今日はブリュースター・カレイドスコープソサエティー(BKS)について書きます。 この組織は万華鏡愛好者からなる国際的なグループです。
創立は1985年。 創立者はコージー・ベーカーさんで、万華鏡ルネッサンスの立役者です。 ルネッサンスといえば、14-16世紀のヨーロッパでギリシャ、ローマの古典文化の復興を目指した文化の流れですが、そこから文芸、宗教などの復興、再生を意味する言葉として使われています。
万華鏡が発明されたのが1816年のこと。その後一大ブームを引き起こしたものの、ブームは去り、子供のおもちゃとして作られて続けてきた万華鏡でしたが、1970年代に一つの転機を迎えます。 ブリュースター卿が発明したころの作品を見直すことから、現代の素材で万華鏡を創る動きが出てきたのです。
その頃、万華鏡の面白さ、万華鏡の持つ力に魅せられた一人の女性が居ました。 彼女は万華鏡を創る人を訪ね、万華鏡を売る店を訪ね、万華鏡を集める人を訪ね歩きました。 そうやって集めた情報から、万華鏡の本を書き上げ、世界で最初の万華鏡展をアメリカで開催したのです。 現代の万華鏡作家が生まれ出てきたその流れを「万華鏡ルネッサンス」と呼び、本のタイトルにもなりました。
彼女がつないだ万華鏡愛好者のネットワークが、ブリュースター・ソサエティーという団体になったのです。 その活動の使命は、万華鏡というユニークなアートを広め、後世に伝えていくことを目的とし、アーティスト、コレクター、そしてディーラーのためのフォーラム(交流の場)を提供することです。
リーダーであったベーカーさんは亡くなりましたが、その意思を引き継ぎ、万華鏡を愛する人たちの活動は続いています。 2013年末の時点14カ国、410名の会員がいます。 日本人は6.5%ほどですが、アメリカに次いで2番目です。 作家(万華鏡を創る人)、コレクター(万華鏡を買う人、集める人)、ディーラー(万華鏡を売る人)の3つの立場の会員が一堂に集まる、大変ユニークな団体でもあります。
この組織の一番大きなミーティングが、年に1回開かれるコンベンションです。 アメリカの様々な場所で開催されるコンベンションは、最新の万華鏡を見る機会でもあり、また多くの万華鏡作家から直接話を聞くことのできる貴重な機会です。作家の人は、自分の作品をコレクターの方に見てもらい、直接その反応を見ることができるのです。 ディーラーの立場では、多くの作家の作品を見て、何を仕入れるか考え、また店に来るお客さんの意見などを作家さんに伝えたりすることができます。 コレクターの方も直接作家さんと話をしながら、作品を選ぶことができます。
一流の作家さんたちの技を垣間見ることのできるワークショップがあったり、作家さんが準備した特別のキットで、自分だけの万華鏡を製作する機会もあります。
何より魅力的なのは 同じ興味、喜びをシェアする人々との交流です。 言葉の壁、文化の壁は、実際は乗り越えるべき壁ではなく、それぞれの国民の個性のようなものと理解されている気がします。そして一人一人は万華鏡のオブジェクトで、BKSはそのオブジェクトが生み出す美しい万華鏡模様だとベーカーさんも語っていた記憶があります。
このようなグループがあることをもっと多くの人に知ってもらいたい、そしてメンバーとして万華鏡の魅力を一緒に分かち合ってくれる人を増やしたい。 いつか、日本でもこのグループの集まりが開催されたらどんなに素敵だろうと思うこの頃です。
万華鏡映像は、スティーブ&ペギー・キテルソン夫妻の「テキーラ・サンライズ」です。