kaeruのつぶやき

日々のつぶやきにお付き合い下さい

昭和15年5月25日、日本資本主義発展史講座を読む人。

2013-02-28 21:33:11 | 本のひと言

(写真をクリックすると拡大されます)

 不破さんの『歴史から学ぶ 日本共産党史を中心に』の「野呂栄太郎と『日本

資本主義発展史講座』刊行80年」を飛ばし読みして、本棚にあった『講座』をめ

くっていましたら、切符が落ちてきました。

 「15,-5,25」の数字が読めます、昭和15年5月25日でしょう。「横濱 東神奈川

↔櫻木町 3等 5銭。裏に櫻木町驛発行」とあります。挟んであったのは、『講座』

の第3回配本(昭和七年八月六日発行)の物です、上の写真です。


 昨日『講座』の第6回配本が昭和8年6月と書きました、全体としては7回配本まで

です。この『講座』がどのような意図で発行されたか、野呂の「趣意書」です

「本講座は、(略)、日本資本主義の最も包括的な科学的研究であり、その本質的矛

盾の最も根本的な分析である。しかも、われわれが当面せる諸問題の根本的解決の

ためには、本講座はわずかに解決の鍵を提供するにすぎない。われわれは、日本資

本主義の危機からの革命的活路を身をもって切り開かんとする多数読者の積極的努

力によって、始めてさらに完成せらるべきことを期待する」。

 不破さんは、「要するに、『講座』が明らかにするのは客観的分析であって、これを実

らせるのは、あなた方読者の革命的努力だという趣意書です。岩波書店もこのことを承

知してのりだしたわけで、これは大決断でした。」と書き加えています。

 岩波書店=岩波茂雄の信念、思い知るべし! ということですが、この岩波の信念を

伝えてくれる話が不破さんの本で紹介されています、明日それを……。


『風姿花伝』 4。

2013-02-27 23:24:04 | 本のひと言

 確かに、『風姿花伝』 が世に紹介され刊行され広められてきたことに、岩

波書店の創立者岩波茂雄の思い=思想を見ることができますが、だからと

いって岩波文庫「日本思想」の第一番目に、この本がすわる理由としては弱

いのです。

 

 能という芸術が武家階級に後援されていたにもかかわらず、戦勝を謳歌する

曲をつくらなかった点を注目してよい、とは「ブリタニカ百科」での言です。 武人

の魂が、救いを求めて現われる修羅能の『八島』『清経』『実盛』などに当時の

武士たちは心惹かれたに違いありません。 演ずる方も「衆人愛敬(しゅうにん

あいぎょう)=みんなから愛されること」という目的を掲げ、貴族、僧侶、農民な

ど観客に感銘を与える美学を「花」として追い求めていきます。

 

 また、和歌の本歌取りにも模せられる、古典を題材とした能作づくりでは、『古

事記』から『曾我物語』までにわたっているそうです。 さらに、新作能にはキリス

ト教に題材を求めた『使徒パウロ』のようなものや、『智恵子抄』では口語の能、

洋服の能など実験的な試みもされています。

 こうみると、『風姿花伝』にこめられた芸術精神は、日本民衆の本質的に開か

れた進取の気風を擁する精神土壌に根をはっていることに気付かされます。

 

 岩波書店は文庫を発足させた1927年から5年後、『日本資本主義発展史講

座』の刊行計画を発表し、この講座は同年・1932年5月に第1回配本を発行し、

翌年8月に第6回配本を行なっています。

 この講座と岩波書店、そして中心になった日本共産党の理論家・野呂栄太郎

について、不破哲三さんの 『歴史から学ぶ 日本共産党史を中心に』 にもとづ

いてすこし触れてみます、明日……。


『風姿花伝』 3。

2013-02-26 23:21:55 | 本のひと言

 「真理は万人によって求められることを自ら欲し、芸術は万人によって愛されることを自ら望む」

に はじまる一文は以下の通りです。

 

 真理は万人によって求められることを自ら欲し、芸術は万人によって愛されることを自ら望む。かつては民を愚昧ならしめるために学芸が最も狭き堂宇に閉鎖されたことがあった。今や知識と美とを特権階級の独占より奪い返すことはつねに進取的なる民衆の切実なる要求である。岩波文庫はこの要求に応じそれに励まされて生まれた。それは生命ある不朽の書を少数者の書斎と研究室とより解放して街頭にくまなく立たしめ民衆に伍せしめるであろう。近時大量 生産予約出版の流行を見る。その広告宣伝の狂態はしばらくおくも、後代にのこすと誇称する全集がその編集に万全の用意をなしたるか。千古の典籍の翻訳企図に敬虔の態度を欠かざりしか。さらに分売を許さず読者を繋縛して数十冊を強うるがごとき、はたしてその揚言する学芸解放のゆえんなりや。吾人は天下の名士の声に和してこれを推挙するに躊躇するものである。このときにあたって、岩波書店は自己の責務のいよいよ重大なるを思い、従来の方針の徹底を期するため、すでに十数年以前より志して来た計画を慎重審議この際断然実行することにした。
 吾人は範をかのレクラム文庫にとり、古今東西にわたって文芸・哲学・社会科学・自然科学等種類のいかんを問わず、いやしくも万人の必読すべき真に古典的価値ある書をきわめて簡易なる形式において逐次刊行し、あらゆる人間に須要なる生活向上の資料、生活批判の原理を提供せんと欲する。この文庫は予約出版の方法を排したるがゆえに、読者は自己の欲する時に自己の欲する書物を各個に自由に選択することができる。携帯に便にして価格の低きを最主とするがゆえに、外観を顧みざるも内容に至っては厳選最も力を尽くし、従来の岩波出版物の特色をますます発揮せしめようとする。この計画たるや世間の一時の投機的なるものと異なり、永遠の事業として吾人は微力を傾倒し、あらゆる犠牲を忍んで今後永久に継続発展せしめ、もって文庫の使命を遺憾なく果 たさしめることを期する。 芸術を愛し知識を求むる士の自ら進んでこの挙に参加し、希望と忠言とを寄せられることは吾人の熱望するところである。その性質上経済的には最も困難多きこの事業にあえて当たらんとする吾人の志を諒として、その達成のため世の読書子とのうるわしき共同を期待する。

【原文は縦書き】

 お手元に岩波文庫の一冊がありましたら、ご覧ください。奥付の裏頁に記されています、

日付は昭和二年七月です。 

 『風姿花伝』は、kaeruの日常生活ではおよそ縁のない能芸術論ではありますが、「秘す

れば花、秘せねば花なるべからず」とか「人の心に思ひも寄らぬ感を催す手立、これ、花なり」

など、こころして読めば興味つきぬ所も多々あります。

 1958年10月に第1刷、2012年6月75刷。 かなりの売れ行きの数字でしょう、ある岩波文

庫に「この文庫は40刷に達した。40万冊以上は売れた」と書かれています。本によって1刷

の部数はかなり差があるのでしょうが、話半分で5千冊としても60年余に30万以上は売れて

いると言ってもいいでしょう。

 門外不出であった秘伝の書が街頭に出、民衆のなかに引きつづき広がりいく様は日本人の

精神生活の豊かさを示すものと言えます。


『風姿花伝』 その2。

2013-02-25 22:13:43 | 本のひと言

 岩波文庫青1-1『風姿花伝』、と昨日紹介しましたが、どういう本か何も触

れませんでした。それで結論だけ、『風姿花伝』が岩波文庫目録の一番はじ

めに出てくることと同文庫の信頼性とが関係しているということを述べても、

なんのことやら分からないでしょう。 「kaeruのつぶやき」の信頼性が薄らぐ

ことになります。

 

 『風姿花伝』、文庫のカバーより。

  表紙に能の女面があります。 (上の女面はWikiから転写)。

 世阿弥著 野上豊一郎・西尾実 校訂。

 「一般に「花伝書」として知られている 『風姿花伝』 は、亡父観阿弥の遺訓に

もとづく世阿弥(1364?~1443)最初の能芸論書で、能楽の聖典として連綿と

読みつがれてきたもの。室町時代以後日本文学の根本精神を成していた「幽玄」

「物真似」の本義を徹底的に論じている点で、堂々たる芸術表現論として今日も

なお価値を失わぬものである」

 

 「すでに五百五十余年前の書かれた、この世界的な芸術論」 とは昭和33(19

58)年に西尾実氏が「校訂者のことば」として書かれたものです。そして、「(これ

は)一子相伝の書として遺されたために、明治42年……まで深く観世家・金春家な

どに秘蔵されていて、同じ国に生れ、同じ方面に関与する専門家でも、この古今東

西にわたる、すぐれた芸術論に接することができなかった。」

 「(明治42年に学界に紹介されたあとも)読者は一部の研究家に限られていたが、

昭和二年十一月、岩波文庫に収められ、「万人の書」として刊行されて以来、国民

必読の古典のひとつとなり、」。 私はここに、岩波文庫の精神をみる思いがします。


岩波文庫青1-1 『風姿花伝』

2013-02-24 22:16:30 | 本のひと言

 本の整理を文庫からはじめました。

 岩波書店が昨年の2月現在の販売部に在庫している文庫本を解説目録に

して出しています。 その第1頁の「青1-1」が 『風姿花伝』 です。手元にあ

る2005年からの目録はその順番ではじまっています。 そのことは知ってい

たので昨日本屋の棚の前でその本を見たので買い求め、早速わが本棚と

電子本棚におさめました。

 

 2007年2月に発行された 『岩波文庫の80年』 には1927年7月創刊から

2006年12月までの約5400冊が解説付きリストになっています。 そのP4

1927年11.5に 『花伝書』 として発行され1935年には改訂版がだされまし

た。 『風姿花伝』 として発行されたのは1958年(s33)です。手元の本にも

1958年10月25日 第1刷発行 2012年6月5日 第75刷発行とあります。

 

 この100頁余の薄い本がなぜ、岩波文庫目録の一番はじめに座っているの

でしょうか。目録だけを見ていた時にはまったく気付かなかったことなのですが、

本を手にしてみると、そんな疑問が起きてきました。 その解答は同時になぜ

岩波文庫が信頼できるのか、の解答でもありそうです。


日付変更線。

2013-02-23 22:56:23 | 詩的なつぶやき

  昨日の「つぶやき」、 「明日・2月22日の句として」などと日にち感覚の

ずれが出て恐縮です。 頭の中の日付変更線上をジクザク飛行していた

のでしょう。

 

 それでは今度は本当に明日2月24日の一句。

   山焼やほのかにたてる一ツ鹿     加舎 白雄

 「早春、野山の枯草を焼き、その灰を肥料として草刈山は育つ。煙と炎

の向うに一頭の牡鹿の姿がゆらりと見える」

 『癒しの一句』 では、

  「陽炎の眼にしみるばかりなり」 の句を紹介し、

 「兄の死に国元の信州上田に赴いたとき、墓前での作」と記しています。

 なお、上田公園には加舎白雄「四季のうたメロディー装置」というもの

があって、白雄の四季の秀句に曲をつけて流すようになっているそうです。

今度行ったら聴いてみましょう。


梅の音、星の音。

2013-02-22 21:21:59 | 詩的なつぶやき

   日表の紅梅に音ありにけり    後藤 綾子

 明日・2月22日の句としてこの句を記しているのは 『癒しの一句』 です。

 この句を口にして、いま読んだばかりの話が浮かんできました。

 

 6歳の次男の保育園の帰り、手を引く次男に向かって

 「虫の音(こえ)がすごいね」

 次男はとても驚いたように聞き返す。

 「エッ!? 虫の音? 星の音じゃないの?」

 

  句については 「日なたの紅梅の木の、何かの物音がしたというのだが

、それも春の到来を暗示してるかのようだ。古来、視覚、嗅覚に訴えかけ

てきた梅の花に聴覚でせまったところが新しい」 とあります。

 子どもとの会話については 「なんと、次男の中では~星の瞬きと~虫の

音がリンクしていたのだ。~本当に星音(ほしのおと)が聴こえていたので

はないか」。

 この話を載せているのは葉山藝大BOOK-2 『本に恋して』 です。

 書き手の地代所 隆さんは鎌倉浄明寺の蕎麦カフェ「星音(ほしのおと)」

の店主です。


電子書籍?

2013-02-21 20:05:45 | 本のひと言

 昨日の茶千さんのコメントにはピアノコンサートについての返信しかしてい

ないのでここで他のことも触れさせていただきます。

 風邪は全快とはいえませんがかなり快調です。

 PCというよりスマフォンのほうですが、この便利性に惚れ込んでいます。

内の奥さんが話しかけてもこれに気を取られていると、「嫉妬」します。別に

美人像を見ているわけではないのですが。

 

 便利性では電子書籍に関心があります。青空文庫など名作等が何時でも

どこでもタダで読める魅力は捨てられません。といって毎日見ているわけで

もなく、青空文庫にある本を自分の本棚から外そうとも思いません。

 本というものにくっ付いている自分の思いというものが、蔵書にはあります。

その思いとは、知識だけではないでしょう。その時期の自分の迷いとか疑問

に対して解答めいたものを求めていた自分を見いだすのは、自分が読んで

いた記憶と一緒にあるものです。

 

 話はとびますが、昨日の2月20日は小林多喜二が築地警察署で虐殺され

た日です、1933年のことです。彼の思想が彼が身につけた知識と深い繋が

りを持っていることは当然です。同時に知識の量があるいは質が思想を決定

づけるものでしょうか。彼の生れや育ちの日々の生活と親族や周りの人びと

への関心や愛情とのかかわりなしに思想は形成されなかったでしょう。

 多喜二も生活と知識のインプット&アウトプットの繰り返しのなかで、自分の

命そのものである自分の思想を己の身体と一体のものにしていたに違いあり

ません。

 

 電子書籍か紙の本か、ということより自分がどういう解答を得るために本を

手にしているのか、そこに自分(達)の生活のどのような問題を持ちこもうと意

識しているのか、そこが大事なことなのでしょう。


寝床のなかの本棚

2013-02-20 22:24:22 | 本のひと言

 明日の仕事場に穴を空けるわけにはいきません。 年度かわりで普段や

らないことも入ってきて、人が足りなくなり今週から三月一杯土曜日も出な

くてはならない位でとても休んでいるわけにはいかない、というわけで今日

は御身大事で、床に伏していました。 

 

 調子は悪くないので、先日からはじめた蔵書管理アプリをスマホで整理

してみました。 かなり以前に蔵書管理を思い立ち、エクセルに打ち込み出

したのですが、途中で止めていたのです。 管理の目的はその都度その都

度何らかの必要や関心に添って本を購入してきたわけですから、その必要

関心を意識的に組織していきたいと思ったこと、また偶にある同じ本の二度

買いを防ぐことなどでした。

 古本屋に入って文庫の棚などみるとこれは持っていたか?無ければ買って

おきたいが、ということが度々あり、是非携帯できるリストをつくりたいと思って

いました。 今回使い始めたアプリは、かなり優れ物だと思います。

 アイホのカメラから本のバーコードを読取り登録できるのは当然として気に

入ったのはエバノートと同期できることです。 それによってPCでも対応でき

るので作業がかなり楽になります。もちろんどこの古本屋でも書店でも二度

買いは防げます、ただし蔵書全部を入力した上での話ですが。 それまで

かなり時間がかかりそうです、その間はあまり古本屋に立ち寄らないように

しましょう。


風邪気味から風邪に。

2013-02-19 23:14:39 | 花はこころの器

 昨夜は風邪気味、今夜は風邪。 明日の夜は?

 昨年11月にかなり風邪に苦しめられ、注意をしてきた積りですが、すっか

りやられてしまいました。11月のときにはここ数年間風邪で寝込んだことが

ない、と大見栄をきったのですが、わずか三カ月で再び!

 その時、ほぼ同時に風邪をひいていた御婦人から見舞いのメール「体調不良

ですって大変ねー、あなたの奮闘でピアノコンサートが大成功したのですから、

充分休養をとって下さいね」。

 こういう針小棒大なほめ言葉は風邪には良薬で、鼻水と咳と少しの頭痛の身

体に鞭打って、「体調不良老人です、御婦人の風邪は色気があるのですが、私

の場合は食い気だけです。幸い腹の方はやられていないのでこれ一本で回復

させてみせます」と返信。

 

 「kaeruのつぶやき」専用のメールアドレスをつくりました。

 kaeru-23@goo.jp  へ、コメントとは別です。

 風邪に効くメールを期待しています、因みに先のご婦人は81歳で「一日に四つ

も行事が重なるのよ」と元気印の小母さんです。