夕暮れ時、娘夫婦の息子の○くんとパソコンのiChatで話していたら、とつぜん深刻な顔をして彼がいいました。
「さっきね、どこかで、どさっと音がしたんだよ」
「こわい音?」
「うん、ちょっとこわかった。フランシスみたいに、なんの音だろうって思ったんだよ。それで玄関に行ってみたんだ。そしたら、新聞が落ちた音だった」
「フランシス?」
「フランシスだよ、『おやすみなさいフランシス』の」
○くんが今よりずっと小さかったとき。
ママに読んでもらった絵本。
それが、まだ彼のむねのなかには残っていたようです。
その瞬間、小さな子どもにとって読書体験は、実生活の延長線上にあるのだということを知りました。
・ ・・こわそうな物音がする。
・・・その音の正体をつきとめるのには勇気がいる。
でも、『おやすみなさいフランシス』のフランシスは、その一歩を踏み出した。
だから、ぼくも・・・。
その日、その勇気を、彼は絵本の「フランシス」からもらったようです。
3歳の男の子とそんな話をしながら、自分もそんな、小さな子どものむねにいつまでも残るような作品を書けたらサイコーなんだけどと,気合いを入れ直した厳冬の夕暮れでした。