20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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『フラダン』(古内一絵作・小峰書店)

2017年01月18日 | Weblog

           

 今夜は、隔月に行われている、読書会「Be-子どもと本」です。

 今月のテキストは、『フラダン』。

  舞台は福島県立の工業高校。

 男子が多いこの学校で、女子が中心になっているフラダンスの愛好会。

  フラダンスの話?

 と、ただそこだけをみないでください。

 フランダンスに取り組む、女子と男子の話ではあっても、この作品の凄さは、とにかく一人一人の人間が、本の中から飛び出してくるような勢いで、迫ってくるのですから。

 

 いや〜、すごい!

 この作家の人間を捉える視点の確かさと、ユーモア。

 生身の高校生たちの姿が立ち上がってきて、彼らの会話にも、思わず吹き出してしまいます。

 それぞれの暮らし、生きている環境。そこがしっかりと描かれ、そこから生まれる問題を、無理のない展開でストーリーに繋げています。

 「キャラクターを描く」と、一言で言いますが、キャラクターを描くとは、こうした他者からの確かな眼差しがあってこそ、リアリティを生み出すのだということを、この作品は教えてくれています。

 

 そして、舞台を福島にしたことの意味が、作品を読んでいくとわかってきます。

 3・11後の帰宅困難区域から避難してきた人たちの仮設住宅への、フラダンスでの慰問。

 その辺りからこの本は、原発がそこに住む人たちや、原発に携わる仕事をしていた人たち、そして福島に住む人たちに、どれほど大きな傷を与えたかを描いています。

 

 それにしても、この作者、人間をよく観察しています。

 読みながら、笑って笑って、そして泣きました。

 

 今夜は、どんな意見が飛び交うでしょう。

コメント
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