今夜は、隔月に行われている、読書会「Be-子どもと本」です。
今月のテキストは、『フラダン』。
舞台は福島県立の工業高校。
男子が多いこの学校で、女子が中心になっているフラダンスの愛好会。
フラダンスの話?
と、ただそこだけをみないでください。
フランダンスに取り組む、女子と男子の話ではあっても、この作品の凄さは、とにかく一人一人の人間が、本の中から飛び出してくるような勢いで、迫ってくるのですから。
いや〜、すごい!
この作家の人間を捉える視点の確かさと、ユーモア。
生身の高校生たちの姿が立ち上がってきて、彼らの会話にも、思わず吹き出してしまいます。
それぞれの暮らし、生きている環境。そこがしっかりと描かれ、そこから生まれる問題を、無理のない展開でストーリーに繋げています。
「キャラクターを描く」と、一言で言いますが、キャラクターを描くとは、こうした他者からの確かな眼差しがあってこそ、リアリティを生み出すのだということを、この作品は教えてくれています。
そして、舞台を福島にしたことの意味が、作品を読んでいくとわかってきます。
3・11後の帰宅困難区域から避難してきた人たちの仮設住宅への、フラダンスでの慰問。
その辺りからこの本は、原発がそこに住む人たちや、原発に携わる仕事をしていた人たち、そして福島に住む人たちに、どれほど大きな傷を与えたかを描いています。
それにしても、この作者、人間をよく観察しています。
読みながら、笑って笑って、そして泣きました。
今夜は、どんな意見が飛び交うでしょう。