3.七七頭ヶ岳(693m) <伊吹山地>
【ななずがたけ】湖北余呉湖の北に位置する。山麓の集落から七つの尾根を山頂に集めているのが山名の由来とされ、麓から仰ぐ山容の美しさから地元では丹生富士と呼ばれている。
<山頂に美人の肌を作る池が…>
上丹生の野神橋には「伊香西国二九番札所 七七頭ヶ岳観音参道」の古い石標が立っている。美しい丹生富士の姿をカメラに収めて林道を進み、高時川を渡って県道と再合流するところに車を置く。ヒノキの植林の中に山に向かって道が延びている。「山頂まで1.9km」の標識があり、木の杖がたくさん置いてある。地元の人がよく登る山のようだ。やがて雑木林に変わり、溝状の急な登りになる。エンレイソウ、シュンラン、イカリソウなどを見ながら30分程登るとなだらかな尾根道に出て、「十三丁」と山頂西林寺までの距離を示す石標がある。そろそろイカリソウにも見飽きる頃に、黄金色のヤマブキ、背の低い真紅のヤブツバキが点在していて、新緑に美しいコントラストを見せる。
ヤブレガサの群落が現れると「あと1000m」の標識。花を見ながらゆっくり歩くので、全く疲れを感じない。少し急坂になり、大きな松の木が立っている所に来る。眼下に上丹生の田園風景が拡がっている。新緑の梢越しに墓谷山、金糞山を見る気持ちの良い尾根道をしばらく行き、最後の急登になる。ヤマツツジが咲き始め、上部に来たのでショウジョウバカマの花が今、盛りである。大きなブナやミズナラの疎林の中で、いろんな種類のスミレが咲き、シュンランもたくさん見つけた。
タムシバの白い花に迎えられるように、山頂部に着く。小さな石塔と山名板があり、横の祠には両洞山西林寺の扁額がかかっている。三角点ははすぐ先の小台地にあった。樹木に囲まれて展望はなく、風が強く寒さを感じ始めたので、「るり池」への標識に従って北側へまわる。辺りはイワウチワの花の大群落で、中にイワカガミも交じっている。急坂を下ると、汚れた残雪の横に苔むした岩から滴り落ちる湧き水があった。これを二本の樋で集めた水場が「るり池」である。村娘の顔に出来た腫れ物を治したという伝説の池である。少し登った林の中で昼食。足元はイワウチワの花、目を上げると梢越しだが新谷山と、まことに贅沢なオープン・カフェである。
一時間を過ごして、登ってきた同じ道を下る。急坂に積み重なった落ち葉で足首まで埋まり、フワフワと新雪を踏むような感じである。下りは早く、登りの半分の時間で元の駐車場所についた。やや歩き足りない思いは残るものの、快晴の空の下、思いがけぬたくさんの花達の饗宴で本当に楽しい山行だった。
七七頭ヶ岳のシュンラン
【コースタイム】矢田部橋(上丹生側登山口)9:30…七七頭ヶ岳11:00~12:05…矢田部橋12:50(2001.04.21)