北海道新聞 12/27 05:00
白老町のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の納骨堂の前にたたずむ木村二三夫さん(右から2人目)ら遺骨返還に取り組む関係者
全国の12大学が保管していたアイヌ民族の遺骨のうち、202体と、ばらばらで個体として判別できない59箱が依然、北大や札幌医科大、東大など8大学に残され、ほぼ返還の見通しが立っていないことが分かった。「盗掘」された地域の関係者と国の交渉が難航し、地域が望む形での返還のめどが立っていないためとみられる。遺骨の大半がアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」(胆振管内白老町)の慰霊施設に集約されて1年。関係者は改めて国に積極的な取り組みを求めている。
遺骨数は、北海道新聞が文部科学省の調査結果を基に集計した。関係者によると、202体、59箱の大半は樺太などで収集された遺骨とみられ、地域から返還の求めがあるため、ウポポイには集約されなかった。同省は「引き続き返還に向けて協議を進めたい」(学術機関課)としているが、遺骨返還運動の関係者によると、大半は具体的な返還の見通しは立っていないという。
同省の調査によると、昨年4月時点で12大学が保管していた遺骨は1574体と判別不能の346箱。このうち訴訟も含めて個人や地域から返還の求めがあった遺骨を除く1323体と287箱がウポポイの慰霊施設に移された。
地域への返還例では、十勝管内浦幌町のアイヌ民族団体「ラポロアイヌネイション」(旧浦幌アイヌ協会)は返還訴訟を通じ、17年8月から今年8月にかけ、北大と札幌医科大、東大から遺骨計102体を取り戻し、再埋葬した。うち7体は昨年4月以降に返還された。
さらに今年10月、政府が定めたガイドラインに基づき返還を求めていた日高管内の三石アイヌ協会(新ひだか町)に1体、平取アイヌ協会(平取町)に34体が返還された。北大などから紋別アイヌ協会(紋別市)にも7体が返還される方向で協議が進んでいる。
大学が保管する遺骨は、19世紀から20世紀前半にかけて研究者らが収集した。1980年代に各地の大学の棚にむき出しで陳列されるなどずさんな保管が発覚し、アイヌ民族が返還運動を続けてきた。国はウポポイに集約した遺骨についても地域に返還するまでの「一時保管」と位置付け、申請があれば返還を検討するとしているが、具体的な手続きは進んでいないようだ。
今月11日には遺骨返還問題に取り組むアイヌ関連の2団体が慰霊のためウポポイを訪問。慰霊施設内への立ち入りは空調管理などを理由に認められず、参加した日高管内平取町の木村二三夫さん(71)は「さまよう先祖の魂を感じた。ウポポイと大学に保管されている遺骨は一日も早く地域に戻してほしい」と話した。
アイヌ民族の権利回復に取り組む室蘭工業大の丸山博名誉教授は、国連の先住民族権利宣言で遺骨返還を求める権利が明記されているとし、「大学は研究の過程や目的を説明し、返還に取り組む必要がある。国はアイヌ民族を積極的に支援すべきだ」と指摘する。
文化庁によると、アイヌ民族の遺骨は今年1月時点で、北海道博物館や東京国立博物館などの全国の博物館17施設にも133体、8箱が保管されており、各施設が地域のアイヌ民族団体と返還について協議している。(田鍋里奈、大能伸悟)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/496226
白老町のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の納骨堂の前にたたずむ木村二三夫さん(右から2人目)ら遺骨返還に取り組む関係者
全国の12大学が保管していたアイヌ民族の遺骨のうち、202体と、ばらばらで個体として判別できない59箱が依然、北大や札幌医科大、東大など8大学に残され、ほぼ返還の見通しが立っていないことが分かった。「盗掘」された地域の関係者と国の交渉が難航し、地域が望む形での返還のめどが立っていないためとみられる。遺骨の大半がアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」(胆振管内白老町)の慰霊施設に集約されて1年。関係者は改めて国に積極的な取り組みを求めている。
遺骨数は、北海道新聞が文部科学省の調査結果を基に集計した。関係者によると、202体、59箱の大半は樺太などで収集された遺骨とみられ、地域から返還の求めがあるため、ウポポイには集約されなかった。同省は「引き続き返還に向けて協議を進めたい」(学術機関課)としているが、遺骨返還運動の関係者によると、大半は具体的な返還の見通しは立っていないという。
同省の調査によると、昨年4月時点で12大学が保管していた遺骨は1574体と判別不能の346箱。このうち訴訟も含めて個人や地域から返還の求めがあった遺骨を除く1323体と287箱がウポポイの慰霊施設に移された。
地域への返還例では、十勝管内浦幌町のアイヌ民族団体「ラポロアイヌネイション」(旧浦幌アイヌ協会)は返還訴訟を通じ、17年8月から今年8月にかけ、北大と札幌医科大、東大から遺骨計102体を取り戻し、再埋葬した。うち7体は昨年4月以降に返還された。
さらに今年10月、政府が定めたガイドラインに基づき返還を求めていた日高管内の三石アイヌ協会(新ひだか町)に1体、平取アイヌ協会(平取町)に34体が返還された。北大などから紋別アイヌ協会(紋別市)にも7体が返還される方向で協議が進んでいる。
大学が保管する遺骨は、19世紀から20世紀前半にかけて研究者らが収集した。1980年代に各地の大学の棚にむき出しで陳列されるなどずさんな保管が発覚し、アイヌ民族が返還運動を続けてきた。国はウポポイに集約した遺骨についても地域に返還するまでの「一時保管」と位置付け、申請があれば返還を検討するとしているが、具体的な手続きは進んでいないようだ。
今月11日には遺骨返還問題に取り組むアイヌ関連の2団体が慰霊のためウポポイを訪問。慰霊施設内への立ち入りは空調管理などを理由に認められず、参加した日高管内平取町の木村二三夫さん(71)は「さまよう先祖の魂を感じた。ウポポイと大学に保管されている遺骨は一日も早く地域に戻してほしい」と話した。
アイヌ民族の権利回復に取り組む室蘭工業大の丸山博名誉教授は、国連の先住民族権利宣言で遺骨返還を求める権利が明記されているとし、「大学は研究の過程や目的を説明し、返還に取り組む必要がある。国はアイヌ民族を積極的に支援すべきだ」と指摘する。
文化庁によると、アイヌ民族の遺骨は今年1月時点で、北海道博物館や東京国立博物館などの全国の博物館17施設にも133体、8箱が保管されており、各施設が地域のアイヌ民族団体と返還について協議している。(田鍋里奈、大能伸悟)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/496226