ご恵贈いただいた新刊本から4作、ご紹介いたします。
『チャーシューの月』(村中李衣作・佐藤真紀子絵・小峰書店)
養護施設での子どもたちの,友だちとの関係、先生たちの関係、親との関係などが、ひとりひとりの子どもが浮き上がってくるように描かれています。
特に,六歳の明季の描出には胸をふるわせられました。目の前に迫ってくるように、明季の息づかいや、悲しみ、心が解放されていく瞬間が鮮やかに描かれています。
格差社会の中を生きている子どもたちの、ひとつの生きる姿を、くっきりと描ききった力作です。
話題の一作になりそうです。
『ファルコンヒルの剣の王子』(円山夢久作・ひだかあみ絵・国土社)
「見習いプリンセス ポーリーン」シリーズの第三巻。最後の作品です。
お姫さまより騎士になることに憧れている「ポーリーン」は、ファルコンヒルのお城で行儀見習いをさせられていました。
ところがこの最終刊では、とうとう剣術の訓練の仲間入りをすることになります。
一角獣の角や卵。大切なそれらが紛失し、探し出す騒動や、魔物との闘い。
登場する少年たちの、従者へ昇格するための心の葛藤など、読みどころ満点です。さて結末は・・・!
『ジャングル村はちぎれたてがみで大さわぎ』〔赤羽じゅんこ作・はやしますみ絵・くもん出版〕
「ことばって、たのしいな!」という低学年向けのシリーズの一冊です。
テーマ通り、このご本は言葉による、森の動物たちの思い違いによる大騒ぎが巻き起こるお話です。
とにかく発想が楽しいです。
動物たちのキャラクターの書き分けもわくわくしますが、言葉によるさまざまな勘違いと、そこからひろがっていくお話が楽しいです。
ちぎれた手紙にはなにが書かれてあったのか、親子で推測しあうのも、楽しい時間になりそうです。
『はなぼっこ』(赤羽じゅんこ作・いしいつとむ絵・鈴木出版)
鈴木出版から出ている月刊誌「こどものくに」ひまわり版の3月号です。
花たちが元気に咲き誇れるよう、それを守っているのは「はなぼっこ」。
雨に打たれ、風に吹きつけられ、自然に痛めつけられながらも毎年うつくしい花を咲かせてくる花たちには、守り人がいたんだと思うと、なぜか納得されてしまいます。
それも妖精ではなく、日本古来の「ぼっこ」、それに「はなぼっこ」と名付けさせる眼差しもステキです。
いしいつとむさんの絵がほのぼのとした、花を守る(ここでは桜)ぼっこたちの姿をやさしく描いています。
皆さま、どうぞお読みになってください。