20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
毎日更新。児童文学情報・日々の暮らし・超高層からの眺望などニュース満載。

『命をつなぐ250キロメートル』(今関信子・童心社)

2009年11月07日 | Weblog
 古くからの作家の友人、今関信子さんの新刊です。
 今関さんは滋賀県の守山市にお住まいになっています。
 そこにある児童擁護施設「湘南学園」に彼女は、もう20年以上作家の立場からのボランティアとして通い詰めていらっしゃるそうです。
 そこでの子どもたちとの関わり合いの中で生まれたのが『小犬の裁判はじめます』(童心社)や『七日間のウオーキング・ラリー』(童心社)などです。
 そして今回、その3冊目としてこの本が出版されました。
 この物語は、「抱きしめてBIWAKO」運動を取り組む児童養護施設の子どもたちの姿とそこで働く人たちの姿が描かれています。まるでドキュメンタリー映画のような迫力で。
 基軸となっているのは、両親の離婚と父の死によって分断された姉妹の妹が、この「抱きしめてBIWAKO」への取り組みの中で悲しみを乗り越えていく姿です。

 日ごろから今関信子さんという作家は、何事にも誠実に体当たりでぶつかっていかれる作家です。
 ご自分の内側から突き上がってきた「生きる」ことへの問いかけ、問題意識に、常に目をそらすことなく作品を生み出してこられた方です。
 この『命をつなぐ250キロメートル』も、実際にあった出来事をベースに、そこから物語を構築されていっています。
 実践の重さと、今関さんの思いの熱さが、作品のすみずみまで貫かれています。そこには、生きるとは?仲間とは?育つとは?の問いかけが、確かな言葉で綴られています。

「目も見えない、耳もきこえない、食べることも、息をすることも自分ではできない子がいる。なんのために生きとるんや。こんな子にお金かけて命守って、ほんまにええことしとるんかって、思ったんやな。けど、この考えは恐ろしいねんで。一番障害の重い子を、殺したとする。そしたら、次に障害の重い子が、目障りになるねんで。その子を殺したとする。そしたら次の子や。次つぎにいる命と、いらん命をわけていくんや。そして自分もいらん命になるんや。いるとかいらんとか、命の線引きをしてはならんのや。学園の子を大切にするんは、自分を守るためにやってる思っとる。ぼくがいらん人間と言われないために・・・。力いっぱいやっとる、って」

 ひとつひとつの言葉の力に圧倒されます。
 励まされます。
 皆さま、どうぞお読みになってください。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする