昨夜の「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」を観て、やはり頭に残っているのが「タイトル」のこのコ・ト・バです。吉川孝昭さんの「男はつらいよ覚え書ノート」にはこう書かれています。
紆余曲折の後、ようやく二人はとらやに戻ってきて、リリーと寅は過ぎ去ったあの夏の夢の日々を回想する。
寅 「暑い一日が終わって、 夜になると、スーツと涼しい風が吹いてなあ...、遠くで波の音がザワザワザワザワザワザワ 」
リリー 「ほら、庭に一杯咲いたハイビスカスの花に、 月の光が差して...、 いい匂いがして」
寅 「うん。 昼間の疲れで横になってウトウトしてるとお母さんの唄う沖縄の哀しい唄が聞えて来てなあ」
リリー、懐かしい 『白浜節』 を静かに口ずさむ。
まるで自分の気持ちを託すかのように。
リリー 「♪我んや白浜ぬ 枯松がやゆら 春風や吹かん 花や咲かん 二人やままならん 枯木心」
リリー 「私、幸せだった、あの時…..」
寅は未だ夢から覚めやらぬ感じでこうつぶやく。
「リリー... オレと所帯持つか…..」
全文はこちらから、
男はつらいよ全作品覚え書ノート 第25作「寅次郎ハイビスカスの花」.
寅さんのこの場面での「所帯持つか・つぶやき」のかなり前ーーまだ二人とも沖縄にいた頃ーーこんなやりとりがありました。
吉川さんは映像以上にご自分の思い入れも存分に組み込まれて、かかれています、そこで読みとってもらえればと思いますが、この部分に関連して簡単にスジを記しておきます。
渡り鳥のように歌を生業として全国を渡り歩いているリリーから「とらや」に、旅先の沖縄で病に伏しているとの手紙「寅さんに会いたい」と。大嫌いな飛行機に乗りはじめての沖縄です。
寅さんの献身がリリーを元気づけ回復させます、回復すればリリーは仕事に出ると言い、寅さんは無理をするな
「オレがなんとかしてやるやるよ」
リリー「嫌だね」
寅「どうして」
リリー「男に食わしてもらうなんて、私、まっぴら」
寅「フフフ、水くさいこと言うなよ、お前とオレの仲じゃねえか」
リリー「でも…夫婦じゃないだろ」
寅「えっ?」
リリー、目を伏せがちに…
リリー「あんたと私が夫婦だったら別よ。…でも違うでしょう」
寅、ヘドモドしながら
馬鹿だなあ、
と、続くわけですが。
リリーに「あんた女の気持なんか分かんないのね…」と言われ、リリーの目に涙を見た寅は……、
長い沈黙の時へ……。
この「沈黙」からどういう経緯で、冒頭の「とらや」での寅さんの「つぶやき」に至るのかは是非「吉川男メート」で観て下さい。ここで私が「つぶやき」たいのは「所帯を持つ」ということです。