20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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若沖さんと震災被災地

2013年05月04日 | Weblog

      

      

      

 5月2日には、日帰りで仙台に行ってきました。

 着いてすぐに、駅で待っていてくださった「語り部タクシー」に乗りました。

 案内してくださったのは、まずは荒浜。この海から津波が押しよせ、松や家々を飲みこんでいったのです。

 この日の浜は、冷たい強い風がふいていました。海辺には慰霊塔ができていました。

 津波直後の写真を見せていただきましたが、テレビなどの映像で見てショックを受けたものと重なりました。

 いまは瓦礫などはすっかり片付いていますが、家々の片鱗を残りつつ、一面が切ないほど空っぽの野原・・・。震災まえには、ここには確かな日常が、そして暮らしがあったはずです。

 ぽつんぽつんと残された津波にやられぼろぼろになった家は、住人が未だ行方不明で、家を片付けることができなままなのだそうです。

        

       

 

 その後タクシーは名取地区へ。ここでは時計があの日のあの時間のまま止まってしまっている中学校がありました。犠牲になった中学生の名前も記されていて、お線香やお花や、寄せ書きがあとを絶ちません。 

       

 その後タクシーは、ひと月以上にわたり閉鎖になっていたという仙台空港へ。

 津波の想像以上のすごさに胸をゆさぶられ、放心状態でした。

 被災地は、瓦礫の片付けが済んだだけで、復興はまだなにも進んでいません。

 タクシーの中からみた仮設住宅。冬は寒く、夏は暑そうな様子が、うすっぺらな外壁からも見えてとれ愕然としました。未来への展望のないままの暮らしは想像しただけでつらいです。

 タクシーはふたたび仙台市内へ・・・。

       

 運転手さんが、青葉城跡のある山の上へ案内してくれました。この一帯はすべて東北大学の大学ゾーン。

 仙台における東北大学の存在感の大きさに、あたらめて驚嘆しました。

 それぞれの学部の山の上に広がる新しい建物を一周してみせていただき、仙台博物館へ入りました。

       

 仙台博物館で行われていた、東日本大震災復興支援「若沖さんが来てくれました」展は、ほんとうにすばらしかったです。

 アメリカ人のプライスさんのコレクションです。

 このタイトルでわかるように、カテゴリーのネーミングの付け方が絶妙でした。

「目がものをいう」「数がものをいう」「美人大好き」「お話きかせて」などなど。

 またキャプションのタイトルも「<おしゃかさま>がお亡くなりになりました」「のめやうたえや、おおさわぎ」「ハチを見上げるサル」など、子どもたちがすっと作品世界に入れるような工夫がなされています。

 絵も、ウィットとユーモアに富んでいて、江戸時代の人たちの洒落気に感動しました。

 女子中学生の10人くらいのグループが

「若沖さんって、おもしろいね!」と目を輝かせながら、おしゃべりしていました。

 例えば「<おしゃかさま>がお亡くなりになりました」は、真ん中に涅槃の仏像がいます。その周りにはありとあらゆる八百万の神々が、悲しそうに取り囲んでいたり、もうちょっと離れたところで好奇心旺盛な表情でのぞき込んだりしています。

 この図を見ているだけで、思わず吹きだしてしまいます。お亡くなりになったのに、このおおらかさはなんだろうと。

 また若沖の作品も微細を描いているのがあるかと思えば、線の勢いだけで動きを表現しているもの。

 あるいは、こちらにあらゆる想像を膨らませる遊びが潜んでいたりします。

 江戸の、こんな古い絵画に、子どもたちが目を輝かせ「おもしろいね」といわせる、学芸員の「見せる工夫」「好奇心を抱かせる工夫」・・・、江戸の絵師たちの絵を、子どもたちを巻き込みながら、みんなで楽しんじゃおうよ、という精神があらゆるところに見受けられました。

 そしてなにより絵の持つ力。すべてからみなぎってくるパワー。

 ジャンルは違えども、とても勉強になりました。

       

      

      

 その後は、正宗が眠る森にある瑞鳳殿へ。山桜が咲いていました。

 うつくしい新緑の森で森林浴をしていたら、鳶が鳴きながら、空中をまわっていました。

 その後は、欅並木のうつくしい定禅寺通りへと。

 駈け足でしたが、濃密な一日でした。

 仙台は、緑が多く、とても清潔感に溢れる街でした。

 帰りの新幹線に乗る前に、仙台在住でいらっしゃる作家のSHさんと久しぶりにお目にかかれたことも、とてもうれしい出来事でした。

      

コメント (6)
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