「冬の薔薇~」の出版社の編集担当・小宮さんの文章から、
「小野江小学校との交流」
「神様はちゃんと見ているのだ。」
第一作目『ランドセル俳人の五・七・五』の発売から数ヶ月、反響が
日に日に高まるにつれ、私はそう感じていました。凜君が受けてきたい
じめは、あまりにも残酷で、親子が辛酸を舐めてきた六年間を思えば、
「与えられた経験に意味のないことなど一つもない」などと能天気なこ
とは、とても言えません。しかしながら、編集部に「うちの息子も凜君
と同じようにいじめられて孤独な人生だったが、この本で救われた。親
子で読んで涙している」「娘が自殺してから数年、絶望の淵に生きてい
たが、凜君を応援することで、私はもう一度生きられる」といった内容
のお手紙やお電話を頂戴するたびに、小林凜という少年が与えられた「使
命」について、意識せざるを得ませんでした。いじめを受け、不登校とな
り、句作に励んだ小林凜の一冊の句集が、同じようにいじめによって心の
傷を受けた、見知らぬ遠くの誰かを助けていく、そして、その方からの励ま
しの言葉によってまた、小林凜本人が救われていく、ーー日野原先生が書か
れたように、「命とは、自分のためではなく、誰かのために使える時間」の
こと、その「使命」を全うできているかとうかを、神様はちゃんと見ている
のかもしれない。
そんな想いをめぐらせていた2013年の夏の日、一通の大きな封筒が
届きました。それは、小野江小学校6年生の皆さんからの感想文集でした。
担任の草分京子先生からのお手紙が左記(別頁)です。本がなければ、出
会うこともなかったであろう同じ6年生同士の「誰かのために使える時間」
の交換が、ここから始まりました。凜君は、「涙腺が空になった」と、新た
な友との出逢いを綴りました。小野江小学校に招かれ、一緒に給食を食べた
時、凜君の表情から暗い雲がぱっと消え去り、台風一過の秋の空のような顔
になりました。こんなふうに笑う子だったのだと初めて知りました。涙がで
ました。
三重と大阪の空は繋がっていました。いえ、励ましのメッセージを送って
下さった皆さんの空とも一つに繋がっています。これからも、優しい青空が
繋がりますように、草分先生と小野江小学校の皆さんの笑顔も、ずっと続き
ますように。
担当編集・小宮亜里
『冬の薔薇 立ち向かうこと 恐れずに』の該当頁を写しました。
本をつくる喜びがそのまま伝わってきます。