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体験型観光サミット 道内開催へ準備着々 開催危ぶむ声も

2020-12-06 | アイヌ民族関連
北海道新聞 12/06 05:00
洞爺湖町のモデルツアーで、波打つ旧国道(右奥)を前に専門ガイドの話を聞く参加者
 来年9月にアジア初となる、体験型観光を中心とした「アドベンチャートラベル(AT)」の国際サミットが道内開催されるのを前に、参加者向けのツアーづくりなど準備が進んでいる。ATは欧米で人気が高く、関係者は「アフターコロナ」の道内観光の起爆剤になると期待するが、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、開催自体を危ぶむ声も出ている。
 11月中旬、胆振管内洞爺湖町で北海道運輸局などが開いた関係者向けモデルツアー。洞爺湖有珠火山マイスターの江川理恵さんが昔の写真を見せながら、2000年の有珠山噴火で波打つように変形した旧国道を指さすと、参加者から「うわー」と驚きの声が漏れた。
 旧国道までは、山麓火口散策路から外れた急斜面を下る必要があり、現在は学校の授業などでしか訪れることができない。ただ、地元のガイドからは「ダイナミックに地球の動きを感じられる」と人気があり、運輸局などは来年を機に、この場所を含めた一般ツアーの道を開きたい考えだ。
 サミットには例年、数十カ国から800人ほどの旅行会社やメディア関係者が集う。サミットに合わせて実施される現地での日帰りから1週間ほどのツアーに参加し、商品化を検討するのが通例となっている。
 道などでつくる実行委は11月までに、旅行会社が応募した企画の中から、道内各地で実施する約50のツアーを選んだ。サイクリングや登山などの自然体験だけでなく、有珠山の噴火やアイヌ文化など北海道の歴史や文化を学ぶツアーも多い。実行委は米国の主催団体と協議し、来春に正式なツアー内容を決める方針だ。
 ATは富裕層が好む傾向があり、関連の市場規模はコロナ前の推計で年間76兆円と大きい。コロナ禍で打撃を受けている道内の観光業者からは「救世主になり得る」(あるホテルチェーン)と期待の声が上がる。
 ただ10月に開催予定だった今年のオーストラリアでのサミットはコロナの影響で中止に。感染が再拡大する中、予定通り開催されるかどうかが焦点になりつつある。
 実行委関係者は「(来夏の)東京五輪が開けるかどうかが試金石になるのではないか。開催を信じて粛々と準備するしかない」と話した。(堀田昭一)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/488817

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北海道ローカル『ハナタレナックスSP 』来年1月、BS朝日で全国放送

2020-12-06 | アイヌ民族関連
北海道新聞 12/05 12:00

 HTBで9日(後7:00~8:00※北海道ローカル)放送の『ハナタレナックスSP ウポポイに隠された美しき宝を探せ!』が、BS朝日で来年1月17日(後1:00~2:00)に放送されることが決定した。
 同番組は、TEAM NACS(森崎博之、安田顕、戸次重幸、大泉洋、音尾琢真)の5人全員が出演する唯一のバラエティーということで、ネット上でも全国放送を望む声が多く上がっていた。
 番組の舞台は、アイヌ文化の復興と発展の拠点として今年7月に北海道白老町に誕生した民族共生象徴空間「ウポポイ」。そのオフィシャルサポーターを務めるTEAM NACSの5人は、広大な敷地の各所に散りばめられた謎解きゲームに挑戦することに。これまで深夜レギュラー放送で過去3度やってきた謎解き企画だが、今回はゴールデンタイムでの放送ということもあり、番組スタッフも気合十分。これまでにないスケールで巧妙に仕組まれた謎の数々に対し、過去の同企画で目立った活躍がみられない大泉は「簡単だな!(笑)」と、なぜか余裕の表情。戸次は「とてつもない仕掛けが待っているので、楽しみにしていただきたい!」と猛プッシュしている。後半には衝撃サプライズもある。
 「ウポポイ」全面協力のもと、休館日の施設を1日貸し切って行われた撮影だったが、この日はあいにくの…いや、お約束というべきなのか、TEAM NACS名物の“雨男”大泉らしい悪天候。波乱の幕開け?かと思いきや…5人そろって初めてのウポポイにハイテンションで収録がスタート。「イランカラ【プ】テ(※【】は小文字/こんにちは)!」から始まり、次第に知的好奇心が高まったメンバーが投げかけた質問は、「アイヌ語でハゲは?」。いつもは俳優として大活躍の面々だが、この番組では、地元北海道ローカルだからこその素顔がまる出しに。幅広い年代の視聴者に、5人と一緒に楽しくアイヌ文化の魅力に触れられる1時間となっている。
 星悠平プロデューサーは「HTBの深夜バラエティー番組『ハナタレナックス』がゴールデンタイムにお邪魔します! ゴールデンだからといって決して余所行きの格好をするのではなく、ハナタレらしいおバカな姿勢を忘れずに、北海道の新スポット・ウポポイの魅力をどうやって伝えるかということに重点を置きました。等身大の5人の茶目っ気あるトークに、謎解きミステリーという仕掛けと、アイヌ文化の基礎知識が楽しく学べる教育要素が加わり、これまでにない新感覚の知的教養バラエティーに仕上がったと手応えを感じています。全国的に新型コロナウイルスが猛威を振るっていますが、落ち着いたタイミングで是非『ウポポイ』へロケ地巡りに訪れていただければと思います」と、コメントを寄せている。
■番組ホームページ
https://www.htb.co.jp/hanatare/golden2/
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/488700

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モアナ・パシフィカが歴史的第一歩 NZマオリ相手に力証明しスーパーラグビー参入へアピール

2020-12-06 | 先住民族関連
ラグビーリバブリック 2020.12.05
モアナ・パシフィカのNO8として奮闘したピタ・ソワクラ。走力も高く、仕事量豊富(Photo: Getty Images)
 2022年以降のスーパーラグビー新規参入を目指す“モアナ・パシフィカ”が、歴史的な第一歩を踏み出した。
 フィジー、サモア、トンガをルーツとする選手で結成されたこのチームは、ハミルトン(ニュージーランド)のFMGスタジアム ワイカトで12月5日、ニュージーランドの先住民族マオリの血を受け継ぐ選手で編成される“マオリ・オールブラックス”と対戦。21-28で惜敗したが、パシフィックアイランド(太平洋諸島諸国)出身のラガーマンたちに希望を与えた。
 開始早々、モアナ・パシフィカの背番号8をつけたフィジー出身のピタ・ソワクラが魅せた。自軍がキックオフしたボールを果敢に空中で確保し、まもなく相手に反則が出て、先制のペナルティゴールにつなげた。ゴールキッカーを務めたジョシュ・イオアネはニュージーランド代表として1キャップを持つが、サモア系であり、この日は黒衣ではなくモアナ・パシフィカのジャージーを着て奮闘。10分と32分にもゴールポストを狙って成功した。
 対するマオリ・オールブラックスは23分、この試合がデビュー戦となった21歳のFBカイレブ・トラスクが鋭い走りでディフェンスを突破してゴールへ駆け抜けた。
 2点ビハインドで迎えた43分(後半3分)には、ラインアウトからモールで押し込み逆転。49分には、新鋭CTBクイン・トゥパエアが左サイドを駆け上がりキックも交えた個人技でチャンスメイクし、同じく21歳でデビュー組のCTBビリー・プロクターにつないでトライが生まれた。
 それでもモアナ・パシフィカは食らいつき、53分、敵陣22メートルライン内で10フェイズを重ね、サモア代表のFLアラマンダ・モトゥンガがタックラーを外してチーム初トライを記録。
 その後、再びマオリ・オールブラックスに突き放されたものの、76分にはゴール前のスクラムで相手のFWパックを崩し、2019ワールドカップ経験者のサモア代表SHドウェイン・ポラタイヴァオがボールを手にしてインゴールに突っ込み、コンバージョンも決まって7点差とした。
 結局、マオリ・オールブラックスが28-21で制したが、モアナ・パシフィカはニュージーランドの伝統あるチーム相手に互角に戦い、スーパーラグビーでも勝負できる力があることを証明した。
https://rugby-rp.com/2020/12/05/nations/57205

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「LGBTIQ+に職業・政治観の差別持ち込まない」

2020-12-06 | 先住民族関連
日豪プレス 2020年12月6日
シドニー・マルディグラ、警察・自由党排除動議否決
 シドニー・マルディグラの会議で、「警察官、刑務官、自由党政治家の参加を永久に認めない」とする動議が否決された。
 ABC放送(電子版)が伝えた。
 この動議は、「Pride in Protest」グループが、「一部の参加者の間で、警察官、刑務官の行進参加に不安を感じるという声がある」としていたもので、もう一つの動議は、「連邦首相、NSW州首相に対して参加拒否を公式に明らかにする」というもの。
 マルディグラ主催委員会の年次会議の場で、「Pride in Protest」グループは、パレードを1978年の最初の同性愛者迫害に対する抗議行動のルーツに戻すことを主張している。1978年の抗議行動は同性愛を禁じるNSW州法に対する抗議であり、抗議行動が警察の暴力的な参加者逮捕に終わり、メディアが参加者の氏名を報道したことで多くの参加者が解雇された事件の顛末がマルディグラ・パレードの起源になっている。
 12月5日の会議で、261人が「2021年のパレード以降、警察官、刑務官の参加を禁止する」動議に賛成し、327人が反対した。
 マルディグラ主催委員会が声明を発表し、「LGBTIQ+の個人やグループを、職歴、団体、政治的関係などを理由に排除することは、すべての人の社会的包含を目標とするマルディグラの主旨に添うものではない」と述べている。
 一方、「Pride in Protest」グループは、「私達は個人を排除するものではない。警察官や刑務官であっても個人として、あるいは他の社会的名目のフロートで参加することはできるが、NSW州警察や矯正局の旗を掲げて参加することに反対しているだけだ」と述べている。
 また、会議では、「スコット・モリソン連邦首相やグラディス・ベレジクリアンNSW州首相の参加を公式に禁じるべきだ」とする動議も出されたが、324票対169票で否決された。
 委員会は、「連邦首相と州首相は個人的に招待されておらず、参加を禁じることで社会正義を達成できるものではない」と述べている。
 また、「先住民族の個人が警察や刑務所などに勾留中に警察官の暴力や病死、自殺などで死亡する事件に抗議するBlack Lives Matter運動に対してマルディグラ主催委員会が明確に支持と連帯を表明すべき」という動議も321票対180票で否決された。
 LGBTIQ+の警察官は1998年以来、州警察の名前で団体参加しており、2019年にはマイケル・フラー警察長官が1978年の警察官の暴力行為を公式に謝罪し、抗議行動参加者に対する判決はすべて削除されている。
■ソース
Sydney Mardi Gras votes to keep NSW Police and Liberal Party at future parades
https://nichigopress.jp/ausnews/201583/

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伊藤詩織、映像ジャーナリストとして生きる。現実から見出す、小さなともし火

2020-12-06 | 先住民族関連
フォーブス 12/5(土) 17:00
映像ジャーナリスト、伊藤詩織さん。2020年9月、米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に、テニスの大坂なおみ選手とともに選ばれた。皆さんは彼女の名前を聞いて、どんな姿を思い浮かべるだろうか。
記者会見で性暴力被害を告発する姿、民事訴訟で勝訴して泣きながら思いを吐露する姿、ツイッター上の誹謗中傷への訴訟で切に訴える姿──。いずれも、現状を自ら変えようと、使命感を持って行動を起こす「アクティビスト」のイメージがあるのではないだろうか。
しかし、映像ジャーナリストとしての彼女の素顔は、少し印象が異なる。自身は黒子に徹し、取材対象者に寄り添い、微かな温かみを感じられるような表現のドキュメンタリー作品を発表している。
そもそも、なぜ彼女はジャーナリストの道を志したのだろうか。
10代で日本を飛び出して、単身アメリカへ渡り、それから世界を巡りながら自らの夢を追いかけてきた。そして、コロナ禍のために、現在の拠点は日本に置く。10年ぶりに生活拠点を母国としても、詩織さんはドキュメンタリー制作を続けている。彼女はいま、どのような世界を追いかけているのだろう。過去を辿り、最新の姿を伝えたい。
最初のアメリカ留学、衝撃体験。そして、刺激的な遠回り
「いつかサバンナに行って、現地からレポートをしたい」詩織さんは子どものころ、「ライオンキング」の世界観に憧れ、こんな夢を描いていた。
年の離れた妹と弟がいる彼女は、4歳のころまで郊外の団地で育ち、自立心の強い子どもだった。
中学3年のころ、「寮生活のできるイギリスの高校に行きたい」と志望したが、資金が足りず、友人から教えてもらい、ボランティアで留学生を受け入れてくれるアメリカの一般家庭を見つけた。
留学先の希望調査には、冒頭のような夢から、「動物と自然が好き」と書き込むと、受け入れ先はアメリカ本土の中央部に位置するカンザス州に割り振られた。
コロラド州やオクラホマ州などに隣接し、大規模農業や牧畜業が盛んな地域だ。最初の受け入れ先の家庭は、トレーラーハウスだった。次に移った2軒目の家庭では、300頭もの牛を飼育していた。
高校のクラスメイトたちは、カンザス州から出たことなどなく、州外の世界に関心のない生徒が多く、アメリカの中にも閉鎖的な地域があることに衝撃を受けた。周囲からは、まず「日本って中国の中にあるんでしょ?」と言われたり、歴史教育の中では「日本人としてどう思う?」と意見を求められたりもした。
そんな初めての世界に飛び込んだ詩織さんは、自分自身を「エイリアンのような存在だった」と感じていたという。
「外部の情報がないということで、恐怖を感じることがあった。最初の留学で、情報がどれだけ人生に関わるのかということを、身をもって知りました」
そんな情報が遮断されたなかで頼りにしたのが、外の世界と繋がるニュース番組だったという。
学生時代からすぐにジャーナリズムの世界に飛び込むため、ニューヨークの大学へと進学したかったが、再び金銭的な事情で頓挫。まずは日本のある県立短期大学へ進学することにした。
その後、学費を抑えつつ単位を取得するためにドイツやスペインの大学を転々として学び、2012年、ついにニューヨークの大学に転入学し、写真を専攻する。
しかし、物価の高いニューヨークでの生活は続かず、翌年にイタリアへ留学。再びニューヨークに戻ったのは2014年の夏だった。「遠回りの人生」だが、彼女はこう笑う。
「刺激的な遠回りでしたよ。そして、ジャーナリズムを学びたいのではなく、私は早くこの仕事をしたかったんです。それを叶えるため、自分の足で世界中いろんなところに行って、いろんな人と話してきた。おかげで成長できました」
その間には、日本テレビのニューヨーク支局でインターンシップをしたりして、忙しく過ごした。悩む暇などなかったという。ただ、夢の実現に向けて、前へと進むのみだった。
孤独死の現場で、感じたこと
アルバイトで貯めた資金も底をつき、一時帰国後、ロイター通信の日本支社でインターン契約を得る。ニューヨークの留学生活で知り合ったTBSの元記者から、性暴力被害を受けたのは、その日本にいた2015年4月だった。
性暴力被害は「魂の殺人」とも呼ばれ、その後の詩織さんはPTSDを発症するなど、多大な心痛を受け、民事裁判では勝訴したのはご存知の通り。彼女も「あの日、私は一度殺された」と自著の『Black Box』に記すように、それは消えない傷となった。
一方で、苦しさを抱えながら、ジャーナリストとしてのともし火は消してはいなかった。イギリスの支援団体から声がかかり、コロナ禍前の5年弱は、イギリスを拠点としてきた。
支援団体を通じて、スウェーデン出身のジャーナリスト、ハンナ・アクヴィリンとの出会いもあり、2018年に彼女と共にドキュメンタリー制作チーム「Hanashi Films」を設立。BBCやアルジャジーラなどで作品を発表してきた。
孤独死の現場を追って、感じた「愛おしさ」
最初に、詩織さんが手がけたドキュメンタリーは『Lonely Death』という作品だ。日本の孤独死をテーマに、死後の現場の清掃人たちを追った、45分17秒の作品は、シンガポールを拠点にするCNA(Channel NewsAsia)で、2017年に放送された。そして、この作品は、国際的なメディアコンクール「ニューヨークフェスティバル2018」で銀賞を受賞する。
当初は、ロイターのインターンとして、3分間の短いニュース映像に仕立てたのだが、そこでは収まりきらないストーリーがあり、それを伝えたかったために長いドキュメンタリー作品にしたという。
「まず、孤独死=高齢化社会という図式は自分の思い込みだと気づいた。どれだけ人との繋がりがなくなっているか、コミュニケーションに課題がある。そしてそれは、東京で1人暮らしをしていた自分にも、あり得る話だと思った」
こう考えた詩織さんは、最初にBBCへ企画書を持ち込んだ際に「時間的に制約があるので放送はできないが、企画としては面白い」と言われたことが後押しになったという。
孤独死の場合、死後から発見まで時間がかかることも多く、遺体がすでに搬出された後であっても、体液が残っていたり、うじ虫が大量発生していたり、凄惨きわめる現場である。
ドキュメンタリーでは、若き20代の女性の清掃人に焦点を当てた。彼女は現場に入ると、合掌をした後、先輩の清掃人の指示のもと、手際よく部屋の片付けをしていく。そんななか、故人のものと見られる家族写真なども発見されていく。
取材現場では、深い悲しみを抱えた人と接することもある。その時、心がけていることがある。
詩織さんは、孤独死の現場でどんなことを感じていたのだろうか。
「正直言うと、最初は、私もすごく悲惨な状況、嗅いだことのない臭いに慣れませんでした。でも、当たり前だけど、故人の方も私たちと同じ『人』だった。女性の清掃人からは、故人の方への敬意や愛も感じられ、だんだん私も故人に対して愛おしさを感じてきました」
人の死や命と向き合うとき、詩織さんはあることを心がけているという。
「(性暴力被害の件で)自分が取材される側になって感じたのは、すごくエネルギーを使うということ。取材という行為は、相手に対して暴力的になりかねない。深い悲しみを抱えている人に、またその話をしてもらうのはすごく酷なこと」と前置きしたうえで、それは「取材相手とできるだけ近いゴールを持っている」ということだという。
例えば「2度とこんなことが起きないようにする」という目的を持ち、見えづらかった課題を可視化することこそ、ジャーナリストの仕事であるともいう。
「自分で言える肩書きは、ジャーナリストだけ」
日本で、詩織さんは、厳選されたクリエイターたちが自由に作品を投稿できるプラットフォーム「Yahoo! JAPAN クリエイターズプログラム」に参画し、ショートフィルム作品を発表している。
アフリカのシエラレオネの少女の女性器切除の実情を追った『Complete Woman Episode』など話題作を発表し、2019年にはプログラム内の「ドキュメンタリー年間最優秀賞」を受賞した。
現在は、初となる長編のドキュメンタリー映画の制作も行なっている。財政破綻した夕張市の姿を5年前から追った『ユーパロのミチ』だ。
題名はアイヌ語で、ユーパロは夕張という地名の由来ともなっている「鉱泉の湧き出るところ」、ミチは「父親」という意味だ。映画では、炭鉱夫を力強く支えた、たくましい母の姿にもスポットを当てている。この地には、開拓以前は、アイヌの人たちの暮らしがあった。
実は、2020年中に完成させたかったのだが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、追加取材が行えない状況になってしまった。「共につくってくれた、撮影に応じてくれた人たちにも早く見せたい」と、自身も完成を心待ちにしている。
「ドキュメンタリーってあまり身近じゃないかもしれないけれど。最近、ネットフリックスとかで、若い人もよく観ていますよね。映画として、身近に多面的に伝えられることをとても楽しみにしています」
コロナ禍の収束が見えないなか、映画は完成の見通しがつきにくい状況だが、当面は、日本を拠点にドキュメンタリーの制作もするつもりだという。
ジャーナリストとアクティビストの関係性
映像ジャーナリストであり、アクティビスト。その両面を併せ持つことで見えてきたことはあるのだろうか。そんな疑問に、詩織さんは「自分で言える肩書きは、ジャーナリストだけ」ときっぱりと答える。
「自らアクティビストを名乗ったことは一度もありません。性暴力被害がなければこのような活動をしていません。自分ではコントロールできないところですよね。だからアクティビストとして賞をいただいた時は、本当にびっくりしました。アクティビストっていろんな解釈があると思いますが、選んだ人たちにとってのロールモデルになっているのではないでしょうか」
映像ジャーナリストとして、着々と作品づくりをしている詩織さん。今後の目標を尋ねると、彼女はこう笑った。
「ゴールはありません。だけど、ちっちゃい夢、バケットリストはいっぱいありますよ」
そのリストにはこんな夢が載っている。
・エベレストかキリマンジャロに登る
・海の目の前に住んで釣りをしながら暮らす
・スペイン・バルセロナで暮らす
・シベリアを横断する
聞くと、彼女とってのちっちゃい夢は、大きな夢ばかりのようにも思える。だが、ここで冒頭の幼い頃の詩織さんのサバンナへの夢を思い出す。彼女の人生は、酷な運命に晒されても、小さなともし火で自らの心を照らし続けているのだ。その灯りは、誰かの人生をも明るく照らしているのだろう。
督 あかり
https://news.yahoo.co.jp/articles/5b2cd7d2f160213fd2084d2c3198d44080e01d7a

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