20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
毎日更新。児童文学情報・日々の暮らし・超高層からの眺望などニュース満載。

中学年向け新刊・4冊ご紹介

2012年12月14日 | Weblog
 ご恵贈いただいているご本から、今日は中学年向けのご本のご紹介です。

              

『くりぃむパン』(濱野京子作・黒須高嶺絵・くもん出版)
 
 4年生の香里の家には、五世帯九人の家族と、ふたりの下宿人が暮らしています。
 そこにやってきたのが、同い年の未果。
 仕事探しをするために、お父さんにこの家に居候として置いていかれたのです。
 大家族のそれぞれのやりとりもとても面白いですが、下宿人がこのお話ではとてもいい味を出しています。
 香里と未果の関係と大家族のみんなをつなぐものは、1日3回、限定30個の、つるかめ堂の焼きたてのくりぃむパン。
 大家族とくりぃむパンという設定が、物語に心地いい膨らみをだしています。

               

『小さな命とあっちとこっち』(楠章子作・日置由美子絵・毎日新聞社)
 ロングセラー『古道具屋ほんなら堂』シリーズ第二段です。
 今回もほんなら堂の燈花さんのキャラクターはサイコーです。燈花さんを巡る4つのお話で構成されている短編集です。
 そのひとつ「においガラス」を。「まめだの石鹸」を受け取るために山道を歩いていた燈花さんの耳に、女の子の泣き声が聞こえます。見ると梅の木の下に目に涙をいっぱいためた女の子が燈花さんを見つめています。燈花さんはその女の子に「迷わず家に帰れる地図」をあげます。その引き替えにもらったのは匂いガラス。
 戦争で生き別れてしまった家族の深い悲しみと、いまでも香る匂いガラス。
 今回も、燈花さんの不思議さに癒されました。

                

『ドラゴンのなみだ』(佐々木ひとみ作・吉田尚令絵・学研)
 お母さんに赤ちゃんが生まれるので,歩は田舎のおじいちゃんの家に預けられることになりました。
 そこで出会った男の子のようなまなざしをした「ドラゴン」や、おじいちゃんと昨年亡くなった親友の優ちゃんのこと。そして黒森の行事である「鳥追い祭り」のことが書かれています。
 プロローグの黒森に惹かれながら読んでいくと、そこでドラゴンと歩が仲違いしながらも立ち向かっていく「鳥追い祭り」が、なつかしさを呼び起こしてくれような気がします。
 こういう故郷を基軸に物語を作り上げるのは佐々木さんのひとつの手法だと思いました。

                            

『TOKYOステーション★キッド』(森下真理作・篠崎三朗絵・小峰書店)
 この本は2005年に刊行したものを、今回の丸の内駅舎リニューアル完成を祝し,再刊されたものです。
 作者の森下真理さんは東京日本橋に育った作家です。ですから東京の中央区における文化研究にも貢献していらっしゃる方です。その方が東京駅の丸の内駅舎に興味を持たないはずがありません。
 この本には5編の短編が納められています。
「ステーションホテル205号室」「お台場で」「ペンギンマンションの少年」「盲導犬デイジー」「安次おじいさん」

 この4編、ぜひお読みになってください。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする