「人類20万年 遥かな旅路」の第2回の再放送をみました。45分間ほどの
映像に何秒かゴーギャンの絵の一部が何のコメントもなしに、写されました。
「われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこ
へ行くのか」と画中に記されていることで知られるその絵ではなくありません。
たまたまシベリヤでの探索に関わり、エルミタージュ美術館内部が映された
だけですので、番組の作り手に何らかの作意があったのか分かりませんが、
kaeruにとって印象に残る一瞬でした。
それはこの番組「人類20万年 遥かな旅路」が、ゴーギャンの画題に応える
もののように感じられたからです。そして、中国人の「謎」=「中国人はどこから
来たのか 中国人とは何者か そしてどこへ行くのか」にも答えるものでした。
この「謎」の最初の問「どこから来たのか」に関して、『人類20万年 はるかな旅
路』に香港科技大学の社会科学者、バリー・ソートマンの言葉が紹介されていま
す。「中国政府は考古学を利用して、単一民族国家主義を強調し、『中国人』とし
ての国民の意識を高めようとしている」との批判です。
では、この番組のなかでの答えとはどういうものでしょうか。それをTVでも登場
し、証言していた上海・復旦大学遺伝学研究所の金力(ジン・リー)教授の研究と
その結果を『人類20万年 はるかな旅路』を通じて知りたいと思います。
以下、当書の287ページ「遺伝子が明らかにする、東アジアの真実」によります。
2001年この研究所で、中国人の起源についての説得力ある遺伝的証拠が発
見されたのです。当時、金のグループは東アジア人の起源に関する仮説を検証
する、大規模なプロジェクトに取り組んでいた。それは中国人が100万年前に中
国にいた「ホモ・エレクトニクス」に起源をもつという、愛国的な理論を証明するた
めに、その研究をスタートさせたのでした。(研究内容はp288)
その研究の結果証明されたのは、今日、北京原人の子孫は生きていないのだ。
著者アリス・ロバーツが金に問う「その結果を、あなたはどう捉えましたか?」
「そうですね、もちろん中国人としては、わたしたちのルーツが太古の中国にある
という証拠をみつけたかったですね。そいう教育を受けてきましたから」、「わたし
たちは皆そう教わったのです。しかし科学者としては、この結果を受け入れなけ
ればなりません。そしてこの結果は、アフリカ単一起源説が正しいことを示して
いるのです。~」
人類が初めて東洋に移住してから何万年も経過し、以来、人類はさまざまな地
域に拡散していったというのに、現在のアジア人の遺伝子から、彼らがどこから来
たかをたどれるというのは、実に驚くべきことである。
【この3行も本をそのまま書き写し、ロバーツの「驚き」です。kaeruもつぶやきで
はなく叫び「実に驚くべきことである」】
東アジア人のmtDAN(ミトコンドリアDNA)を解析すると、北部と南部での多様
性の違いだけでなく、各地域に人類がどのように拡散していったかを知ることが
できるのだ。
何度も上書きされたパリンピセント(文字を消して書き直すことが繰り返された
羊皮紙)から、驚くほど詳しい情報が明らかにされることもある。日本のアイヌ民
族に見られる、mtDNAは彼らが北東シベリアから日本北部の島々へ移住したこ
とを語っている。
東アジア人が東南アジアの海沿いで暮らしていた人々の子孫であるらしい。東
南アジア沿岸を進んでいた人々が、やがて北上して日本に移住したことを示唆
しており、韓国と日本に散在する、4万年前から3万7千年頃の遺跡は、この移住
の波を記録している。
少し長くなりました、これを(1)とし、明日(2)を。