20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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新刊6冊ご紹介

2013年01月11日 | Weblog
 新刊6冊のご紹介です。

 いずれも胸に残る作品です。
 皆さま、どうぞお読みになってください。

            
『いつもいつまでもいっしょに』(フース・コイヤー作・野坂悦子訳・YUJI画・福音館書店)

 オランダの児童書の翻訳です。
 主人公のポレケの書いた詩が折り折りに織りこまれ、少女の気持ちの情感を誘います。
 作者のフース・コイヤーはこの本で、2012年度リンドグレーン賞受賞されたそうです。
 移民を受け入れているオランダの社会情勢が、この本を読むと透けて見えて来ます。
 ポルケのひとつひとつの問題を乗りこえていく、生き生きとした姿がとても魅力的です。
 大人と子どもを真正面から描く、刺激的な視点もこの作品の魅力のひとつです。

            
『初恋日和』〔佐藤佳代作・中井絵津子絵・岩崎書店〕

 初恋を、とても丁寧に、そしてセンシティブに描いた作品です。
 大きなドラマがあるわけではありませんが、好きな男の子との関係や女の子同士の友情など・・・。時代を超えた普遍的なテーマがここには描かれています。
 お隣の席の伊藤くん。無口でいつもこちらを睨んでいるような気がしていた気持ちがいつの間にか・・・。
 主人公の美咲の繊細な胸のうちが、こちらに伝わってくるようです。

            
『落窪物語』(越水利江子作・沙月ゆう絵・岩崎書店)

 古典の現代語訳です。
 はじめて読んだ『落窪物語』は、いわゆる継母の「いじめ」と、シンデレラストーリーといった、いわば古今東西に語りつがれた永遠のテーマがそこには描かれています。
 けれど、そのストーリーのハラハラドキドキ感を、越水さんは,実に見事にすくい上げていらっしゃいます。
「いじめられた姫君とかがやく貴公子の恋」が、こんなドキドキするものだと思いませんでした。

            
『がんこちゃんはアイドル』(末吉暁子作・武田美穂絵・講談社)

 低学年向けの末吉暁子さんの新刊です。
 ご存知人気の「がんこちゃん」シリーズが、このたび低学年向けになって刊行されました。
「ざわざわ森のがんこちゃん」は現在、Eテレで放送中です。元気いっぱいのがんこちゃんのキャラクターがとてもおもしろく、子どもたちに大人気です。
 学芸会で、がんこちゃんは自分がなにの役をするのか、おとうさんとおかあさんに教えてくれません。当日おとうさんとおかあさんが舞台の上で見たものは・・・!
 ここに至る、ひねりやストーリー展開に、幼年ものを描くヒントをいただきました。

            
『赤い髪のミウ』(末吉暁子・講談社)

 産経児童出版文化賞のフジテレビ賞を受賞された作品です。
 舞台は沖縄の離島。「神が宿る」と言われている、その神秘の島で繰り広げられる不登校の子どもたちの再生の物語です。何度も取材にいらっしゃったとわかる描写が随所にリアリティを放っています。
 末吉暁子さんと言うとファンタジーというイメージがありましたが、(むろん描写にはファンタジー的な要素も入っていますが)とにかくすごい作品です。
 島での風習や伝統や神秘を織り交ぜながら描かれたこの世界感の深さと、そこに生きる神々への思い。なによりそこで生きている人間たちの姿が胸に迫ってきます。
 ラストは泣きました。末吉暁子さん、渾身の一作です。

            

『ことのは』(北村麻衣奈作品集・さくらいともか絵・どりむ社)

 児童文学作家・北ふうこさんのお嬢さん(北村麻衣奈さん)の小学校から高校までに作られた詩が収録された詩集です。
 ページを繰るとそこには麻衣菜さんが新しく生まれた姉弟を見つめるまなざしや、おかあさんや自分の名前をみつめ、考えるまなざしといった、瑞々しい感性が広がっています。
 そして中学生・高校生になっていた麻衣奈さんは、さらにキラキラした感性で、自分を、そして他者を見つめます。ものを書くことが好きだったという気持ちが伝わってきます。
 その麻衣奈さんが、一昨年事故で亡くなりました。19歳でした。
 この詩集はお母さまである北ふうこさんが、麻衣奈さんが紡いでいた言葉を、一冊にまとめたものです。
 麻衣奈さん、あなたの言葉が、こんなステキなご本になって読む人たちの胸をゆさぶっていますよ。
コメント
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