20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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新刊2冊ご紹介

2011年09月07日 | Weblog
 新刊2冊をご紹介いたします。

        
『ぼくらは闘牛小学生!』(堀米薫・佼成出版社)

 作家・堀米薫さんのノンフィクション作品です。
 堀米さんは、創作で、『牛太郎、ぼくもやったるぜ!』(佼成出版社)と、『チョコレートと青い空』(そうえん社)という作品を出版されています。
 今回ご出版になられたのは、これまでのように創作ではなく、ノンフィクションです。
 堀米さんご自身がご家族と牛を育てていらっしゃる農家ということから「闘牛」を描いていても、そこには牛へのまなざしのあたたかさがあります。「闘牛」の描写では、思わず手に汗を握ります。
 この『ぼくらは闘牛小学生!』は、『牛太郎、ぼくもやったるせ!』で描いた同じ「牛太郎」という名前の牛が、新潟の小地谷で闘牛をやっていると聞き、はじまった取材だったようです。
 
 小地谷の人たちの闘牛にかける熱い思いや、子どもたちの牛へのまっすぐな思い。
 そうしたことが丁寧に描かれています。
 その中で起きた中越地震。そこから立ち上がっていく地域の人びとのすがたも描かれています。
 それはとりもなおさず、堀米さんご自身が遭遇された、3・11東日本大震災の体験と重なってリアリティを感じながら読んでしまいました。

 印象的だったのが、闘牛実況の「監物さん」のことば。
 彼の実況は、闘う牛も、その牛の手綱をひく子どもたちの気持ちも、またそれを読んでいる私たちのこころさえ、励ましてくれるようでした。


           
『注文の多い料理店/銀河鉄道の夜』(宮沢賢治・集英社みらい文庫・解説・森川成美)

 集英社みらい文庫で、原作を忠実に守りながら、今の子どもたちに読めるようにと『坊ちゃん』のリライトを、見事におやりになった作家の森川成美さんが、こんどは、あの宮沢賢治に挑戦されています。
 今回はいわば、「丸ごと一冊・宮沢賢治」といった賢治の代表作がそのまま、本になっています。
 賢治は、いまなお、人気の高い作家ですが、実は一見やさしそうに見えて,難解な部分のたくさんある作家です。
 そこを森川さんが、きちんと解説され、子どもたちに手渡す努力をしています。
 早世してしまった妹トシへの深い愛情や、仏教を信仰していたこと。自己犠牲の精神など、賢治文学の背景についても解説では言及しています。

 また、「スラスラわかる読書のコツ!」といって、賢治を理解するのにわかりやすいコラムが、巻末についていることも、この本の特徴です。
『銀河鉄道の夜』では、その道すじを図式化し、わかりやすくなるような工夫がなされています。
 通俗的な言い方をすると、「一粒で二度おいしい」と思える一冊です。

 それにしても賢治の文章はうつくしく、透明感があります。

 皆さま、ぜひこの2冊、お読みになってください。
コメント (8)
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