毎月11日は「鉄写同好会」の日。
詳しくは発起人てくっぺさんのブログ「高橋さんの写真記念館」をご覧ください。
北陸の主要道路、国道8号線は富山、新潟県境から上越市に至るまで日本海に沿って走る。
糸魚川の市街地を過ぎ、蟹で有名な能生(のう)の漁村付近から山道に入り、急こう配を登りきったあたり。
人家など疎らとなった中に、ひっそりとした駅舎が見えてくる。
ここは新潟県糸魚川市、筒石(つついし)駅。
昨年までは北陸本線の駅だったが、北陸新幹線の開通に伴う分割民営化で、
今は、えちごトキメキ鉄道日本海ひすいラインの駅となっている。
およそ駅舎とは思えない佇まい。
むしろ、事務所か倉庫を思わせるような建物で、
鉄道が走っている気配などまったくしない。
...それもそのはず。
改札を抜けた後、地下に続く階段が現れて、
この先、距離で200メートルあまり、また高低差で40メートル下にホームがある。
つまり、ここは延長11キロあまりの頸城(くびき)トンネル内にホームが設けられたモグラ駅なのだ。
この駅に停車する列車は、上下合わせて1時間に2本程度。
次の列車の到着まで30分ほど時間があったのだが、
たったひとりの駅員さんが、
「10分後に臨時列車が通過します。この駅で速度を落としますからご覧になりませんか」
と、親切にも教えてくれた。
そして、駅員さんに案内されて、280段もの階段を下ってホームへ。
その臨時列車の到着前のこと、運よく貨物列車の通過に立ち会うこともできた。
ところで、妙な感覚である。
ホームとはいえ、トンネルの中。
トンネルの中、全速で通過する列車を眺めるということなど普通では考えられない。
音と風圧の迫力を間近に感じた次第だが、
一方で、なにぶんにも狭い空間、恐怖に似た緊張感で体を固くもしていた。
さて、お目当ての臨時列車がやってきた。
週末限定のリゾート列車「雪月花」というらしい。
窓を大きくとった開放的な車両で、
週末限定、上越妙高高原から糸魚川まで、
高原の山並みや日本海の車窓を眺めながら、3時間の旅を楽しむことができるそうだ。
筒石駅でスピードを落とすのは、トンネル内駅の珍しさを乗客に紹介するための配慮だという。
ところで、北陸新幹線の開通前、特急「はくたか」でこの駅を何度となく通過していたはずだが、
この駅の存在にまったく気づかなかった。
それもそのはず、ここを通過する時の「はくたか」のスピードは時速130キロ、
「無理もないですね」と駅員さんがやさしくフォローしてくれた。
そして...。
この駅にも停車する列車を出迎えることもできて、
この秘境駅を訪ねた旅も無事終了。
と、言いたいところだが。
ふたたび、280段の階段を上って地上へ。
言い忘れたが、この駅にはエレベータもエスカレータもない。
道すがら、駅員さんに一日の往復回数を尋ねたところ、
多いときで25回、普通で22から23回とのこと。
高低差40メートルだから、1000メートルの山を登って下ることになる。
さらに往復400メートルなら、移動距離に換算して約10キロ、...仕事とはいえ、頭が下がる思いである。
訂正:
この記事をアップした時に、筒石駅が映画「クライマーズハイ」のロケ地との記述をしましたが、
ロケ駅は、上越線の土合駅(群馬県)だったということが、
はな☆さんのコメントをきっかけにわかりました。
記述箇所を削除するとともに、謹んでお詫び申し上げます。
また、はな☆さんには、この場を借りて、
心から御礼もうしあげます。
ありがとうございました。
なんとなくの選曲は...
疾走する貨物列車を見ていて浮かんだなつかしい曲。
Queen - Don't Stop Me Now