北海道新聞 12/07 16:00
白糠アイヌ協会 天内会長解説
【阿寒湖温泉、白糠】かぎの付いたもり(マレㇰ)でサケなどを捕る、アイヌ民族の伝統漁法「マレㇰ漁」。白糠アイヌ協会の天内重樹会長(35)は11月中旬、釧路市阿寒町阿寒湖温泉地区で開かれた「アイヌ文化体験講座」でマレㇰ漁の漁具の使い方や漁法を紹介した。「マレㇰ漁を通じてアイヌ文化を体感でき、身に付けることができる。次の世代にも継承したい」と伝統漁法への思いを語った。(熊谷知喜)
かぎ付きもりマレㇰ使用/産卵しない雄サケ狙う
講座はアイヌ文化に親しんでもらうのが狙いで、15人が参加。市が国のアイヌ政策推進交付金を活用し、阿寒アイヌコンサルンに委託してオンライン形式で開催した。
天内会長はマレㇰの作り方や漁法、クマ撃ちの狩猟などを、アイヌ文化の伝承に尽くした白糠町のエカシ(長老)、故根本与三郎さんから教わった。天内会長らは、アイヌ民族の伝統技術や文化の継承などを目的に認められている北海道内水面漁業調整規則の特別採捕の許可を得て、2011年にマレㇰ漁を始めた。例年9~12月、町内の茶路川で行っている。
講座で天内会長はアイヌ語の「マレㇰ」について、「泳がせる物」という意味の「マレㇷ゚」とも呼ばれることを紹介。かぎ、かぎを取り付ける台木、ひもなどでできた漁具の構造も解説した。
台木には、堅くて水分を含んでも膨張しづらいイチイなどが使われていることを説明。ひもは水に強くて丈夫なツルウメモドキを用いるが、「昔は動物の首の後ろの皮やシカのけんも使われていた」と語った。もりの柄は軽くてしなりが良く、折れづらいことからヤナギが使われており、漁場にあるヤナギの中から握りやすさや長さを考慮して選んでいると解説した。
漁ではサケをできるだけ傷つけずに捕獲するため、頭の付け根を狙うことも紹介した。刺さったかぎはサケの動きに合わせ、台木から離れて回転し、食い込む仕組みになっている。天内さんは毎年、1人で10匹程度を捕獲するが、「基本的には産卵しない雄を狙う」と必要以上のサケは捕らないことを強調した。
サケを陸に揚げた後は、イナウ(木幣)のように羽根状に削り出したヤナギの棒(イパキㇰニ)で頭をたたいて絶命させると説明。「イパキㇰニでたたくことで、サケはカムイコタン(神の村)に行くと言われている」と語った。
参加した釧路市の栄養士高橋未佳さん(47)は「漁具を作り、サケの命を1匹ずつ大切にいただくアイヌ民族の文化や営みに共感した」と話していた。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/489197
白糠アイヌ協会 天内会長解説
【阿寒湖温泉、白糠】かぎの付いたもり(マレㇰ)でサケなどを捕る、アイヌ民族の伝統漁法「マレㇰ漁」。白糠アイヌ協会の天内重樹会長(35)は11月中旬、釧路市阿寒町阿寒湖温泉地区で開かれた「アイヌ文化体験講座」でマレㇰ漁の漁具の使い方や漁法を紹介した。「マレㇰ漁を通じてアイヌ文化を体感でき、身に付けることができる。次の世代にも継承したい」と伝統漁法への思いを語った。(熊谷知喜)
かぎ付きもりマレㇰ使用/産卵しない雄サケ狙う
講座はアイヌ文化に親しんでもらうのが狙いで、15人が参加。市が国のアイヌ政策推進交付金を活用し、阿寒アイヌコンサルンに委託してオンライン形式で開催した。
天内会長はマレㇰの作り方や漁法、クマ撃ちの狩猟などを、アイヌ文化の伝承に尽くした白糠町のエカシ(長老)、故根本与三郎さんから教わった。天内会長らは、アイヌ民族の伝統技術や文化の継承などを目的に認められている北海道内水面漁業調整規則の特別採捕の許可を得て、2011年にマレㇰ漁を始めた。例年9~12月、町内の茶路川で行っている。
講座で天内会長はアイヌ語の「マレㇰ」について、「泳がせる物」という意味の「マレㇷ゚」とも呼ばれることを紹介。かぎ、かぎを取り付ける台木、ひもなどでできた漁具の構造も解説した。
台木には、堅くて水分を含んでも膨張しづらいイチイなどが使われていることを説明。ひもは水に強くて丈夫なツルウメモドキを用いるが、「昔は動物の首の後ろの皮やシカのけんも使われていた」と語った。もりの柄は軽くてしなりが良く、折れづらいことからヤナギが使われており、漁場にあるヤナギの中から握りやすさや長さを考慮して選んでいると解説した。
漁ではサケをできるだけ傷つけずに捕獲するため、頭の付け根を狙うことも紹介した。刺さったかぎはサケの動きに合わせ、台木から離れて回転し、食い込む仕組みになっている。天内さんは毎年、1人で10匹程度を捕獲するが、「基本的には産卵しない雄を狙う」と必要以上のサケは捕らないことを強調した。
サケを陸に揚げた後は、イナウ(木幣)のように羽根状に削り出したヤナギの棒(イパキㇰニ)で頭をたたいて絶命させると説明。「イパキㇰニでたたくことで、サケはカムイコタン(神の村)に行くと言われている」と語った。
参加した釧路市の栄養士高橋未佳さん(47)は「漁具を作り、サケの命を1匹ずつ大切にいただくアイヌ民族の文化や営みに共感した」と話していた。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/489197