万華鏡の楽しみ ガラス色の幸せ

万華鏡の魅力、ガラス色の幸せを伝えたいと思います

とんぼ玉の万華鏡

2022-07-23 21:06:50 | 万華鏡ブログ

久しぶりの投稿を思い立ったのは、万華鏡の世界を新たに広げる作品に出会ったからです。
リチャーズ華子さんの作品を拝見したのは、丸善日本橋店で開催中の「アート万華鏡の世界展」(7月26日まで開催中)。
ランプワークによるガラスビーズのアクセサリー作家として実績のある作家さんですが、万華鏡を創り始めたのは昨年のことだったそうです。
万華鏡のオブジェクトとしてとんぼ玉を使ってみたい、新たなとんぼ玉の魅力を発信したいと思われたのだと思います。
万華鏡の面白さは、いろんな色や形をオブジェクトセルに閉じ込めて、それらが鏡の魔法で華になるところ。とんぼ玉の中にいろいろな世界を演出してオブジェクトにするのは、素敵な試みだなと思いました。

球体のガラスマーブルをオブジェクトにする万華鏡は今までもあり、このブログでもご紹介してきましたが、この作品では円筒状になったガラスビーズをそのままオブジェクトにしています。 中のガラス模様は動きませんが、深い色合いと異なる形状のパーツの組み合わせが独特で、映像表現としても魅力的だと思いました。

この作品は千夜一夜物語~Arabian Nights Entertainments~から「魔法の林檎」をテーマにした作品です。
エキゾチックな細密画のような映像は、とんぼ玉そのものの景色とはまた異なって、想像を膨らませます。

アラビアンナイトの世界へ誘われるような映像の展開で、想像以上に面白みがあり、覗いていてとても楽しいです。2ミラーシステムで、ミラーシステムの第三面に反射素材を使うことで、周囲にも映り込んでいます。

もう一点ご紹介するのは、「月の世界」より Fin(フィン)という小ぶりな作品です。

身近に飾って楽しめる万華鏡として、くるくる回すことができる丸いとんぼ玉をオブジェクトに使っています。何気なく飾っているように見えるフィンですが、小さくてもしっかりと作家さんの世界観を表現しています。 いくつか並んでいるのを拝見しましたが、それぞれに個性があって、いろいろな人間がいるよって主張しているみたいでした。こういう時、一つを選ぶのは大変です。

ひとつの球体のとんぼ玉から実に様々な模様が生まれます。

球面がオブジェクトになるので、3ミラーシステムから生まれる映像もユニークです。

映し出す場所によって大きな変化があり、面白いですね。

最近は、コロナ禍でなかなか万華鏡展に足を運ぶこともできませんでしたが、今回新しい作家さん、新しい万華鏡との出会いがあり、嬉しく思いました。

そして山見浩司さん、かたおかきくよさん、小嶌淳・喜多里加さん、松本よしこ&たけおさん、佐藤元洋さん、若林寛さん、金子宏明さん、並木亮太さん、今関舞香さん、仙台万華鏡美術館から海外作家さんの作品も並び、大変見ごたえのある万華鏡展だったことを併せてお伝えしたいと思います。

 

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

赤津純子さんの万華鏡展

2022-02-04 21:21:06 | 万華鏡ブログ

2月2日から8日まで松屋銀座で開催中の赤津純子さんの作品展「光の贈り物 万華鏡の世界」展に伺いました。
久しぶりに赤津さんの作品をゆっくりと拝見する機会となり、その独特の映像美を堪能してまいりました。
上の写真は、今回の新作「kai」です。 3ミラーですが、2種類の組み方があります。ここでご紹介するのは、4ポイントの映像が縦横に繰り返される組み方です。ミラーの先に置かれたオブジェクトケースはドライタイプ、カットされたガラス片が筒を回すたびに心地よい音とともにランダムに動きます。
背景のガラス(オブジェクトケースの奥)が青いタイプでは、

背景のガラスがグリーンのタイプでは、

リズムを感じる映像表現で、それらが一瞬で次の模様に変わるところが心地よい万華鏡です。映像が視野いっぱいに広がる3ミラータイプなので、解き開くというイメージから、開―「kai」と名付けたそうです。

赤津さんの作家デビューした作品展の時、その完成度の高さとユニークな映像表現に驚かされた「華鼓」を赤津さんは今でも大切に制作し続けています。

高さ約8㎝の小さな鼓型の万華鏡には、ご自身も習っていらっしゃるという鼓への愛着と万華鏡への愛情がこもっているに違いありません。
本当に小さなオブジェクトケースの中にこめられたオブジェクトは十分に吟味され、和紙を背景にして繊細でリズミカルな6ポイントの映像を生み出します。 和紙の柔らかさと繊細なガラス細工が、前方からの光を受けて織りなす模様のなんと清々しいことでしょう。

次にご紹介する「相響む」は黒い背景の万華鏡です。

次は「空華」です。オイルの流れに乗って動き、黒い空間の中に華を生み出すさまを楽しみます。

最後に、正面に展示されていたパーラー型(卓上型)の作品「羽衣」です。 

特徴的なオブジェクトをご覧ください。細い糸の流れを樹脂で薄く固めた数片と真珠の粒が良い働きを見せて、きれいな映像の変化を見せています。

音楽にも造詣が深く、また日本の伝統芸術にも敬意を持ちつつ、自分の感じる美しいものを万華鏡に映し出そうとする、そんな赤津さんの作家魂を感じた作品展でした。

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

万華鏡の世界を広げる挑戦 松宮真理子さんの展示会から

2021-11-26 11:14:21 | 万華鏡ブログ

東急吉祥寺店で開催中の「ガラスの器と万華鏡」展に伺いました。ガラスの器の作家さんとの共催ですが、このブログでは万華鏡のことを取り上げています。
松宮真理子+北斗美学という作家名で展示されている作品は、いずれも独特の趣と技術があり、一つ一つが存在感のある万華鏡ばかりで、松宮さんがあらたな万華鏡の世界を創り出して世に問うている感じがしました。
上の写真は、「イストリア(物語の意味)-鳥の声-」というタイトルで、「いつの時代のどこの国のものかわからない風合いを持ち、建物のようで景色のようで、見る人がそれぞれ何かしら物語を感じていただけたらと思いながら制作しました」との説明。銅、真鍮、七宝、緑青、ガラス、鏡で創り出した手の込んだ作品です。不思議な歴史を感じさせるような外観から、どんな映像世界が広がるのか気持ちが誘われます。

細密画のような美しい色合いの映像が展開します。

万華鏡はそもそも異素材の組み合わせ、異なる技術の組み合わせで無限の可能性を秘めたアートだと思います。そんなことを改めて感じた作品展から、拙い写真ですが、ご紹介します。これらの質感、輝き、細部にわたるデザインなどは実際にご覧いただき、感じていただきたいのですが、少しでも素晴らしさが伝わればと思います。

本体は七宝の技術で創られており、台座(万華鏡本体を差し込む部分)や蓋(右下)に金属を美しく加工して唯一無二のデザインとなっています。台のガラスの加工も美しく、全体でバランスのとれた作品となっています。内部には球体のような映像が浮かんで見えます。

次の2点は、松宮さんが以前から取り組んできた「天体観測」をテーマにした作品で、小宇宙のような世界を内部に展開します。いずれも七宝の技法で、金属のあしらいも素敵。従来のガラスの作品とは異なる趣ですね。

次の2点はアストラリウム(天文時計の意味)というタイトルで、刻々と移り変わる時をイメージしたボディーは七宝で制作されています。ガラスの台も絵画のようで、美しい組み合わせですね。一つ目は秋を表現した作品です。

もう一つは冬をイメージしています。

最後に小ぶりな、とても素敵なデザインの手持ち型の作品です。どちらも(写真はありませんが)ガラスオブジェクトの選び方に松宮さん独自の作風が表れています。繊細で透明感と落ち着きがあり、絵画もなさる作家さんらしい色遣いなのかなと感じます。

パーラータイプの大型作品、ガラスの作品も素敵でしたが、彫金七宝という技術に独自の表現力を加えた作品を中心にご紹介しました。丁寧な手作りの細部に至るまで、とても長い時間をかけて制作したそうです。12月1日まで開催中ですので、可能な方はぜひ実物をご覧になって、感じていただきたいと思います。

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BKS 2021 Kaleidoscope Expo:中里保子さんの新作 「Cheers!」

2021-08-09 09:53:57 | 万華鏡ブログ

1年ぶりの投稿となりました。 FacebookやInstagramでは少しずつ投稿を続けていましたが、ブログは本当に久しぶりです。

今年もブリュースター・カレイドスコープソサエティのカレイドスコープ・エキスポは、コロナ禍のため7月にオンラインで開催されました。アメリカまで行かなくても新作を発表できる機会にはなりましたが、会員としては会場で作品を実際に覗き、作家さんと話をする楽しみは次回に延期ということで残念なことです。

新作発表の場はオンラインで写真と動画を駆使して投稿するもので、現在はBKSのサイトから会員以外の方も見ることができます。新作発表した中里保子さんの作品を、今年もご紹介したいと思います。

タイトルはCheers! コロナ禍の生きづらい世の中、気持ちを盛り上げてくれるような万華鏡です。中里さんがこの作品に込めたのは、今まで作ってきたたくさんの万華鏡の、オブジェクトセルとなったガラス管の切り落とされた部分を使って、作品にしたいという思いでした。大きなグラスの中で、細いワイヤーで繋がれたガラス管の端っこがシャンパンの泡のように見えています。素敵なアイディアですね。

底の方に向けて、グラスの内側からゴールドとシルバーでペイントし、金属の飾りをあしらってお洒落な姿になりました。台座部分にワインのコルク栓を並べて、テーマに合った雰囲気を生み出します。

オブジェクトセルはグラスの底の一部をカットしてボールベアリングを組み込んでセルをつけました。とても滑らかに回転します。覗きやすさを追求しつつ、先端部に模様を入れるなど細部のデザインまで凝って、妥協のない作品を生み出しているところが中里さんらしいです。

ミラーシステムはテイパード(先端が細くなっている)に組まれ、大きな覗き口からは立体的な映像展開を楽しめます。

赤紫やグリーン、ブルーなど透明感のあるガラスオブジェクトが芳醇な味わいを感じさせる映像展開です。ミラーシステムの一部にガラス管も使われて映り込んでいます。

新作発表の作品の中から、会員の投票でピープルズチョイス・アウォード 2点が選ばれますが、中里保子さんの「Cheers!」は、山見浩司さんの「GODZILLA」とともに見事受賞を果たしました。  おめでとうございます。乾杯!  (写真は中里さん提供です)

制作中の様子、映像の変化の動画もこちらからご覧になれます。  https://youtu.be/5hUetIrZea8

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Brewster Kaleidoscope Society 新作発表会から中里保子さんの「REBORN」

2020-11-12 20:45:08 | 万華鏡ブログ

久しぶりのブログです。 コロナ禍の中、万華鏡界でも少しずつ動きが出てきました。ブリュースター・カレイドスコープソサエティ(BKS)が毎年開催するKaleidoscope Expo(以前はコンベンション) ですが、2020年度は中止、次回は1年先に延期になり、たくさんの愛好家が集まる機会を失いました。そんな中、何とかネットワークを生かして万華鏡の魅力を伝えたい、こんな時こそ万華鏡を覗いてみてほしいと願い、作家さんが作品を発表する機会を作りたいと、BKSの仲間たちが働いてくれたのです。
毎年集う中で参加者が楽しみにしている新作発表(Unveiling)をオンラインで行うことが企画され、11月6日(日本時間では7日)に実行されました。

トップの写真はそこで発表された中里保子さんの新作「REBORN」です。新型コロナウィルスによる閉塞感に満ちた世の中からの新たな再生を願って、創りました。清々しく透明感のあるボディーはステンドガラスで創作。作品全体のデザインは透明感を意識して構成したそうです。外観の色をミラーシステムの一部に使い、内部映像と外のデザインの調和を目指しています。台座はミラー加工したガラスを使い、本体を映しこんで水面に浮かんでいるような印象です。 アイホールは大きく、上からの光も取り入れて明るい映像を生み出します。

金属のアームで本体が支えられるデザインは、ガラスと金属を使いこなす中里さんらしいユニークな表現です。

素敵なホイールですね。ガラス細工、メタルピース、チェーンなどで飾られたホイールを回転させて映像の変化を楽しみます。マグネットベアリングを使い滑らかに回転します。

ミラーシステムは変形テイパードの3ミラーシステムで、立体感のある映像です。

ブルーに満ちた色合いの中に輝きや味わいを見せてくれます。

中里さんのほか、9名の作家さんが新作発表をしています。いつもの新作発表に比べるとかなり少ない数ですが、見ごたえはあります。BKSウェブサイト内のUNVEILING のページ からどなたでも見ることができますので、ぜひ覗いてみてください。日本からは山見浩司さんの素敵な作品も出品されています。こちらも必見です。

BKSのウェブサイトは、会員ページ以外にも一般の方向けに、たくさんの万華鏡情報を提供しています。最近各国の言葉で表示されるようになりましたので、日本の国旗をクリックすると、日本語でも読むことができます。機械翻訳ですが、以前に比べて訳がこなれてきていますので、読みやすいと思います。漢字が間違っていたり、適切でない訳もたまにはあることを頭の片隅に置いて、万華鏡の情報源として使っていただければ幸いです。

 

 

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

偏光の新しい世界を開拓

2020-06-29 15:31:10 | 万華鏡ブログ

銀座のギャルリ―・ヴィヴァンさんで開催中の細野朝士さんの個展(7月3日まで)に伺いました。 まだまだコロナ警戒中ながら、細野さんが新しく創っている作品「幻」シリーズを見たくて、4か月ぶりの電車での外出となりました。 こんなに緊張して電車に乗ったことはありませんでしたが、銀座で下車してほっとし、ギャラリーまでの景色がとても新鮮に感じられました。

偏光の万華鏡作家として新境地を開拓する細野さん。お話を伺いながら、あれこれ拝見して改めて多彩な色模様に驚かされた次第です。 色の無い偏光素材をオイルセルの中で組み合わせ、色を演出しているとのこと。ほしい色を出すための試行錯誤を経て、ほぼ思ったような色が出せているそうです。 80パーセントぐらい偶然の賜物かと思っていたのは大きな間違えでした。細野さんによるとシンプルな「足し算」ということですが・・・

2ミラー4ポイントの映像は繰り返し映像が少ない分、単調になりがちという場合もよくありますが、細野さんの作品の4ポイントはとても面白くて、クールなデザイン画のようだと常々思っています。

色の変化の時間までも推し量って構成を考えているとのこと。 創り出された流れのある模様に圧倒されるばかりです。

次は角度の狭い3ミラーシステムから生み出される映像です。 角度が狭い分撮影は難しいのですが、雰囲気が伝わるでしょうか。くっきりと鮮やかな世界が視野いっぱいに広がります。

繊細な模様が素敵ですね。次は深い青の世界が展開されたところです。

妖しい色模様は、微妙に変化して、混ざり合います。拡大してみました。

本当はもっともっと多彩なうえ、色鮮やかで強いインパクトを感じる3ミラーですが、強い色調ばかりでなく、柔らかい水彩画のような色調もふと現れるところにも惹かれます。

いつまでも覗いていたくなる小さな2本の万華鏡。とてもシンプルなボディーの中に展開する思いがけない色の世界をお楽しみください。いただいたアーティストカードには Simple + Special と書かれていました。その通りです!

偏光の万華鏡のみを制作する作家さんはたぶんほかにはいらっしゃらないと思います。研究を重ねてその世界を広げてこられた細野さんの未来にはどんな万華鏡の色模様が生まれてくるのか、これからも楽しみにしたいです。

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コーキー・ウィークスさんの作品コレクション

2020-05-30 22:29:15 | 万華鏡ブログ

1年前の6月初旬に、アリゾナ州フェニックスで開催されたブリュースター・カレイドスコープソサエティのカレイドスコープ・エキスポに参加しました。今年も6月に予定されていましたが、残念ながらCovid 19の蔓延で開催を来年に延期することになりました。昨年の写真を見ていましたら, 念願だったNellie Blyを訪問したときのことが懐かしく思い起こされました。
アリゾナ州ジェロームにある万華鏡専門店Nellie Bly は、フェニックスから車で砂漠の中を2時間ほど走った山間にあり、以前は鉱山で栄えた歴史のある古びた町です。 その雰囲気を残したままリノベーションを施したレンガ作りの建物は、万華鏡店とその倉庫、コーキー・ウィークスさんの作品を集めたプライベート・ミュージアム、万華鏡の保存と振興のために活動するスタッフの部屋、ミーティングスペースなどから成る「万華鏡館」でした。

特に店主のメアリーさんが敬愛するコーキー・ウィークスさんの作品のコレクションが素晴らしいと聞いていましたので、ぜひ拝見したいとお願いして見せて頂きました。
コーキー・ウィークスさんは万華鏡ルネッサンスの初期のころから活動してきた作家さんで、創造力にあふれ、ユニークなアイディアをたくさんの作品に創り上げた作家さんです。

こんな風にたくさんの作品が並んでいます。多種、多作で有名な作家さんですから、コレクションのし甲斐もあるというものですね。

初期の頃は真鍮製のしっかりとした作品が主流でした。小さなペンダントタイプから大きなパーラータイプまで多彩なラインナップです。一つの筒に二つのミラーシステムを組み込むアイディアは彼女が最初に考案し、ブリュースターソサエティ―での「創造的作品賞」の最初の受賞者(1986)となりました。このことは万華鏡界にとって大きな一歩前進だったとコージー・ベーカーさんも書いています。

彼女の作品で目を惹く特徴のひとつが、両目でも覗ける大きな覗き口です。オブジェクトに向かって傾きをつけたミラーシステムからは、立体的な映像が大きく展開します。

外観の素材は様々ですが、次のような形の万華鏡は、私が最初に拝見したときに、なんとお洒落なデザインだろうと思ったことを思い出します。

広い覗き口、先端に向かって狭くなっている筒(内部のミラーシステムも)、筒の先端を斜めにカットしてオブジェクトを置く形、中のオブジェクトが美しく見えるオブジェクトセル、全体の姿の美しさ。
そしてこのようなミラーの組み方、カットの仕方から見えるのが、立体的な大きな映像です。

そして、そのままでも宝箱みたいなオブジェクトセルは、取り外しも簡単で交換も可能です。

ちなみに2006年に私がこのブログを始めて3日目にご紹介したのが、コーキー・ウィークスさんのこのデザインで異素材の作品でした。 https://blog.goo.ne.jp/kaleidoscopesjapan/d/20060210

もう一つ彼女らしさが出ているのが次の作品。ガラスと木の使い方が素敵な造形作品ですね。

やはり大きめな覗き口から覗きます。 オブジェクトは回転する木製のトレイに載った色とりどり、形も様々なビーズやガラスなどで、きれいなものが大好きな作家さんらしい色模様が展開します。こちらは少しユニークなミラーシステムです。

コーキー・ウィークスさんの作品が覗ききれないほどあるコレクションルーム。 オーナーのメアリー・ウィルスさんに感謝したい気持ちと、今でも色あせない魅力をもち続けるコーキー・ウィークスさんのカレイドスコープへの感動に包まれた一日でした。

 

 

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オブジェクトはリボンの束

2020-05-03 23:30:48 | 万華鏡ブログ

今日はとても独創的で、楽しくて、きれいな万華鏡をご紹介します。トーマス&キャロル・パレッティ―夫妻の「スローヨーヨー」です。以前にもご紹介したことがありますが、外出自粛の今、家でいろいろな万華鏡をゆっくりと覗きながら改めて感動し、再発見して嬉しくなった作品について、書いてみたいと思います。
「オブジェクト」とは、ミラーの筒の先に設置され、ミラーの筒を通してその反射が模様になる、「画像(映像)の素」になるものです。
ミラーの筒を通して見るのはいろいろなリボンやブレードをつなぎ合わせた”長い”オブジェクトです。この長いオブジェクトを伸ばしたり、巻き戻したりしながら見える万華鏡模様が、何とも言えずきれいで可愛らしいのです。

光沢があるリボン、透き通ったリボン、ブレードなどつなぎ合わせただけのカラフルな紐状のものが3本、絡み合い、重なり合っていろいろな組み合わせになります。

取っ手を回して伸ばしたり、巻き戻したりするので、ドライタイプでも映像変化が滑らかです。膨らみもあって、丸っこく、手毬のような雰囲気の映像が、様々な質感や色合いを見せて変化するのです。

ほかのパレッティ―作品と同じように、2ミラーシステムで、ミラーの筒の第3面には溝を彫りこんだ木材を配しています。これが模様の周りを飾ります。

オブジェクトは何でも良いのです。万華鏡を通して見たときに何がきれいで、何がわくわくするか、作家さんの技の見せどころですね。 パレッティ―夫妻はたくさんの楽しいアイディアを、高品質な作品に実現しているところが素晴らしいです。

 

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

カラディモスさんのオブジェクトとシンメトリーの技

2020-04-22 10:30:33 | 万華鏡ブログ

前回ペギー・キテルソンさんのガラスオブジェクトを取り上げました。 今日はカレイドスコープルネッサンスの初期から30年以上制作を続けるチャールズ・カラディモスさんのガラスオブジェクトを取り上げたいと思います。
彼の作品の基本は、オーソドックスな2ミラーシステムであり、ドライセル (オイルが入っていないので、オブジェクトが重力に従って動き、ぶつかりながら混ざり合います)にこだわって創っています。初期の頃はいろいろなミラーシステムに挑戦し、オイルセルにも挑戦したことがありましたが、今ではこのスタイルに落ち着いています。

独特のオブジェクトがよく表れているのがこの写真です。

まず、黒いオブジェクトです。 一般的に、カラフルな万華鏡映像の中で黒が積極的に使われることはあまりありませんでした。カラディモスさんの以前の作品ではかなり多かったのですが、最近の作品では少ないながらも、アクセントやデザインとして効果的に使われています。

それから粒々が見えていますが、これらは透明な、細いガラスの筒(アンプルといいます)に小さなガラスの粒をいれたものです。なので、小さな粒はそのガラスアンプルの中だけで動きます。粒がばらばらになって見える模様とはまた別の面白さがありますね。

カラディモスさんの作品では、オブジェクトセルの背面(筒を持った時、一番奥の部分)から光を取り入れます。これも特徴の一つです。 背面のガラスは半透明で光を通すガラスを使っています。そのガラスの色模様や質感が独特なものは映りこんで、画像に変化を与えます。この写真の作品ではすりガラスを使っています。

ひとつの万華鏡の模様が、覗いた時に視野の中心にあって、全方向にシンメトリーが整っていると心地よいと感じます。そのためにカラディモスさんは「逆テイパードの2ミラーシステム」を取り入れています。「テイパード」とは先が細い状態を言うことばですが、逆になると、ミラーの幅が上と下で幅が違い、細い方(覗き口側)から太い方(オブジェクトセルに近い方)へ組まれていることを示します。一枚のミラーは縦長の台形になっています。長さや幅のバランスも、一番きれいに見えるように作家が決めます。同じ幅のミラーを組んだ時と比べて、覗いた時に中心がずれにくく、しかも大きな画像を見ることができます。

大きく見える分、ミラーを組んだ線や傷なども見えやすくなりますので、ミラー組みの技術が必要とされます。

カラディモスさんのこだわりは、正確なシンメトリー、回すたびにガラリと表情が変わる模様、複雑で組み合わせの面白さを生み出すオブジェクトの数々、黒い世界の中にくっきりと見える曼荼羅模様。 飽きることのない一期一会の連続です。
外観は、今までステンドガラスを窯でスランピングし、はんだ付けをして筒を作ってきましたが、最近、吹きガラスの筒で作品を制作したそうです。ウェブサイトで拝見しましたが、彼の新しい方向になるかもしれません。楽しみです。

 

 

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オブジェクトは小さな造形作品

2020-04-13 21:54:11 | 万華鏡ブログ

このオブジェクトセルを見ただけで、ミラーの筒を通してどんな映像が展開するのだろうとわくわくしませんか? 
ペギー・キテルソンさんのオブジェクトセルはいつも本当に美しく、オイルの中で流れるような色模様の変化にうっとりします。アメリカでカレイドスコープルネッサンスの立役者であり、万華鏡のファーストレディと呼ばれたコージー・ベーカーさんも注目して、2002年、万華鏡本に彼女の個性的なオブジェクトをテーマの一つとして取り上げました。手作りのガラスオブジェクトは、バーナーワークによって伸ばしたり、ねじったり、色を重ねたりして一つ一つ作られます。それが作家さんごとに違っていて、万華鏡の個性になります。このセルのガラスオブジェクトはたくさんの花の姿をしています。ひとつひとつがペギーさんによるガラスの造形作品になっています。

中心の7ポイントの模様を映し出す2ミラーシステムですが、ミラーの第3面にダイクロイックガラスを使っていて、ガラスオブジェクトの色を映しこみながら、中心模様の周囲を彩ります。(注:ダイクロイックガラスとは、ガラスの表面に金属を蒸着させて、独特の反射や輝きのあるガラスですが、見る方向によって色が違って見える特徴があります。後でご紹介するこの万華鏡の本体にも、使われています。)

一つ一つの花がミラーシステムの枠で切り取られ、分割されたまま、反射により別の模様になっていきます。変化は持続的で、覗いている目の前でどんどん変化していきます。オイルの濃度によって、動くスピードも違ってきますので、その動き方も作家さんの個性の一つです。

このオブジェクトセルの魅力は花の造形だけでなく、ガラスの種類にもあります。輝きのあるガラスのオブジェクトによって、映像に深みや趣きが添えられていると思います。

もちろん万華鏡では、ランダムなかけらが思いがけず美しい映像になることも、混沌が秩序に変わることも私たちは知っています。そのうえで、作家さんの想いをオブジェクトひとつひとつに込めるというチャレンジも素晴らしいなあと思うのです。

このセルがついているのが、下の写真の万華鏡です。 着物が広げて飾られているようなデザインで、木枠の中で傾けて上部の覗き口から覗きます。

2017年京都で開催された万華鏡世界大会でも披露された作品と同じテーマですが、着物の模様も、オブジェクトセルの中身も一点ずつ違っています。久保田一竹さんの辻が花着物の連作「光響」に魅せられたペギーさんが大切に作り続けているシリーズなのです。

 

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする