「そして……、」普通なら絵画とか彫刻などと続いても良さそうですが、行き詰りなのです。趣味が少ないというより関心が無い、音楽がタイトルに入っているのは偶々のことで聴く機会があったからです。とても趣味として音楽をあげる気はありません(ただこれからは聴くだけなら出かけるかも知れませんが)、あらためて精神的にも貧しいものだと思います。
それにしても何か繋がるものはないか、と立ちあがったらありました、
絵画関係ですから芸術に関わるものです。画家・奥村土牛の評伝です。多分芸術に関係する本で、文学以外を扱っている本はこれだけでしょう。
なぜそんな本があるか、土牛の名前くらいは知っていましたし、偶々寄った古書店の棚にあって私と同じ丑年だということと、定価3200円が2310円だったことから買い込んだと思います。
さて手にしたのも何かの縁でしょう、開いた第1ページ、
そして何ページかパラパラして、目を通してみると読みやすく面白そうなのです。下手をすると手に覚えのない趣味として「絵画」が入り込んでくるかも知れません。
第一章
奥村土牛は、一九八九年の二月十八日の誕生日で百歳の、文字通り日本画壇の最高峰の人である。作風のすばらしさはいうまでもなく、人柄のよさでも天下無類の人である。 百歳記念の回顧代表作展やテレビの特別番組などが、すでに一年も前から慎重に計画準備されてきたものだ。
九十歳を過ぎたころからの土牛に会った人は、一様に、生身の神さま仏さまを感じさせる立派な人格者だ、とほめそやす。 戦前から土牛邸に出入りしてよく土牛を知る古参の画商は、こと絵について土牛ほど徹底したエゴイストは、ほかに類を見ないという。しかも、百歳のこの長寿の人が、幼少年期はまともに育つかどうか危ぶまれた虚弱体質の救いがたい弱虫の男の子だったというのだから、世のなかのことはうわべの観察ではわからない。日本の芸術家の位人身を極めた芸術院会員になり、さらに最高の栄誉の文化勲章を受章し、岡倉天心以来の伝 (あと略)