20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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寒椿

2012年02月15日 | Weblog
            
 
 寒椿というと、秩父の父がよく、備前の壷に投げ入れていたことをおもいだします。
 萩の花と同じく、父が愛したのが寒椿の花でした。

 そんな父の生けた寒椿を見て、母が、
「花弁ごと散ってしまう椿は、好きじゃない」
 と、嫉妬とも思える眼差しで言っていたことを思い出します。

 雪景色と、灰色の冬の空。
 モノトーンの世界に浮かぶ、真っ赤な寒椿のあでやかさ。
 妖艶とも思える、紅の色です。
 一面の雪景色のなかに、真っ赤な花弁がぽとりと落ちていく。
 そのさまは、いさぎよいといったら、いさぎよいのかもしれません。
 でもうつくしく咲いた花なら、はらはらと花びらを散らしてくれるほうが、女にとっては心が落ち着きます。
 春の桜がそうであるように・・・。

 あるいは、さびしさをただよわせた寒椿のいさぎよさのなかに、母は、大胆で奔放なすがたを見たのかもしれません。
 そんなすがたに、思わず嫉妬する・・・。
 いまとなっては、すでに亡くなってしまった母に、そんな話は聞くことができませんが。
コメント (2)
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