先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

坂本龍一が絶賛! アイヌ映画「アイヌモシリ」がロングランの兆し

2020-12-19 | アイヌ民族関連
東スポ 2020/12/18 17:00
 音楽家・坂本龍一(68)らアーティストが応援するアイヌをテーマにした映画「アイヌモシリ」(福永壮志監督 公開中)がロングランの兆しだ。
 同映画は14歳主人公・カントの物語。アイヌ文化に触れながら育ってきたカントだったが、1年前の父親の死をきっかけにアイヌの活動に参加しなくなる。アイヌ文化と距離を置く一方で、カントは友人たちと始めたバンドの練習に没頭し、翌年の中学校卒業後は高校進学のため故郷を離れることを予定していたが、亡き父親の友人で、アイヌコタンの中心的存在であるデボと出会うことでストーリーが展開していく――。海外映画祭などで称賛され、日本でも口コミで拡大。2021年1月5日より恵比寿にある東京都写真美術館ホールでの上映が決定した。
 坂本氏は「いい映画だと思う。少年が伝統との葛藤のなかでアイデンティティーに目覚めていく過程も、ウソなく描かれていていいね」とコメントを寄せた。
https://news.goo.ne.jp/article/tokyosports/entertainment/tokyosports-2526582.html

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米先住民、閣僚に初起用 バイデン氏が歴史的な指名へ

2020-12-19 | 先住民族関連
BBC 2020年12月18日

ハーランド氏は内務長官に就任すれば、バイデン氏の環境政策を実施する上で重要な役割を担う
アメリカのジョー・バイデン次期大統領が、内務長官にネイティヴ・アメリカン(米先住民)のデブ・ハーランド下院議員(60)を起用する見通しとなった。先住民の閣僚は同国初となる。米メディアが17日、報じた。
議会で承認されれば、ハーランド氏は内務省初の先住民のトップとなる。同省は公有地を管理しており、先住民に関係する問題にも深く関わっている。また、環境政策の実施でも重要な役割を担う。
先住民の権利団体や民主党の進歩派はここ数週間、ハーランド氏を指名するよう働きかけていた。
https://www.bbc.com/japanese/55359710

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バイデン氏、内務長官に先住民のハーランド議員指名か 米メディア

2020-12-19 | 先住民族関連
AFP 2020年12月18日 11:57 発信地:ワシントンD.C./米国 [ 米国 北米 ]

【12月18日 AFP】米メディアは17日、ジョー・バイデン(Joe Biden)次期大統領が内務長官に先住民のデブ・ハーランド(Deb Haaland)下院議員(60)を指名する方針だと報じた。上院で承認されれば、先住民として初の閣僚となり、しばしば問題が生じる内務省と先住民との関係を変える可能性がある。
 先住民ラグナ・プエブロ(Laguna Pueblo)のハーランド氏は、ニューメキシコ州から選出された1期目の民主党議員。
 バイデン氏は、米史上最も多様な政権を樹立するという公約を鳴り物入りで打ち出している。
 内務省は職員7万人以上を擁する大規模な機関で、連邦政府が承認した578の先住民族の土地を監督している。
 ハーランド氏は議会で、先住民コミュニティーへの公共サービス改善に重点的に取り組み、新型コロナウイルスの流行関連の支援を重視している。新型ウイルスの流行では、先住民家庭が特に大きな打撃を受けている。
 ハーランド氏は米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)に掲載された声明の中で、「バイデン氏と(次期副大統領のカマラ・)ハリス(Kamala Harris)氏の気候政策を推進し、(ドナルド・)トランプ(Donald Trump)政権が破壊した連邦政府と先住民指導部との関係の修復を支援し、わが国の歴史で初となる先住民の閣僚を務めるのは名誉なことだ」と述べた。
 報道によると、バイデンは環境保護局(EPA)の次期長官に、ノースカロライナ州環境当局トップのマイケル・リーガン(Michael Regan)氏を指名する方針だという。リーガン氏は、石炭火力発電所で発生する石炭灰の、国内最大規模の浄化計画に尽力した。
 黒人のリーガン氏は、ビル・クリントン(Bill Clinton)政権とジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)政権の下でEPAに勤務した経験を持つ。
 バイデン氏の政権移行チームは、ハーランド氏とリーガン氏の指名について公に認めていない。(c)AFP
https://www.afpbb.com/articles/-/3322043

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バイデン次期政権、先住民を閣僚に初起用…内務長官

2020-12-19 | 先住民族関連
読売新聞 2020/12/18 19:17
 【ワシントン=船越翔】米国のバイデン次期大統領の政権移行チームは17日、新政権の内務長官に、ニューメキシコ州選出のデブ・ハーランド下院議員(60)を起用すると発表した。就任すれば、先住民初の閣僚となる。
 ハーランド氏はラグナ・プエブロ族の出身で、移民政策や再生可能エネルギーの普及などに力を入れてきた。内務長官として、公有地での石油や石炭などの採掘管理や野生生物の保護などにあたることになる。
 また、政権移行チームは、環境行政の中核を担う環境保護局(EPA)長官に、ノースカロライナ州で環境部門のトップを務める黒人のマイケル・リーガン氏を選んだことも明らかにした。
 バイデン氏は地球温暖化対策を中心に環境問題に積極的に取り組む意向を示している。政権移行チームは17日の声明で「彼らは温暖化の危機に立ち向かうために世界をリードする準備ができている」と強調した。
https://www.yomiuri.co.jp/world/uspresident2020/20201218-OYT1T50248/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

国と北海道、アイヌ団体のサケ捕獲権は「法的根拠ない」と主張 先住権訴訟

2020-12-19 | アイヌ民族関連
毎日新聞2020年12月18日 09時42分(最終更新 12月18日 09時42分)
北海道浦幌町のアイヌ民族団体「ラポロアイヌネイション」がサケを捕獲することは先住民族に認められた先住権で、これを禁じる法や道規則が適用されない確認を国と道に求めた訴訟の第2回口頭弁論が17日、札幌地裁(高木勝己裁判長)であり、国と道は「法的な根拠がない」として請求棄却を求めた。
 国などは準備書面で、国連の先住民族権利宣言に触れ「集団によるサケの捕獲権を認める義務は存在せず、国際法上、漁業権を認める根拠は存在しない」と主張した。だが、江戸時代以前に独占的な漁業権を有していたかや、その権利が明治以降に不当に奪われたかなど歴史的経緯については触れなかった。
 閉廷後の集会で、原告側代理人の市川守弘弁護士は「(元々)権利があり、それを奪った根拠に正当性があるのかを問う裁判。まずは(権利を奪ったかどうか)事実の認否をすべきで、議論をずらそうとしている」と批判した。【山下智恵】
https://mainichi.jp/articles/20201218/k00/00m/040/033000c

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【Japan Data】うるし掻きや金箔製造など伝統建築「工匠の技」、2020年登録決定 : 日本のユネスコ無形文化遺産一覧

2020-12-19 | アイヌ民族関連
ニッポンコム 12/18(金) 18:15
国連教育科学文化機関(ユネスコ)に登録された日本国内の世界無形文化遺産22件を紹介する。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)で、2020年12月、日本が無形文化遺産に提案していた「伝統建築工匠の技 木造建築を受け継ぐための伝統技術」の登録が決定した。2018年の「来訪神 仮面・仮装の神々」以来で、国内の無形文化遺産は計22件となった。
伝統建築工匠の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術/2020年登録
木・草・土など自然素材を建築空間に生かす知恵、周期的な保存修理を見据えた材料の採取や再利用、建築当初の部材とやむを得ず取り換える部材との調和や一体化を実現する高度な木工、屋根葺(ぶき)、左官、装飾、畳など、建築遺産とともに古代から途絶えることなく伝統を受け継ぎながら工夫を重ねて発展してきた伝統建築技術。
漆の木に傷をつけてにじみ出てくる樹液を採取する「漆掻き」や、雁皮紙をわら灰汁や柿渋などにつけて仕込んだ箔打紙にはさんで金箔を打ち延ばす「縁付金箔製造」なども含む。
来訪神 : 仮面・仮装の神々 /2018年登録
「男鹿のナマハゲ」(秋田県)や「悪石島のボゼ」(鹿児島県)など8県10行事で構成。神の使いに仮装した者が正月などの節目に家々を訪ね、怠け者を戒めたり、無病息災などを願ったりする。
山・鉾・屋台行事 / 2016年登録
「京都祇園祭の山鉾行事」「博多祇園山笠行事」など山車(だし)の巡行を中心に据えた18府県33件の祭りで構成。山車を依り代(よりしろ)にして神霊を迎え、地域の安泰や厄除け、豊作などを祈願する。
和紙:日本の手漉(てすき)和紙技術 / 2014年登録
埼玉県小川町と東秩父村の「細川紙」、岐阜県美濃市の「本美濃紙」、島根県浜田市の「石州半紙」の3件。8世紀からの伝統的工芸技術で、原料に楮(こうぞ)を用いるなど古来の製法を守り続けている。
和食 : 日本人の伝統的な食文化 / 2013年登録
正月や田植、収穫祭のような年中行事と密接に関係し、自然を尊重する日本人の精神を体現した社会的慣習。新鮮で多様な食材や自然の美しさを表した盛り付け、優れた栄養バランスが特徴。
那智の田楽 和歌山県那智勝浦町 / 2012年登録
世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の1つである熊野那智大社の例大祭「那智の火祭り」(毎年7月14日)で奉納される神事芸能。600年以上の歴史がある。
壬生の花田植(みぶのはなたうえ) 広島県北広島町 / 2011年登録
豊作を祈願して毎年6月の第1日曜日に行われる。美しい鞍をつけた飾り牛が代掻きをし、早乙女が横一列になって田植えをする。
佐陀神能(さだしんのう)島根県松江市鹿島町 / 2011年登録
佐太神社の御蓙替祭(毎年9月25日)で奉納される神事舞。全国各地の神楽に影響を与えたとされる。
結城紬(ゆうきつむぎ) 栃木県・茨城県 / 2010年登録
古くから養蚕業が盛んだった茨城県結城市、栃木県小山市を中心とする地域で製織されてきた絹織物。奈良時代には朝廷に納められていた。
組踊 沖縄県 / 2010年登録
琉球王国の時代、中国皇帝から派遣される使節を歓待するためなどに演じられた。国立劇場おきなわ(浦添市)を伝承・公開の拠点とする。
雅楽 / 2009年登録
日本古来の歌舞と中国大陸や朝鮮半島からもたらされた歌舞とを融合させた声楽曲。宮中を中心に伝承され、宮中の儀式、饗宴などで演奏される。
小千谷縮(おぢやちぢみ)・越後上布(えちごじょうふ) 新潟県魚沼地方 / 2009年登録
新潟県魚沼地方で作られている苧麻(ちょま)を原料とする上質な麻織物。江戸時代には幕府にも上納されていた。
奥能登のあえのこと 石川県珠洲市、輪島市など / 2009年登録
耕作前の2月は豊作を祈り、収穫後の12月は収穫に感謝する田の神をまつる祭祀。目に見えない田の神があたかもそこに実在するかのようにふるまう。
早池峰神楽(はやちねかぐら) 岩手県花巻市 / 2009年登録
早池峰山を霊山として信仰した山伏によって演じられたのが始まり。早池峰神社の8月1日の祭礼などに演じられる。
秋保の田植踊 宮城県仙台市 / 2009年登録
田植えの様子を振り付けた踊りでその年の豊作を願う。もとは小正月の行事だが、現在は社寺の祭礼などで踊られている。
チャッキラコ 神奈川県三浦市 / 2009年登録
豊漁・豊作や商売繁盛などを祈願して、少女たちが扇や色とりどりの短冊や鈴で飾った綾竹を手にして踊る小正月(1月15日)の行事。
大日堂舞楽(だいにちどうぶがく)秋田県鹿角市 / 2009年登録
大日堂(大日霊貴神社)で正月2日に五穀豊穣・無病息災などを祈って奉納される舞楽。4集落の能衆(のうしゅう)と呼ばれる人々が世襲で舞を継承している。
題目立(だいもくたて)奈良県奈良市 / 2009年登録
八柱神社の秋祭(10月12日)に奉納される。源平の武将を題材とした演目を、出演者が登場人物ごとに台詞を分担して、独特の抑揚をつけて語る。神社の祭祀組織に新たに加入する青年が中心となって演じる。
アイヌ古式舞踊 札幌市、千歳市など / 2009年登録
北海道に居住するアイヌによって伝承されてきた踊り。祭祀的性格の強い儀式舞踊のほか、娯楽的なものや即興舞踊などがある。
能楽 / 2008年登録
舞踊的所作でストーリーが展開する「能」と、せりふによる喜劇「狂言」の総称。後の文楽や歌舞伎に大きな影響を与えた。
人形浄瑠璃文楽 / 2008年登録
三味線音楽の義太夫節に合わせて展開する人形音楽劇。1体の人形を3人で操作し、写実的な動きで表現するのが特徴。
歌舞伎 /2008年登録
江戸時代に興隆した大衆演劇。伝説、史実などを題材にした物語や、実際に起こった心中事件を脚色したものが、現代まで演じ続けられている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/a96bc3b56c6fa4efeefbd0aa1f07a9b0d1b57d78

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人種差別、男性優位社会を覆した!世界を変えた「すごい女性たち」

2020-12-19 | 先住民族関連
現代ビジネス 12/19(土) 8:02配信
 新型コロナウイルスによって世界中が大混乱をきたした2020年。これまで当たり前だった生活様式が一気に様変わりする中で、むしろこれがきっかけとなりICT教育やテレワークといったオンラインを活用した新たな道が切り開かれるなど、まだまだ問題はあれど今後将来の希望となりそうな変化が生まれたのも事実。
 今回は、どうにもならない状況に立たされてもその逆境に負けず、新たな道を切り拓いた「世界のすごい女性たち」を、一冊の本『世界のすごい女子伝記 ~未来への扉をひらいた、歴史にのこる50人』から抜粋してご紹介。今以上に女性が社会で活躍することを良しとされない時代背景がある中で彼女たちが生み出した偉業の数々から、どんな状況に立たされても前を向く強さを学びたい。
『世界のすごい女子伝記』世界を変えた女性たちの意外な素顔とは?
 2021年1月20日、アメリカ初の女性の副大統領が誕生する。カマラ・ハリスさん。彼女の母はインドから、父はジャマイカからアメリカに来た移民である。ハリスさんは、初めての黒人副大統領でもあるのだ。
 2020年のコロナ禍によって、人種差別をはじめさまざまな問題点が浮き彫りになったアメリカ。そんななか、ハリスさんは大きな夢を持っているという。それは、「アメリカの人々を一つにする」こと。そのために大統領を支えつつ全力を尽くすと語っている。人々に力強く語りかけるハリスさんは、きっと「世界を変える女性」になるだろう。
 世界中には、これまでも「未来への扉を開いたたくさんの女性たち」がいた。どの女性も魅力的で、たくましい力の持ち主である。
 そんな女性たちを集めた美しい本が出版された。『世界のすごい女子伝記 ~未来への扉をひらいた、歴史にのこる50人』(講談社)には、逆境や苦難を乗り越えて芸術や研究、統治や指導者として生き抜いた女性たちの物語がえがかれている。一人の女性を見開きごとに紹介し、華やかなタッチのイラストと写真をふんだんに使ったオールカラーの豪華な本である。世界を変え、歴史に残った女性たちの物語は、大人にも発見があり、子どもたちにも読み聞かせたい内容となっている。
 この本に登場する50人のうち、6人の魅力的な女性たちを紹介しよう。まず始めは、「何かを救う」ために力を尽くした女性たちである。
〔エリザベス・ブラックウェル〕多くの女性を救ったアメリカで初めての女性医師
 エリザベス・ブラックウェルは、1821年、イギリスのブリストルで生まれた。のちに一家はアメリカに引っ越し、そこでエリザベスは貧しい家計を支えるために学校を開いて先生として働いていた。そのころのエリザベスは、歴史は好きだったけれども、人間の体にかかわるものは気持ちが悪いくらいにしか思っていなかった。
 ところが、仲の良い友人のある一言が彼女の考えを変えることになる。
「もしも女性のお医者さんがいたら、こんなに苦しまずにすんだのに……」
子宮の病気で亡くなる前、友人はこうつぶやいたのだ。
その瞬間、エリザベスは医者になろうと心に決めた。
 しかし、それはとてつもなく難しいことだった。当時、伝統医療の治療者や助産婦はいたけれども、正式な資格を取った女性医師はまったくいなかった。医学界は完全な男性社会だったのである。
 エリザベスは友人の医師に勉強を教えてもらいながら、たくさんの医学校に入学を希望するが、ことごとく断られてしまう。唯一受け入れてくれたのが、ニューヨーク州のジェニーヴァ医学校だった。彼女はここで医学を学んだ。
 1849年、エリザベスはアメリカの医学校で学位をとった最初の女性となった。ところが、女性の医師を雇ってくれる病院はどこもなかった。そのため、エリザベスは自分で診療所を始め、やがて「女性と子どものためのニューヨーク病院」を開いて貧しい人たちを治療するようになる。
 10年後、エリザベスは女子医学校を立ち上げ、女性が医師になる手助けをしたのである。エリザベスはさまざまな年齢の女性を何千人も治療した。彼女が医学会に道を切り開くと、すぐにアメリカとヨーロッパの女性たちが後に続いた。自分が治療するだけでなく、女性の医師をたくさん生み出すことで、エリザベスは多くの女性たちを救ったのである。
〔ワンガリ・マータイ〕「もったいない」を広めたケニアの環境保護活動家
 1940年、ワンガリ・マータイはケニアに生まれた。アメリカに留学して大学教授となった彼女は、故郷ケニアの原生林が切り開かれたことで多くの問題が生じていることに気づく。
 「一人ひとりの力で世界を変えられる」と考えて植樹する「グリーンベルト運動」を始め、それは「3つのR(リデュース、リユース、リサイクル)」運動に発展していく。環境保護活動家としてノーベル平和賞を受賞したワンガリは、2005年の来日時に「もったいない」という日本語を知る。「3つのR」を一言で言い表し、自然やものに対する敬意と愛情を含む言葉として感銘を受け、世界に広めた。
 ワンガリの国境を越えた活動は自然を救い、環境を守り続け、多くの人が平和に暮らすという夢に近づけているのである。
 次に紹介するのは、「人権」のために抵抗し、自分の意思で道を開いた女性たちである。
〔ローザ・パークス〕バス・ボイコットで黒人を守った「公民権運動の母」
 ローザ・パークスは、1913年にアメリカ南部のアラバマ州で生まれた。南北戦争が終わって50年も経っていたのに、まだ南部では黒人の差別は残っていた。白人から暴力を受けて亡くなる黒人も珍しくなかった。
 水飲み場もトイレも学校も、白人用と黒人用に分かれていた。バスの座席も前方が白人の席、後方が黒人の席というように分けられていたのである。運転手はまるで警官のように黒人用の席を強要していた。
 19歳で結婚したローザは、アラバマ州モンゴメリーに移り住み、デパートでお針子として働き始めた。
ある日、忙しい一日の仕事を終えて、家に帰るためにローザはバスに乗った。いつものように後ろの席に座っていると、どんどんバスの中が混み始めてきた。バスの運転手は、4人の黒人に「白人に席を譲るように」と言い、3人はしぶしぶ従ったが、ローザは席を立たなかった。
 「なぜ立たないのかね」
「立つべきだと思わないからです」
運転手の質問に、ローザはこう答えた。ローザは逮捕された。
 のちにローザは、こう語っている。
「席を譲らなかったのは、体が疲れていたからではありません。服従することに疲れていたのです」
 やがて、ローザの行動に心を動かされた多くの黒人が、バス乗車を拒否するようになる。差別に対する平和的な抗議運動だった。バス・ボイコットは、市の経済に大きな打撃を与え、公共交通機関での人種差別はなくされることとなった。
 ローザは「公民権運動の母」として知られるようになり、アメリカでもっとも名誉ある「大統領自由勲章」「連邦議会金メダル」など多くの賞を受賞した。
しかし、どれほどの名声を得ても、ローザは謙虚だった。ローザはいつもこう言っていた。
 「私はただ、仕事を終えて、家に帰りたかっただけなのよ」
〔エバ・ペロン〕女性や貧しい人に夢を与えた「エビータ」
 1919年、エバ・ペロンはアルゼンチンのブエノスアイレス近郊で生まれた。貧しい家計を支えるためにお針子として働いていたが、15歳で芝居や映画、ラジオに出るようになる。やがて、慈善パーティで知り合ったフアン・ペロン大佐と結婚。フアンが大統領になると、エバは国民から親愛を込めて「エビータ」と呼ばれるようになり、貧しい人々、病人、孤児院の子どもたちのための活動を始めた。とりわけ情熱をもって活動したのは女性の権利であり、やがて女性参政権を獲得したのだった。
 「お金持ちが貧しい人のことを考えたって、それこそ貧しい考えしか浮かばない」
と言い、33歳で子宮がんで亡くなるまで、エビータは社会の底辺にいる人たちに夢を与え続けた。葬儀には何百万人もの国民が駆け付け、その死を悼んだ。
 次は、「勇気と希望」を持って道を切り開いた女性たちの話である。
〔田部井淳子〕女性で初めて世界最高峰登頂に成功
 田部井淳子は、1939年、日本の福島県三春町に生まれた。子どもの頃、淳子は体が小さく病気がちで運動も苦手だった。
 小学4年の夏、担任の先生から山登りに誘われる。泊りがけで行った山は、新鮮な驚きに満ちていた。山は運動が苦手でも登れるのがうれしかった。
「自分の足で一歩一歩登ったから頂上に立てた」
という達成感があったのだ。これが淳子の初めての山との出合いとなった。
 「夢の多い子になれ」
担任の先生は、そう淳子たちに教えてくれた。淳子は、
「自分にもできることがある。もっと山を知りたい」
と夢見るようになった。
 やがて東京の大学を卒業した淳子は、社会人の登山クラブに入って本格的に登山をするようになる。
 「山は男のもの。女の来る場所ではない」
と思われていた時代。そんな雰囲気の中で、気の合う女友だちを見つけた淳子は、女性だけの登山を始めるようになった。女同士で山に登ると、男女で登っていたころのような体力の差もなく、とても楽しかった。将来の夫と出会ったのもこの頃だった。
 ところが、世界で最も高いエベレストに登る夢を語り合っていた女友だちは、山で遭難して亡くなってしまう。悲しみを振り払うように山に登り続けた淳子にとって、いつしか女友だちと約束した「女性だけで一番高い山に登る」ことが悲願となっていった。
 ついに女性だけのパーティを組んでエベレストに登る日がやって来た。長い山道を登り、最後の頂上に登れるのは、パーティの15人のうちたった1人だけ。選ばれたのは、体調のよかった淳子だった。
 シェルパと頂上を目指して登っていくと、帽子の中で髪の毛が逆立ち、雲も青空も足の下に見える。恐怖と戦いながら歩いていると、シェルパが日本語で叫んだ。
「タベイさん、頂上だよ!」
世界で一番高い山に女性が登った瞬間だった。
 その後、淳子は女性で世界初の七大陸最高峰登頂など、たくさんの女性初登頂を成し遂げていく。何ヵ月も海外に行くとき、子どもたちの面倒は山仲間でもある夫が見てくれた。女性は家で家事をするものという考えが多い時代にあって、「力を合わせるのが当然」と考える夫だった。
 「好きな山に登り、結婚して出産もしました。女性だからとあきらめることはありません」
のちに淳子はこう語っている。夢に向かって勇気をもって進んだ淳子は、亡くなるまで山の魅力を人々に伝える活動を続けた。
〔キャシー・フリーマン〕オリンピックでアボリジニの旗を掲げてウィニングラン
Illustrations Copyright (C) Sarah Walsh 2018
 1973年、キャシー・フリーマンはオーストラリアのアボリジニの一家に生まれた。オーストラリアの先住民族であるアボリジニは、18世紀後半にイギリス人が来て以来、ひどい苦難と迫害を受けてきたのである。
 キャシーは小さなころからずば抜けて足が速かった。やがて「陸上選手としてオリンピックに出る」ことがキャシーの夢となっていった。勝ち続けたキャシーは、2000年のシドニーオリンピックの400メートル走で金メダルを獲得。ウィニングランで両手に掲げていたのは、オーストラリアとアボリジニの旗だった。数年前にアボリジニの旗を掲げたときは非難した人々も、この時は褒めたたえた。キャシーはアボリジニに対する世の中の考え方を変えたのだ。
 キャシーは今、アボリジニの子どもたちが幸せに生きていけるように、自分を信じ誇りを持って生きることを伝える活動をしている。
 ここに取り上げた6人の女性たちは、本の中に登場するうちのほんの一握り。登場する50人の女性たちの誰もが理想や勇気をもって精一杯生き、成果を残し、それによって世界を変えていったのである。彼女たちの歩いた道の上に、今の私たちがいることを忘れないでいたい。
プロフィール
 高木香織(たかぎ・かおり)
編集者・文筆業。出版社勤務を経て編集・文筆業。子育て・児童書・健康・医療の本を多く手掛ける。編集・編集協力に『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』『子どもの「学習脳」を育てる法則』(ともにこう書房)、『頭のよい子の家にある「もの」』『モンテッソーリで解決! 子育ての悩みに今すぐ役立つQ&A68』(ともに講談社)、『ピカソ 型破りの天才画家』『部活やめてもいいですか。』『リトルプリンセス 小公女セーラ』(すべて講談社青い鳥文庫)、『かみさまのおはなし』『犬と猫 どっちも飼ってると毎日たのしい事典』『美容お灸』(すべて講談社)など多数。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)。
高木 香織(編集・文筆業)
https://news.yahoo.co.jp/articles/3c969447deb01c8bd0bdafd919aecfff0568703a

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

チェンジ】ルーツに誇り持ち

2020-12-19 | アイヌ民族関連
NHK 12月16日 18時55分
特集「チェンジ」です。
アイヌの文化を世界に伝えたい。そんな夢を抱きながらガイドとして活動する男性がいます。
北海道出身の父とソマリア人の母のあいだに生まれ、19歳のとき、アイヌにもルーツがあると知った男性。考え抜いた先につかんだ大切なこととは・・・。
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20201216/7000028213.html?fbclid=IwAR0QJW28QCRTxcLFEuHldYuZM0k3KH_kv5hup47XZ_QVNSMN0nQdvVUNjOM

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

キュレーターズノート 国立アイヌ民族博物館の基本展示で伝えたいこと

2020-12-19 | アイヌ民族関連
artscape 2020年12月15日号 田村将人(国立アイヌ民族博物館)
国立アイヌ民族博物館(以下、当館)が2020(令和2)年7月12日に開館した。当館を含むウポポイ(民族共生象徴空間)に関しては、すでに同僚の立石信一が本編に寄稿しているのでご参照いただきたい。なお、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当初4月24日開館予定だったのだが、5月29日に延期され、7月12日に再延期されての開館だったことをまずもって付け加えておく。
コンテンツの一部休止をともなう開館
100年に一度とも言える感染症の危機にいまもってさらされているわけだが、当館の開館までにも館内=ウポポイ内でどのような対策が考えられるか、協議が重ねられてきた。当初は、そもそもいつ開館できるのか不安ばかりであった。すでに開館していれば、館内のどこがいつ混雑するかなど想像がついて対策を打てるだろうけれども、一度も来館者を迎えたことがなかったわけであるから、不安は底なしであった。初めての感染症対策に職員の誰もが戸惑っているのは今も変わらない。新型コロナウイルスの特徴と対処法が時々刻々とわかりつつあるなか、他館の対策を参考にしながら、当館内で休止せざるをえない箇所を見つけ出す作業が4月初頭から始まった。日本博物館協会によるガイドラインが発表されたのが5月14日であるから、それまではずいぶんと長く感じたものであった。
結果として、当館では日時指定の事前予約制を導入した。来館者が触るもの(音声ガイドの貸出、タッチパネルディスプレイ、「探究展示テンパテンパ」等)を中心に休止した。ライブラリも当初は閉鎖していた(現在は、人数制限のもと開室)。96席のシアターも当初は半分以下の席数で運用開始したが、こちらは映画館のガイドラインに照らして10月から全席を開放した。来館者向けのギャラリートークや講座・講演会は、一部の試行を除き、実施していない。このような状況であるから、展示工事が完成しているにもかかわらず、基本展示(常設)の構成要素の大きなウェイトを占める数々の映像がほとんど運用されておらず、さらに研究職員による口頭での解説ができない現状では、不完全な状態で開館したとあらかじめ伝えておかねばならない。

ウポポイの第一言語をアイヌ語として、各所の掲示の第一にはアイヌ語で表記している(国立アイヌ民族博物館の1階ロビー)
展示検討委員会およびワーキング会議でのいくつかの議論
私は北海道開拓記念館(現在の北海道博物館)で学芸員として8年間勤務していた。専門は樺太アイヌの20世紀の近現代史であり、アイヌ民族へのインタビュー、日露の公文書や、新聞記事などさまざまな手法を使ってきた。2016年から文化庁による「国立のアイヌ文化博物館(仮称)設立準備室」に学芸員(同時に東京国立博物館主任研究員)として開館までかかわり、現在は、ウポポイの運営主体として法律に位置付けられている公益財団法人アイヌ民族文化財団の職員として、国立アイヌ民族博物館に勤務している。私自身は、2015年、文化庁が設置した展示検討委員会ワーキング会議の委員として委嘱されていたので、開館までの通算5年間、新しい博物館の設立に従事したことになる。
展示検討委員会は、旧一般財団法人アイヌ民族博物館の館長や、アイヌ語やアイヌ文化の研究者を含め7人。下部組織と位置付けられていたワーキング会議は、工芸家、大学教員、学芸員など、アイヌ語・アイヌ文化・アイヌ史の研究・実践の一線にいる人たちを中心に14人(延べ)であった。言うまでもないことだが、それぞれの委員会はアイヌ民族と和人(日本のエスニック・マジョリティ)から構成されていた。お互いに日常的な交流があり、和気あいあいとしつつも、アイヌ文化に関する初めての国立博物館が設立されるということで、みな緊張感を持っていた。それは、はじめが肝心であるということ、国立の施設として注目されるだろうこと、アイヌ民族と同化政策の歴史を伝えることが重要であることは言うまでもなく、現代のさまざまなアイヌ民族の姿を誤解されないように伝えるにはどうすればよいか、そもそもアイヌ民族のことをよく知らない(初めて知る)来館者を対象とすることが大前提となること、などが想定されたからである。この委員会とワーキング会議では、基本展示の6つのテーマのコンセプトや内容を決めていくうえで、基本展示全体に通底する重要な議論が交わされた。
何をどう伝えるか
なかでも何度か言及されたテーマに、アイヌ民族の被差別体験をどう展示するかという問題があった。それは、被差別体験を強調しすぎると、特に小学生では逆にアイヌ民族は「いじめてもいい人たちだ」と認識してしまう恐れがあったからである。これは、実際に小学生の前で説明をした経験から来ているというものだった。現実の民族差別も、たいていは大人(親)の会話が子供の耳に入り、学校で「お前(の家)はアイヌだろう」といじめにつながっている事例が多いことも挙げられた。ちなみに、展示において、被差別体験の歴史的な事実を隠すことがあってはならないという但し書きが付いていたことは言うまでもない。とりもなおさず、アイヌ民族のある一面ばかりを強調するのではなく、時代、地域によってさまざまな状況があったことを伝えることが重要だという議論もあった。
また、主に江戸時代に和人によって描かれた「アイヌ絵」は身体的特徴を誇張して描くことが多いため、アイヌ文化の基礎的な情報を伝える基本展示室ではなるべく避けて、特定のテーマとして特別展示で展示するほうがよいだろうという方向性も出された。いずれも、小学生が授業で見学に来ることを大前提として議論されており、さらに大人であっても、アイヌ民族に関する予備知識がない来館者にどのように伝えるかが最大のテーマであった。政府が開館前から年間100万人の来場者を目標に掲げていたため、このような議論になっていたのであった。いずれにしても、日本のマイノリティに関する展示を見る層のターゲット(主にマジョリティである和人向け)の議論である。
多くの観光客が、北海道の白老ポロトコタン(2018年に閉館した旧一般財団法人アイヌ民族博物館)や釧路市の阿寒湖アイヌコタンなどで、「いつも茅葺の家に住んでいるのか?」「このあと、山に帰るのか?」「熊などを狩猟しているのか?」はては「日本語が上手だね」などと職員に投げかけている現実があった。それは、目の前で伝統的な民族衣装をまとって、踊る姿が披露され、工芸製作のシーンが目に入ってくるので、やむをえないところもある。しかし、あくまでも仕事で民族衣装を着ていることを強調して説明するようにしている、という苦労も共有された。
同時に、基本展示の中では、伝統文化や工芸に従事しているアイヌ民族はほんの一部であり、多くのアイヌ民族は日本国民として生活しているのであって、さらに国外で活躍しているアイヌ民族の職業を紹介することも目標とされた。アイヌ民族一般の歴史や文化を紹介するだけではなく、個人に焦点をあてて等身大のアイヌ民族を知ってもらうことが重要だという議論もあった(すでに大阪人権博物館や北海道博物館で実現していた)。いかにステレオタイプ化された伝統文化像を打破するか。いや、民族の特徴ともいえる伝統文化を丁寧に説明しつつ、同時に現代のアイヌ民族の姿を伝える、と言い換えたほうがよいだろうか。
かつての生業(左奥)と近現代の職業を紹介する「私たちのしごと」
単一民族国家ではないというメッセージ
基本展示室に入る前に「導入展示」というトンネル状の空間を作り、展示室までの暗順応の役割を果たすとともに、日本は単一民族国家ではないというメッセージを込めた映像を3カット×4パターン作成した。これも、展示検討委員会およびワーキング会議では重要な展示として位置づけ、つねに議題に挙がっていた。むろん、完成した映像には「単一民族国家」というフレーズはどこにも出てこない。そこには、ちょうど日本に滞在していたニュージーランドのマオリが出演したほかは、日本国内在住のアイヌ民族のほか、和人、中国人、韓国人、タイ人、ロシア人など数人が登場し、それぞれの言語で挨拶を投げかける。協力してくれた人々はいわゆる民族衣装を着ている人もいれば、普段着(いわゆる洋服)を着ている人もおり、これは出演者本人の意向を尊重した。ここに登場するアイヌ民族は、すべてウポポイの職員であり、3カットのうち1カット目は普段着で、2、3カット目は職場(ウポポイ)で着るいわゆる民族衣装でメッセージを投げかけるシナリオである。
ここには、前述のような現代のアイヌ民族への誤解を解く仕掛けを込めた。普段着はいわゆる日本社会で一般的なものであり、同じ人が次の場面では民族衣装に着替えている。つまり、日常は普段着で、仕事のために民族衣装を着ているということを伝えたかったのである。セリフは、日本語も話すし、一部アイヌ語で投げかけるというバランスもとった。
こだわったのは、出演した和人が関西地方出身者で、「こんにちは」という挨拶の投げかけを、いわゆる標準語アクセントと、関西方言アクセントの2パターンを収録し、映像4パターンのうちに混ぜたことだ。たまたま、映像制作業者も関西方言話者で「なにも珍しくもない」と不満げであったが、北海道という場であえて日本語の「こんにちは」を2パターン流す意義は小さくないと思っていた。日本語であっても多様であるということも示したかったのだ。
いずれにしても、ウポポイおよび当館を訪れる来館者の大半が和人であることを考えると、「あなたも世界の中の一民族である」「あなたの身近にこれだけ言語や文化の違いを感じるチャンスがある」「日本語も多様であるように、他民族も多様だ」ということに気づいてもらえる仕組みというのが、展示検討委員会およびワーキング会議の目標でもあった。「日本は単一民族国家ではない」というメッセージが伝わり、マイノリティについて考えるきっかけになることを祈っている。
展示室内の配置
基本展示室内の6テーマの配置は、各テーマで展示される資料の物理的な量によって決められたところがあり、結果的に紙資料が主となる「私たちの歴史」は面積的に狭く感じるかもしれない。中央に「プラザ展示」(6テーマのエッセンス)を配置しているが、その真ん中には映像や音声をフル活用した「私たちのことば」を配置し、アイヌ語復興のイメージを表わした。基本展示室の入り口から見ると正面には、「私たちの歴史」の年表と地図を活用した「歴史の広がりとつらなり」が目に入り、展示室全体で扱う内容の時間軸、空間軸を示した。左手には「私たちの世界」の資料として高さ約6メートルの「クマつなぎ杭」を再現した。また、右手には「私たちの交流」の資料として17世紀頃と年代測定の結果が出た、交易で使われた板綴舟の出土資料を厚岸町教育委員会から借用した。「私たちのくらし」では伝統的家屋の間取りを床面に再現しARでその風景を見せている。「私たちのしごと」では、伝統的な生業(狩猟、漁撈、採集、農耕)のみならず現代のさまざまな職業(林業、俳優、フェアトレード等)を紹介することに主眼を置いた。
6テーマと相互補完の関係にある「探究展示テンパテンパ」が3か所に配置されている。展示設計時に「子供向け展示」と仮称していた展示である。ここは、体験ユニットを18種類用意して、子供も大人も触って学べる場としているが、残念ながら新型コロナウイルスの感染予防対策で、本格運用はまだ開始できていない。
以上のような大きなコンセプトを引き継ぎ、新たに博物館設立準備室に採用された研究職員によって具体的な展示資料の選定、解説文の作成が行なわれた。むろん、研究職員のなかにはアイヌ民族も和人もいるし、現在では、多国籍の陣容となっていることを付け加えておこう。
展示資料の性格と当館の意義
当館の資料は、残念ながら年代、地域、原資料名など、来歴不明の資料が多い。これは、国内他館のアイヌ民族資料にも共通している。多くの来館者にとって、キャプションの資料情報が少なすぎることは、資料の理解を難しくさせているようだ。
一方、製作者、製作年代が比較的新しい資料も積極的に展示している。当館の展示資料の一部には復元などと明示した資料もある。これは、各地の博物館などに収蔵されている資料を、各地のアイヌ民族の伝承者に熟覧・調査研究してもらい、すでに製作方法などが失われた技術の復元を意図したものである。当館は、そのようなアイヌ文化復興の拠点、あるいは発信拠点となるべきことも自覚しているところである。
「国立」なのに、新しい展示資料はふさわしくないという意見も聞こえてくる。東京国立博物館などの国宝・重要文化財が多い国立博物館と比較されているようだが、当館はどちらかと言えば、国立民族学博物館などと共通する博物館の性格を持っていることがなかなか理解されていないようである。露出展示が少なく、ほとんどの資料が展示ケースに入っているものの、新しい資料もあるという点で両者の展示手法が混在しているように見え、来館者が受けるイメージに影響しているかもしれない。
また、世界中のどの民族文化にあっても、外来の要素を取り入れて、独自の構成を展開させているところに、それぞれ固有の文化が見えるのである。これは、いわゆる日本・和人文化においても同じことが言えるだろう。
例えば、アイヌ民族のうち樺太アイヌは野鍛冶を行なっていたが、本格的な製鉄は行なわなかった。ナイフなどは周辺諸国家から輸入してきたのであり、基本展示室内でも数か所で説明しているのだが、個々のキャプションにおいて輸入品と示すべきであるという意見もある。しかし、世界中の多くの民族文化を見ても、周辺との交易なくしては自文化の成立はないと言ってよいほど物品の輸出入の割合は大きい。あえて言えば、自給自足で閉鎖的な経済活動を行なっている民族文化は、過去を振り返ってみてもほとんどないと言える。
和人を例にとっても、「鎖国」と説明される江戸時代であっても、数か国に限定した貿易を行なっていたわけであり、天ぷら、金平糖など、このころに輸入されたものでいまも名前の残っている料理などは少なくない。現在の和食ないし伝統的な食文化となっているもののなかには、本をただせば外来の要素だということもあり、それ自体は日本・和人文化の大きな魅力であり、見逃せない事実である。明治以降はさもありなんで、和食となっている豚カツの「カツ」が外来語だとどれほどの人が認識しているだろうか。アイヌの食文化においても、外来の栽培食物を取り入れて伝統料理となったメニューがあるわけで、和食の構成とパラレルに見ていきたい。
おわりに
2020年11月段階でウポポイ約17万人、当館約12万人という来館者があった。新型コロナウイルスの感染予防対策で、人数制限をし、ウポポイ全体と国立アイヌ民族博物館で別々の事前予約制を導入しているにもかかわらず、これだけの方々が来場してくださったことに感謝申し上げる。
来場いただいた方には少しでもアイヌ文化への関心をつないで、ひいては日本社会の将来像を各人に描いてもらいたいと願っている。展示検討委員会およびワーキング会議での議論を振り返りつつ、展示資料の更新のたびに見直していきたい。
国立アイヌ民族博物館
住所:北海道白老郡白老町若草町2丁目3 ウポポイ(民族共生象徴空間)内
https://artscape.jp/report/curator/10165945_1634.html?fbclid=IwAR2gEazDjaqqk-d4ORIpd1Q8bMxHcM_gFFGwYTX1ogmQ3CFh_KRmUWIQF6Q

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする