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ウポポイ 体験企画拡充 来場者底上げ目指す コロナ対策も徹底

2020-12-09 | アイヌ民族関連
北海道新聞 12/09 05:00
ウポポイ 体験企画拡充 来場者底上げ目指す コロナ対策も徹底
 【白老】7月に開業した胆振管内白老町のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」は2021年度、来場者向けの体験プログラムを拡充させる。よりアイヌ文化を体感できる内容に改め、新型コロナウイルスの感染再拡大で落ち込む来場者数の底上げを図りたい考えだ。
 国土交通省が発表した21年度北海道開発予算の概算要求額のうち、ウポポイの管理運営費などを含む「アイヌ伝統等普及啓発等経費」は16億7200万円。一部を体験プログラムの見直しや新型コロナウイルスの感染対策に充てる方針だ。
 現在実施している19の体験プログラムのうち、ムックリ演奏や刺しゅう体験など、目玉の体験プログラムは感染防止のため見送りが続き、11月に入って開始にこぎ着けた。ただし、参加人数を制限し、職員との接触を減らすため、解説は録画を使ったり、楽器の実演をやめたりする制約付き。アイヌ民族衣装試着体験やアイヌ舞踊体験など一部のプログラムは延期したままだ。
 物足りなさは否めず、来場者からは「触れたり作ったりできる体験を増やしてほしい」との要望が寄せられている。白老アイヌ協会の山丸和幸理事長も「現状はアイヌ文化を肌で感じてもらえるようなプログラムが十分にできていない」と話し、今後の改善に期待する。
 ウポポイを運営するアイヌ民族文化財団(札幌)によると、来場者は開業以来増加してきたが、11月は2万7565人で10月と比べ4割以上減った。道内で新型コロナの感染が再拡大したことや、今期の修学旅行生の受け入れがほぼ終了したことが要因とみられる。11月末までの累計は18万574人にとどまる。
 こうした状況を踏まえ、ウポポイを管理する国交省北海道局は感染対策と同時に体験プログラムの充実に取り組む。具体的な内容はまだ明らかにしていないが、同局は「できる限り来場者がアイヌ民族の文化や生活に触れられる内容を考え、PRに力を入れたい」としている。(斎藤佑樹)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/489741

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ロシアに近い北海道伝えたい 元駐日大使ら映画製作

2020-12-09 | アイヌ民族関連
北海道新聞 12/09 05:00
パノフ元駐日大使
 【モスクワ則定隆史】2020~21年に実施される日ロの交流事業「日ロ地域交流年」に合わせ、アレクサンドル・パノフ元駐日ロシア大使(76)がドキュメンタリー映画「北海道 北の海への道」を製作した。パノフ氏は北海道新聞の取材に「北海道はロシアの最も近くにある日本。多くのロシア人に魅力を伝えたい」と述べ、道内で予定されている地域交流年の開会式でも作品を上映する計画だ。
 パノフ氏は、ロシアで日本との親善活動に取り組むショディエフ国際財団から映画製作の支援を受け、昨年9月と今年2月に撮影スタッフとモスクワから来日。札幌、函館、夕張、ニセコなど道内各地を訪れた。
 在札幌ロシア総領事館とも連携し、自然の風景や1次産業の現場、温泉、観光地などを撮影。ロシア語を教える大学やアイヌ民族の文化も取材し、1時間5分の作品にまとめた。
 駐日大使だった1996~03年に道内を何度も訪問したパノフ氏は「農業の進歩に驚き、食材の宝庫だと改めて感動した。北海道にはロシア極東と経済協力の展望があり、ロシア人観光客の増加も期待したい」と撮影を振り返る。作品では日本維新の会の鈴木宗男参院議員や鈴木直道知事らのインタビューも交え、「隣国」との交流拡大に意欲的な日本側の意見も伝えた。
 映画は今年4月に完成。5月に予定された地域交流年の開会式は新型コロナウイルスの影響で延期になったが、11月にロシアの日本文化フェスティバル「J―FEST」で初公開した。
 パノフ氏はロシアのテレビ局にも放送を呼びかける考えで、「取材した人はみんな友好的だった。極東以外では北海道をよく知らないロシア人も多いので、日本にはロシアとの交流に前向きな地域があることを紹介したい」と話している。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/489725

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<ウポポイ オルシペ>5 小玉貞良筆「蝦夷国風図絵」 衣服や器物、特徴とらえ描写

2020-12-09 | アイヌ民族関連
北海道新聞 12/09 05:00
 1日から「収蔵資料展 イコロ―資料にみる素材と技―」が始まりました。「イコロ」はアイヌ語で「宝物」を意味し、当館では収蔵資料を「イコロ」と呼んでいます。
 本展では、布、ガマ、木材、漆、金属、紙の六つのテーマから素材と技に注目し、開館に向けて収集した新着資料を中心にお披露目します。
 「カンピ(紙)」では、紙に表された絵図や文字等からアイヌ文化を紹介します。このうちの一つ、「蝦夷(えぞ)国風図絵」は、江戸時代の1750年~60年代に松前を中心に活躍した絵師、小玉貞良が描いたアイヌ民族の風俗画で、熊送りや酒宴、松前城に拝礼に訪れる場面が描かれています。巻末には「松前之産 龍圓斎貞良筆」という署名があります。
 酒宴の場面では、樹皮や絹、木綿等の衣服を着て、金属製の耳飾りや宝刀を身につけた人々が、無地と模様入りのござ、朱塗りのイクパスイ(酒をささげる祭具)、天目台や行器等の漆器を用いる様子が見られます。衣服や器物の特徴をよくとらえて表現されており、アイヌ民族の生活を実際に見聞きしたものと考えられます。
 この巻物は、1970年代にフランスで見つかり、近年、日本に里帰りし、本展が初公開となる作品です。衣服や生活用具、その素材と製作および入手方法、人物の所作や表情など、250年以上前のアイヌ文化を考察する手がかりとなります。細かな表現まで注目してご覧いただければ幸いです。(文・写真 霜村紀子=国立アイヌ民族博物館資料情報室長)

 国立アイヌ民族博物館では、展示資料のうち、周囲の環境の影響を受けやすい衣服や絵画、地図、ノートなどは約2カ月で入れ替えるため、紹介した資料が展示されていないこともあります。収蔵資料展は会期内に展示替えがあり、写真の絵は来年3月30日から始まる第3期に展示を予定しています。
※「イコロ」の「ロ」は小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/489703

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アイヌと和人の共生とは? 日本の中の多様な文化の共存を

2020-12-09 | アイヌ民族関連
東大新聞 2020年12月9日

 7月、北海道白老町にアイヌ文化復興のための国立の施設「民族共生象徴空間(愛称・ウポポイ)」が開業した。ウポポイは同化により失われつつあるアイヌ文化を発信し、復興することが期待されているが、観光産業化との批判も聞かれる。昨年成立のアイヌ施策推進法で「先住民族」と認定されたアイヌと和人はいかに「共生」すべきか。アイヌの歴史や海外との制度比較、ウポポイ内の博物館展示から「共生」を考える。(取材・桑原秀彰)
法制度から見るアイヌ施策
 アイヌの法的地位はどのような変遷をたどったのか。アイヌに関する法制度・政策を研究する落合研一准教授(北海道大学)は「アイヌ民族は1871年制定の戸籍に平民として組み込まれたことで近代日本の『国民』になりました」と語る。身分上、和人と区別はなくなったが、実際は「旧土人」として差別を受け、明治政府が設置した開拓使により同化を強制されたという。具体的にはアイヌの風俗の禁止と日本語習得の奨励、慣れない農業への転業などだ。北海道には和人も多く入植し、土地の没収や移住を強いられたアイヌの生活は窮乏した。
 そのようなアイヌの「救済」を名目に1899年に制定されたのが北海道旧土人保護法だ。農業用地をアイヌに提供することなどを定めたが「実際に与えられた土地は多くが農業に向かず、困窮の解決にはつながりませんでした」。むしろ、狩猟採集を主に営むアイヌに農業への転業を促したことで生活は変容し、同化は一層進んだという。戦後の日本国憲法で法の下の平等が保障されたが、アイヌへの差別はなくならず、格差は現在も残る。
 1980年代から国連でも先住民族の権利に関する議論が始まり、日本でも北海道ウタリ協会(現・北海道アイヌ協会)がアイヌ新法案を決議したことを受けて、97年にはアイヌ文化振興法が成立。旧土人保護法は廃止された。「振興法はアイヌ文化を消滅の危機にある少数文化の一つと位置付け、アイヌ文化の保護を通じて日本の多様な文化全体の発展を図るとしました」。そして昨年制定されたアイヌ施策推進法において、アイヌが先住民族であると明記された。
 先住民族とされたアイヌだが、他国の先住民族の法的地位とはどのように異なるのか。落合准教授は「アイヌの立場が憲法上、不明確である」点を指摘する。
 例えば米国は先住民を部族単位で扱い、自主性を持たせる。「憲法に連邦政府との通商の対象と記されており、国や州と同様に位置付けられています」。連邦政府が部族ごとに保留地を定め、域内では各部族がある程度の主権を持ち、自治を行っているという。
 対して原住民を個人で捉えているのが台湾だという。「日本統治時代の戸籍に原住民かどうかが記載されており、それを基に原住民を認定しています」。憲法には「原住民族」という身分が明記されており、政府は、原住民である個人を中心に支援を行っている。
 米国の先住民も同化が進んだのは事実だが、アイヌほどではない、と落合准教授は話す。「先住民は保留地への強制移住などに苦しみましたが、入植者とは集団として区別されたことで独自性やアイデンティティーを比較的維持できました」。一方、アイヌは明治政府により国民に統合され、生活領域も開拓の対象とされたため、集団としてのまとまりを喪失。和人と同化せざるを得なかった。
 集団としての把握が難しいならば、台湾のように個人への施策を行うことも考えられるが「戸籍にはアイヌであるかを記載する書式はなく、和風に改名されたアイヌもいるため、誰がアイヌかを判別するのは困難です」。さらに憲法の「法の下の平等」のため、対象をアイヌに限った支援が直ちには難しいと指摘する。
 では、アイヌ施策推進法の支援はどのようなものか。「市町村が、住民からの提案を受けて政府に交付金を申請し、アイヌ文化環境などの整備・向上施策を行います。支援対象はアイヌに限られませんが、アイヌからの提案が重要です」。その上で「アイヌの要望は世代や地域により多様。それらの具体的ニーズに応じた実効的な政策の実施が求められます」と話す。
 現在では、同化を強いられたアイヌのことを存在しないと誤解している国民も少なくない。「ウポポイは、アイヌに対する理解の深化と、持続的なアイヌ政策の確立に貢献すると思います」。現状、アイヌに対する国民の理解は高いとは言えないため、国民の適切な理解を得ることで、アイヌへの手厚い施策につながっていくという。「ウポポイでの啓発のみならず、義務教育でのアイヌに関する記述の充実化などの取り組みを通じて、和人の文化との違いやアイヌの歴史を知ってもらうことが共生の鍵になるでしょう」
アイヌ主体の展示を
 失われつつあるアイヌ文化を次世代へ継承、発展させる啓発の拠点としての働きが期待されているウポポイ。その中心施設である、国立アイヌ民族博物館の佐々木史郎館長に展示の特徴や狙いを聞いた。
 「まず重視したのは、アイヌ目線での展示です」と佐々木館長。「館内の第一言語をアイヌ語にし、アイヌ語の解説文を日本語よりも上に配置しました」。アイヌ語には統一的な書き言葉がなく、方言によって表現が多様だ。これをあえて統一せず、解説文ごとに異なる地域の方言を用いたという。またアイヌ語のネイティブ話者はほぼいないため、現代的な事物に対応した語彙はアイヌ語学習者と言語学者の協力で作った。
 また、解説文の主語は「私たち」と、アイヌの目線で記述されており、和人からの目線ではない。自分たちの文化を自ら語る「主体性」を強調したという。
 解説文の展示にはアイヌの学芸員も多く参画し、多様な意見が反映されている。例えば、若い学芸員からの「アイヌの古い伝統だけでなく、アイヌの今を知ってほしい」という意見を受けて、チセ(アイヌ語で家)の解説文には現在のアイヌが近代的な住宅に住んでいることを付記した。佐々木館長は「博物館でアイヌの伝統的な文化のみに触れるとアイヌが今でも展示のような生活を送っていると誤解されることがあります。アイヌが身近にいないからこそ生じる誤解です」と指摘。現在のアイヌの多くは近代的で、和人とあまり変わらない暮らしぶりで、同じ今を生きていることを知ってほしいと話す。
 アイヌ目線の語りが難しいところもあった。それはアイヌの歴史に関する語り。「抑圧を物語る歴史的資料を展示するなどにとどまり、淡々としたものになっています」。アイヌ出身の歴史研究者が不足し、アイヌ目線の語りが難しい側面があるからだという。代わりに映像でアイヌの人たちが受けてきた差別・偏見を自ら語る展示を設けた。
 開業に際して、ウポポイはアイヌ文化の観光産業化との批判もあった。これに対し、佐々木館長は「観光としてアイヌ舞踊や工芸品を見てもらうことで、アイヌの伝統技術の向上・継承につなげることを目指しています」と語る。
 今後は、日本のみならず、世界の人にもアイヌ文化に触れてもらう拠点としたいと話す。「アイヌ文化を接点にして、世界中からさまざまな人が白老の地に集まり、人類の多様性を考えることで民族共生へのヒントが得られると考えています」
https://www.todaishimbun.org/ainu_20201209/

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<大波小波> アイヌ語を学ぶということ

2020-12-09 | アイヌ民族関連
中日新聞 2020年12月8日 16時00分
 かつて詩人金時鐘(キムシジョン)は兵庫県立湊川高校で、朝鮮語を正課として教えた。日本人の生徒たちは最初当惑した。なんでやるねん。英語と違い、直接に実益に結び付かない外国語を学ぶ意味がわからなかったからである。金教諭は答えた。「再度、『朝鮮語』をはずかしめる側の『日本人』に、君達を入れてはならなかったのだ」
 生徒たちは納得し、学習を開始した。言語を取得とは他者の言葉を学ぶことであり、つまりは他者性という観念を学ぶことなのだ。
 アイヌ語へのアクセスが簡単になった。瀧口夕美(ゆみ)の『子どもとまなぶアイヌ語』(SURE)を読むと、この北方の言葉をどんどんタメ口で使ってみていいのだとわかる。「が」「は」といった格助詞はないが、語順は日本語とほぼ同じ。犬よりも猫が好きですと言うときは、シタ・アッカリ・ネコ・クエラマスイ。「犬」がシタなのに「猫」がネコなのは、まさか本来北海道に猫がいなかったということなのか。興味が学習意欲をそそる。
 津島佑子はある時から近代文学を超える視座をアイヌ神謡に求め、フランス語訳に尽力した。なるほどアイヌ語は神話言語である。だがそれが同時に、現代日本に生きている言語だと...
中日新聞読者の方は、無料の会員登録で、この記事の続きが読めます。
https://www.chunichi.co.jp/article/166959

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Shōtaro Aoyama、アイヌ音楽とのコラボレーションEP『Ainu Utasa』をリリース

2020-12-09 | アイヌ民族関連
BARKS 2020.12.8 18:00

Shōtaro Aoyamaが、自身のレーベル"Hyōgu"を立ち上げ、アイヌ音楽とのコラボレーションEP『Ainu Utasa』からの先行配信楽曲「Ihunke feat. Fukiko Goukon」を12月9日にリリースする。
「Ihunke feat. Fukiko Goukon」は、北海道阿寒湖のアイヌコタンに代々受け継がれてきたアイヌ音楽と、Shōtaro Aoyamaによるコラボーレーション作品。アイヌに古くから伝わる歌“ウポポ(座り歌)”や“リムセ(踊り歌)”、アイヌ楽器トンコリの伝統的な楽曲などをモチーフに、原曲には手を加えず、「今の音」をトラックで表現することにより、日本の音楽を現代的なアプローチで提案している。
音源はこの作品のために全て新たに録音され、音楽的なコラボレーションだけでなく、文化交流を通して制作された。今後は奄美大島民謡や、沖縄琉球音楽など、日本各地の音楽とのコラボレーション作品のリリースを予定している。
また、本楽曲のリリースに合わせてMVを公開している(https://youtu.be/2AXHvVLD8nM)。
https://www.youtube.com/watch?v=2AXHvVLD8nM&feature=emb_logo
●コメント
世界中の音楽を深く掘り下げていく中で、自分の国の音楽のルーツに向き合いたいと思うようになりました。
日本は、アイヌ音楽、奄美民謡、琉球音楽、大陸からきた雅楽や和太鼓など土地によって様々な音楽で溢れていますが、今年の2月にアイヌの方達と交流する機会をいただき、この作品が生まれました。
ルーツミュージックは生活の中から生まれた音楽のため、その土地に出向き、対話をして、文化を理解した上で、歌を録音させていただくことが重要で、サンプリングなどではなく、すべての楽曲は北海道釧路市阿寒湖のアイヌの方々にご協力いただき録音しています。
その昔から伝わる音楽を元に、原曲のグルーヴや世界観に寄り添いながら、現地で見た景色や感じた音を、僕の音楽の基盤であるダンスミュージックと融合させて、作品にしました。
日本人でも知らない音楽がとても多く、自分自身勉強し教わりながら、形にしていきました。
一曲ずつの歌の解説も動画にしてあるので、一人でも多くの方に日本の音楽を知るきっかけになればいいなと思っています。
リリース情報
タイトル: Ihunke feat. Fukiko Goukon
https://FRIENDSHIP.lnk.to/Ihunke
Release: 2020.12.9
Format: Digital
Label: Hyōgu
Track:
1. Ihunke feat. Fukiko Goukon
関連リンク
◆Shōtaro Aoyama オフィシャルサイト
https://www.barks.jp/news/?id=1000193458

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北海道出身の映画監督がアイヌ民族の生き様を映画に

2020-12-09 | アイヌ民族関連
アルタナ 12/8(火) 19:38

近年、アイヌが注目されている。「アイヌ新法」成立は記憶に新しく、大ヒットコミック「ゴールデンカムイ」により、多くの人がその文化の多様性や自然との共存を大切にする精神性に新たに魅せられている。(Lond共同代表=石田 吉信)
今年も北海道白老町にオープンしたばかりのアイヌ文化施設「ウポポイ」など、話題が尽きない。長編デビュー作『リベリアの白い血』で、ニューヨークに渡るアフリカの移民の苦悩を描き、国内外で高く評価された新鋭・福永壮志監督が5年をかけて作り上げた2作目となる今作は、自身が生まれ育った北海道を舞台に、阿寒湖のアイヌコタンで暮らす少年の成長を通して、現代のアイヌ民族のリアルな姿を瑞々しく映し出している。
本作で初主演を果たしたのはアイヌの血を引く新星・下倉幹人。演技は初めてとなるが、力強い眼差しが印象的な主人公・カントを演じ、アイデンティティにゆれる等身大の役どころに挑戦した。
その他主要キャストもアイヌが務め、カントの父の友人デボに扮するのは、阿寒に暮らし多岐にわたる活躍をみせる秋辺デボ。アイヌの伝統を重んじるデボ役を体現している。カントを優しく見守る母のエミ役は下倉幹人の実の母親でミュージシャンの下倉絵美が担当した。三浦透子、リリー・フランキーら実力派がゲスト出演し、作品に重厚感をもたらせている。(アイヌモシリHPから)
フィクションではあるが、映像のタッチはまるでドキュメンタリー
今年もたくさん映画を観たが、今年のTOP3に入るのではないかというくらい好きな映画であった。
主人公の下倉幹人さん(16歳)は初演技とのことだが、映画を観ていて「誰も知らない」の柳楽優弥さんを彷彿させた。彼の瞳が、眼差しがこの映画を印象付ける。
この映画はフィクションではあるが、映像のタッチはまるでドキュメンタリーだ。インタビューを読んでいると、福永監督も脚本は書いたが、あまり台詞を覚えさせたり、演出などは入れたりせず自然な様を撮ったという。
冒頭、印象的だったのは北海道 阿寒湖のアイヌ観光地のど真ん中に住む主人公が朝食を一人で食べ終わり、小学校へ行くシーン。
家のすぐ外では観光地らしく、アイヌの町、アイヌの文化についての町内アナウンスが延々とリピートされている。
延々とリピートされるアナウンスからは毎日毎日逃げられないのである。私なら、私が中学生ならこの環境に不快感を持つだろうと思った。
案の定、学校での進路相談のシーンでは「どこに行きたいというのはないが、この町以外がいい」と主人公のカントは言う。母親にもアイヌに嫌悪があることを伝える。
下倉幹人さん自身バンドをやっているが、劇中のカントもバンドをしていて、Chuck Berry のJohnny B Goodeを演奏するシーンがある。
この曲も田舎のギター少年が町を出てスターになっていくような歌詞だ。海外のロックスターに憧れる少年にこの町は狭過ぎたのかもしれない。
実際にアイヌでこの町で活躍している秋辺デボさんが演じる「デボ」と山にキャンプへ行くシーンが印象的であった。
山の入る前のお祈りから、死者の村まで繋がっているという穴、この後説明するイトマンテまで、アイヌの自然に対する敬意というか、「畏敬」の念を感じることができる。自然と密接であるが故に存在する「畏れ」。これは現代の都会人が忘れてしまったことかもしれない。
いつしか、自然をコントロールできるなどという過信により、人が一番偉いんだ、という過信により、モノを大切にしなくなり、それが今起きている気候変動や海洋プラスチック汚染、絶滅危惧種の増加、大量の食糧破棄、大量の衣類破棄などのアンサステナビリティな状態に繋がっているのではないかというのは想像できる。
「アイヌはもうアイヌの伝統を引き継ぎきれていない」
さて、先程出てきたイオマンテという儀式がこの映画の大筋になる部分であり、この儀式を実際のアイヌの町でアイヌの人々により映像化させたことにこの映画の歴史的価値があると思う。
「熊送り」と言われるその儀式は熊を神として、もてなし、育て、そして最後は殺してまた黄泉の世界へ帰ってもらう、というものである。
イオマンテにまつわる詳細は割愛するが、いくつか印象的であったことを挙げれば、一つは熊送りのアイヌ語の祈りの譜を暗唱でなく、「資料を見ながら」読み上げている様を映し出す場面。これと同様の場面がイオマンテ前にある。
それはカントのお母さんがお土産屋を営んでいるが、そこのお客さんに「あなたアイヌ?日本語上手ですね!」と言われるシーン。
そのシーンの後にカントのお母さんがアイヌ語をクラスで学ぶシーンが映し出される。
アイヌはもう日本語ではなくアイヌ語を学んでいるのである。
その祈りの譜を、資料を見ながら読み上げる場面とアイヌ語をお母さんが学んでいる場面に共通することは、「アイヌはもうアイヌの伝統を引き継ぎきれていない」ということ。
アイヌのアイデンティティは消えてしまうのか?
それはこの熊送りの儀式イオマンテをやらなきゃダメだ、これがないとアイヌじゃない!と商工会でデボが議論することとも同様だ。その議論ではそんなことは動物愛護的に世間がもう許しちゃくれねぇよと町仲間は言う。
しかし、イオマンテは決行されるわけだが、この映画はフィクションであって、現実世界では30年以上もう行われていないという。
この映画は北海道出身の福永監督自身が自分のルーツをある種の再現により体験する旅と言えるだろう。
おそらく映画を作るまでにたくさんヒアリングして「アイヌの伝統は引き継ぎきれていない」ということがわかったのだろう。そうでないと当事者である演者たちがこの脚本を許すはずがない。
いつかアイヌ語を話したり、読んだりできる人がいなくなる。
いつかアイヌ固有の儀式の存在もやり方も知ってる人がいなくなる。
どんどん和人(アイヌ以外の日本人)との混血が進む中、アイヌのアイデンティティは消えてしまうのか?
アイヌというと「差別」の話が出てくる。
私の知識と経験と感覚からすると全然わからないが、根強くあるらしい。
ネットでそれについて読み漁ったがなかなか何故差別されているのか、と言う理由がいまいちわからなかったが、江戸時代あたりの一揆で和人との争いからお互いの嫌悪が始まったのか?とか思ったりもしたが、まだまだ理解に及ばず。
でも、この映画を通じて、アイヌ、先住民族、アイデンティティのルーツ、差別などの疑問や興味を持ち学べたことは感謝している。
フィクションからここまで現実世界の社会問題まで想いを馳せ、背景を調べ、自分の知識や好奇心を掻き立ててくれる映画はそうそう無い。
2020年は、「Black Lives Matter」というワードがSNSを飛び交った黒人差別の話題から、中国のウイグル人や香港に対する人権侵害についてなど、「人権」にまつわる話が多く出てきている年だと思うが、アイヌという先住民族と和人、についての話もここに入ってくるだろう。
こういう側面から人の尊厳や、自分のアイデンティティ、存在について、日本人について、公平や平等について、差別について、など考えを広げていくことは、今後の多様性が求められる世界をどう生きていくのか、という命題へ自分なりの答えを出していくヒントになると思う。
何よりこの映画は美しい。
美しい景色、静かな時間。
レビュー冒頭にカントの眼差しが印象的だと書いたが、この映画ではなんと、首を狩られ供えられた熊の視点からの描写があったりもする。
そしてその熊の瞳もまた美しい。その瞳、眼差しはカントのそれと重なって見えた。
熊の「チビ」とカントの眼差しは世界をどう見ていたのか。その純粋さがこの映画のカメラが捉えた美しさとリンクして感じたのは私だけだろうか。
石田吉信:
株式会社Lond代表取締役。美容師として都内3店舗を経て、28歳の時に異例の「専門学校のクラスメイト6人」で起業。現在銀座を中心に国内外、計22のサロンを運営中。1号店のLondがHotpepper beauty awardで4年連続売り上げ全国1位を獲得。「従業員第一主義」「従業員の物心両面の幸福の追求」を理念に、70%以上という言われる高離職率の美容室業界で低離職率(7年目で160人中5人離職)を実現。また美容業界では未だほぼ皆無であるCSR、サステナビリティに向き合い、実践の傍ら普及にも努めている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/9cd25fb1761de48bf174451bfc0b996baf013856

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“常連”辻さん、今年も入賞 道シニア陶芸展【登別】

2020-12-09 | アイヌ民族関連
室蘭民報 2020.12.08
シニア陶芸展で入賞した辻さんと作品
 北海道陶芸協会の第38回北海道シニア陶芸展で、登別市の辻昌子さんがDCMホーマック賞に輝いた。2014年(平成26年)の新人賞を皮切りに、毎年各賞を受けてきた実力派。今年はアイヌ民族の古式舞踊の一つ「鶴の舞」をテーマに、2人の少女が笑顔で踊るさまを表現した。
 辻さんは17年、アイヌ民族をモチーフにした「イナウ(神)を持つエカシ(長老)」で、最高賞の同協会賞・北海道知事賞を受賞。今年もアイヌ民族にスポットを当てており、作品タイトルは「鶴の舞を踊るアイヌの姉妹」。
 衣装を両手で広げて羽ばたく動きを表現している。設定もユニーク。姉は17歳、妹は7歳を想定。姉はおしとやかだが、妹は辻さんいわく「ちょっとおてんば」。表情にも年齢差が表れており、姉は女性らしい凛とした姿、妹は幼さの残るかわいらしい笑みが印象的だ。
 制作に当たり、民族共生象徴空間・ウポポイ(白老町)を訪問したが、たまたま鶴の舞が披露されない日だった。インターネットの動画で踊りを参考にした。アイヌ民族の衣装は地域によって文様が異なることから、書籍をベースに姉妹で別のデザインにした。
 妹のひざをやや曲げるなど姉との違いを表現した。辻さんは「姉妹の作品を手掛けてみたかった。衣装の丸みを表現することが難しかったですね」と話した。
 辻さんは市内の工房「ふきの陶」で研さんを積んでいる。工房を主宰し、自身も今回奨励賞に輝いた佐藤彰さんは「辻さんの作品は躍動感が伝わる素晴らしい仕上がりです」とたたえていた。
http://www.hokkaido-nl.jp/article/19963

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