中川 私と石川館長が内容を議論するくらい、この作品は非常にリアル。細部にわたるまでリアルな描写がされていて、議論できるような漫画です。
大熊 一番印象的な取材はなんですか。
野田 樺太アイヌ出身の猟師さんを取材している時、その人が小鹿を捕まえて、その場で解体しました。鹿の脳みそを食べたいからと、お願いをしました。脳みそは、味のしない温かいグミのようでした。もう、猟師の人でも食べないようです。
中川 漫画の中ではアシリパがおいしそうに食べていて、和人は怖々と食べています。野田さんは脳みそを前にどうでした。
野田 食べて味を知りたいという欲求の方が強かった。ただ、一緒にいたアイヌの方が引いていた(笑)
大熊 野田さんは取材に基づいて描いているのですが、リアルとフィクションの間を描くことに大変こだわって創作しています。例えば、アイヌ語もそうですが、北海度弁はどうでしょうか。
野田 アシリパは、こてこての北海道弁になっているはずなんですが、当時のアイヌは北海道弁でなまっていたんですか。
中川 そうです。今も北海道の人は北海道弁をしゃべっていますから。野田さんは北海道の出身ですよね。
野田 うちの母親はすごくなまっているんです。たまに理解できない単語があった。ただ、漫画のセリフで北海度弁を話させると、アイヌ語もあるので、さらに言葉の壁が高くなってしまうんです。
中川 そうですね。不思議なことに北海道を舞台にしたマンガなのに、北海道弁がほとんどでてこない。設定として、アシリパは学校に行っていないのに、非常にきちんとした標準語をしゃべっている。どこでアシリパは標準語を覚えたという設定にしているんですか。
野田 一応、お父さんです。
中川 アシリパのお父さんは、ポーランド人と樺太アイヌのハーフっていう設定ですよ。日露戦争まで樺太はロシア領ですから、つまりロシア人しかいないところ。樺太アイヌのお母さんとポーランド人のお父さんとの間で育ったんだから、日本語はしゃべれないんじゃないの?
野田 アイヌの村の人たちが、和人とつながるために日本語を覚えたんですよ、きっと。
中川 北海道弁だろうけどね。
野田 そこですよね(笑)。北海道の中にもいくつか方言があり、アイヌにも方言がありますよね。
中川 最初の舞台は小樽。小樽にもアイヌの人は住んでいました。小樽近郊のアイヌであるアシリパは、小樽方言を話しているはずなんだが、それがどんな言葉だったか全くわかりません。明治時代に入ってからはほとんど記録がないからです。なので、適当につくるということになりましたが、全くありえない形にするわけにはいかないので、墓標の形から近い方言を推測し、それをベースにいくつかの方言を混ぜて小樽方言を作りました。
 ところが架空の小樽方言を使っていたら、アシリパご一行様が、北海道を移動し始めたんですね。移動した先は、違う方言をしゃべっているわけだから、ちょっとうっかりしましてね、間違えたこともありました。すぐに指摘がきて、コミックスでは修正しています。行く先々でセリフに使っているアイヌ語の方言は変えてあります。
野田 樺太アイヌだとさらに違いますよね。ロシア語やウィルタ語、薩摩弁など、言語にはすべて監修者を付けてみていただいています。
中川 ウィルタ語は樺太の少数民族で、今は数百人しかいない。山田祥子さんという、日本にただ一人のウィルタ語の専門家に監修をしてもらっているということで、改めて感心しました。
大熊 最後にこの先の意気込みを教えてください。
中川 この漫画が引き起こした社会的なインパクトは大きい。アイヌ文化に対して注目が集まるようになった。それがこれからいい方向に行くかどうかは、我々の努力にかかっている。連載が終わったら関心が薄れてしまうことがないように、この衝撃をどうやって継続していくかを考えていきたいと思います。
野田 ゴールデンカムイを描くうえで、北海道にいるあちこちのアイヌの方たちに会ってきました。僕にアイヌの方たちからは、ああしてくれこうしてくれというのは、1回だけしかなかったんです。それは、「可哀想なアイヌは描かなくていいから、強いアイヌを描いてくれ」と。それだけだったんです。
    ◇
 ゴールデンカムイは、2014年に「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載が始まった。単行本は13巻までで累計530万部を突破している。14巻は6月19日に発売予定。4月からTOKYO MXなどでアニメが放送されている。
(本誌・岩下明日香)
※週刊朝日オンライン限定記事
https://dot.asahi.com/wa/2018060800110.html?page=1

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