オーロラというのは万華鏡のテーマとして時折登場してきます。空に輝く神秘的な光のショーが、万華鏡に相通ずるものがあるのでしょう。本でしか見たことのなかったエイミー・ナトコという作家の「ノーザンライツ(オーロラのこと)」という作品をコージー・ベーカーコレクションに見つけました。1980年代中頃から斬新なステンドガラス製の万華鏡を作っていた作家さんですが、もう万華鏡製作をしていないそうです。この作品は1990年頃に製作された10個の限定版です。ガラスと木を素材とし、先端部に取り付けられた、液体とオブジェクト入りの球体を2ミラーシステムの筒を通して見る万華鏡で、10ポイントの映像を見せます。残念ながら高い場所にあって覗くことが出来ませんでしたが、その姿の美しさにとても心惹かれました。夜空に輝くオーロラのカーテンを 無色ながら独特の表情を持つガラスのひだで表現しています。とても素敵でしたので、ぜひご紹介したいと思いました。この作品のほかにも「ファウンテン・オブ・ライト」という美しい作品がありますが、繊細で華麗なガラスの花々がたくさん飾られたステンドガラスの噴水とテレイドスコープを組み合わせ、夢のある世界を演出しています。カレイドスコープ・ルネッサンスの先駆者として他の作家にも影響を及ぼした彼女ですが、その突き動かされるような制作意欲は必ずしも長く続かなかったようです。
この大きなプロペラの飛行機は、「ステンドグラス・オリジナルス」工房のデブラ・デービスの作品です。回転するプロペラがオブジェクトになっています。彼女は独学で万華鏡製作を学び、数々の夢のある作品を作ってきました。この飛行機は初期の頃から手がけている乗り物シリーズのひとつで、ほかにもスクールバス(アメリカは黄色が多い!)、汽車、電車、パトロールカー、郵便配達車、消防自動車、自家用車などがあります。うっかりすると素人っぽい印象になりがちなテーマの作品ですが、そこはやはり職人芸。ガラスの選び方や組み立ての確かさ、バランスのとれた構成、きれいな半田付けなど、年季が入っています。そしてどの作品もきれいに組まれたミラーシステムを通して、ドライセル、マーブル、ホイールなどいろいろなオブジェクトタイプを楽しむことができます。光学レンズを取り入れてくっきりとした映像を映し出します。ずらりと並んだ乗り物を見るのも楽しく、また手に取って覗いた人が微笑みを浮かべずにはいられない万華鏡です。万華鏡を覗くときのわくわくした気持ち、そして覗いての驚きこそが万華鏡の魅力と信じている彼女の作品には、人を幸せにしたいという作家の暖かい思いが込められています。このような万華鏡を覗くと、大人になっても心のどこかに残っている子供の頃の自分に回帰していくような気がします。 このほかにもクレヨンのセット、花束、ゴルフクラブのセット、ビジネスマンのカバン、カメラ、アーティストのパレット、化粧品セットなどをステンドガラスで表現し、ユニークな万華鏡に仕立てています。また次の機会にご紹介したいと思います。
大きな覗き口からとてもユニークな3D映像が見えます。万華鏡の内部に新たな広がり、奥行きを作り出しているのです。ミラーのマジックでしょうか。これはマーク・ティクル&スーザン・ランドグレン夫妻の「ダーウィン」という限定版作品で、昨年秋の20周年記念万華鏡展、万華鏡部門で第1位に輝きました。奥の作品は「ブルネレスキ」という作品です。進化論のダーウィンやフィレンツェの建築家の名前がタイトルとなっています。比較的若い作家さんですがしっかりとした構想と独自の製作技術を持ち、自然への憧憬と「神聖な幾何学」の概念を盛り込んだ作品を創っています。その映像は立体感があり、不思議なカーブや熱気球のようなふくらみやドーナッツのような輪だったりします。彼らはザ・ブリュースター・カレイドスコープソサエティーでも数々の受賞歴があり、作品は高い評価を得ています。心に感動と驚きをもたらす万華鏡だと思います。
ユニークなガラスの模様はスーザンによって、リバースペインティングと呼ばれる技法で描かれたもので、他の作家には見られない独特の表現です。マークはイギリス人ですが、今ではスーザンと出会ったノースキャロライナで工房を構え、新たな境地を目指して万華鏡製作に励んでいます。マークは「鏡と光と色が作り出す映像の可能性は無限にある。工房に入って万華鏡に向き合い、新たな発見に驚かない日はない。そこに強く引かれる」と言っています。オブジェクトには手作りのバーナーワークによるガラス細工を使っていますが、細いガラスパイプの中に液体や極小のガラス片を閉じ込めるガラスアンプルを作る技術も持っています。
ユニークなガラスの模様はスーザンによって、リバースペインティングと呼ばれる技法で描かれたもので、他の作家には見られない独特の表現です。マークはイギリス人ですが、今ではスーザンと出会ったノースキャロライナで工房を構え、新たな境地を目指して万華鏡製作に励んでいます。マークは「鏡と光と色が作り出す映像の可能性は無限にある。工房に入って万華鏡に向き合い、新たな発見に驚かない日はない。そこに強く引かれる」と言っています。オブジェクトには手作りのバーナーワークによるガラス細工を使っていますが、細いガラスパイプの中に液体や極小のガラス片を閉じ込めるガラスアンプルを作る技術も持っています。
いろいろな素材の万華鏡をご紹介していますが、今回はセラミックを素材とするものです。アメリカのケン&ドリー・ウィルホイット夫妻の作品「squiggle」です。名前の由来は黒いベースにデザインされたくねくねとしたラインのことです。ウィルホイット夫妻は会社勤めの傍ら趣味で始めた万華鏡製作の道を深め、作家としての第2の人生を歩むことに決め、アーティストとしてすでに10年以上のキャリアを持っています。その間真鍮とアルミを素材としたシンプルでスマートな形の万華鏡を専門に作って来ましたが、2年ほど前から新しくセラミックを素材とするシリーズを次々に発表してきました。セラミックの万華鏡は軽くて持ち易く、セルの回転が大変スムーズです。オブジェクトはガラスやポリマークレイの細工、ビーズなど質感の違うものをバランス良く使い、正確なミラーシステムを通してみる映像は外観の印象を裏切らない美しい映像です。
ウィルホイット夫妻はとても明るく優しい方たちです。ドリーさんのペンギン好きはブリュースター・カレイドスコープソサエティーの中で知らない人はいないほど有名で、ウッドランドデザイン工房のキテルソン夫妻が彼女のためにペンギンをデザインした限定版の万華鏡を創ったほどです。
ウィルホイット夫妻はとても明るく優しい方たちです。ドリーさんのペンギン好きはブリュースター・カレイドスコープソサエティーの中で知らない人はいないほど有名で、ウッドランドデザイン工房のキテルソン夫妻が彼女のためにペンギンをデザインした限定版の万華鏡を創ったほどです。
3月24日の日経新聞文化欄に「万華鏡 心いやす小宇宙」というタイトルで依田満・百合子夫妻の記事が載っていましたが、お気づきになられたでしょうか。依田ご夫妻は日本でもアメリカでも高い評価を得ている作家さんです。この記事では万華鏡との出会いから、万華鏡制作にあたっての思いや願い、そして悲しい思い出や楽しい思い出などに触れておられ、改めてご夫妻の作品の持つ意味を感じることができました。
ここにご紹介するのは2005年ザ・ブリュースター・カレイドスコープソサエティーのコンベンションでピープルズ・チョイス賞を受賞した「Time-時-」という作品です。透明な八角形の本体の中に大きなミラーシステムが浮かぶようにセットされていて、中の美しい映像が目に迫ってきます。すごいのはこの万華鏡の仕組みです。「レバーを回すとオルゴールの音楽と共に三角錐の先端に据えたオブジェクトケースが回り、鏡が美しい世界を映し出す。円形の金属板で作った和時計と西洋時計が時を刻み、連動してオブジェクトを照らす光も朝日を表すブルーから夕日のオレンジなどへ変化する」と書かれているように精巧な仕組みから全て考案して、このようなトータルな万華鏡の世界を構築しているのです。このような大作を毎年発表し、しかも数々の受賞の栄誉に輝くということは、すばらしいの一言ですが、本当に大変な努力をなさっているからだと思います。
私自身、依田さんご夫妻の作り出す映像の美しさに魅せられてきましたが、このブログのテーマになっている「ガラス色の幸せ」をいつも感じさせてくださる作家さんです。
ここにご紹介するのは2005年ザ・ブリュースター・カレイドスコープソサエティーのコンベンションでピープルズ・チョイス賞を受賞した「Time-時-」という作品です。透明な八角形の本体の中に大きなミラーシステムが浮かぶようにセットされていて、中の美しい映像が目に迫ってきます。すごいのはこの万華鏡の仕組みです。「レバーを回すとオルゴールの音楽と共に三角錐の先端に据えたオブジェクトケースが回り、鏡が美しい世界を映し出す。円形の金属板で作った和時計と西洋時計が時を刻み、連動してオブジェクトを照らす光も朝日を表すブルーから夕日のオレンジなどへ変化する」と書かれているように精巧な仕組みから全て考案して、このようなトータルな万華鏡の世界を構築しているのです。このような大作を毎年発表し、しかも数々の受賞の栄誉に輝くということは、すばらしいの一言ですが、本当に大変な努力をなさっているからだと思います。
私自身、依田さんご夫妻の作り出す映像の美しさに魅せられてきましたが、このブログのテーマになっている「ガラス色の幸せ」をいつも感じさせてくださる作家さんです。
アメリカで吹きガラスの万華鏡を創る作家、デヴィッド&デビー・ローゼンフェルトの作品をご紹介します。ここにあるのはハンドヘルド型で、手に持った時にちょうど良い重量感と手に馴染みやすい持ち易さのある作品です。外観もご覧のとおり大変美しく、色の混ざり具合など微妙に違うので、シリーズ名はありますが、まったく同じものはありません。吹きガラスの万華鏡作家はアメリカではこの作家夫婦、日本では前にご紹介した佐藤元洋さんの他にあまりいないようです。
これらの万華鏡の先端についているのが、彼らのトレードマークである「リキッドオーブ」です。これはマーブルの一種ですが、通常のマーブルとは大きく違った特徴があります。ガラスの球体は中が空になっていて、液体とバーナーワークによるガラス細工が入っているのです。写真右手に見える大小の透明な球体がリキッドオーブそのものです。透明感があり、それだけ飾ってもきれいなリキッドオーブですが、万華鏡を通して見るとゆらゆらとオブジェクトが動き、光を通してきらきらと輝くのです。筒の先端にこのリキッドオーブが固定されているので、筒を回して映像の変化を楽しみます。ローゼンフェルト夫妻はマーブルやリキッドオーブをオブジェクトとする万華鏡にこだわって作っていますが、タイプはハンドヘルド型のほか、パーラー型もあります。
「私たちは万華鏡に形と色を与える。そのお返しに万華鏡は私たちにバランスと美を与えてくれる」そんな思いを持ちながら汗だくになってガラスを吹いているデヴィッドとデビーです。デヴィッドはアーティストらしい風貌と雰囲気で最初は近寄りがたい感じでしたが、実際は子煩悩な暖かい人でした。
これらの万華鏡の先端についているのが、彼らのトレードマークである「リキッドオーブ」です。これはマーブルの一種ですが、通常のマーブルとは大きく違った特徴があります。ガラスの球体は中が空になっていて、液体とバーナーワークによるガラス細工が入っているのです。写真右手に見える大小の透明な球体がリキッドオーブそのものです。透明感があり、それだけ飾ってもきれいなリキッドオーブですが、万華鏡を通して見るとゆらゆらとオブジェクトが動き、光を通してきらきらと輝くのです。筒の先端にこのリキッドオーブが固定されているので、筒を回して映像の変化を楽しみます。ローゼンフェルト夫妻はマーブルやリキッドオーブをオブジェクトとする万華鏡にこだわって作っていますが、タイプはハンドヘルド型のほか、パーラー型もあります。
「私たちは万華鏡に形と色を与える。そのお返しに万華鏡は私たちにバランスと美を与えてくれる」そんな思いを持ちながら汗だくになってガラスを吹いているデヴィッドとデビーです。デヴィッドはアーティストらしい風貌と雰囲気で最初は近寄りがたい感じでしたが、実際は子煩悩な暖かい人でした。
マーブルスコープと呼ばれる万華鏡をご存知でしょうか? マーブルと呼ばれるガラスの玉(アーティスト手作りのビー玉の大きめのものです)をミラーシステムの先端に置き、手で回しながら映像の変化を楽しみます。マーブルというのはもともと大理石(状のもの)という意味とビー玉のようなガラス状の球体、おはじきなどを意味する言葉です。万華鏡では後者のマーブルをオブジェクトとして使います。マーブルは昔からさまざまな素材で作られ、コレクションをしたり、ゲームなどで楽しまれてきた歴史を持っています。アメリカにはたくさんのマーブルコレクターがいて、またマーブルを作るアーティストもいます。 マーブルを作るのは主に吹きガラスのアーティストで、それぞれの作風があります。その上、球体として見た場合の色合いや模様と、万華鏡の中に映りこむ模様は、まったく違いますので、とても楽しめます。写真の万華鏡のように大きさの異なるものでも入れ替えることができるようになっているとまた楽しみが広がります。どちらかというと透明感のあるランダムな模様のマーブルが覗いてみたときに変化も大きく、意外なデザインに変身するので面白みがあります。全方位に回転することができること、好きなところで止めておくことができることも特徴です。
この女性らしい可愛らしさのある万華鏡はスー・ロスの作品です。2005年の20周年記念万華鏡展に出品された作品です。。スー・ロスは20年前の1985年にも出品していた作家のひとりで今も制作に励んでいます。ロマンチックな雰囲気の可愛らしさが作品の個性となっています。20年経った今でもそんな雰囲気を持つ女性ですが、自分で部屋をデザインして内装を手がけたり、アトリエを改築してしまう力強さと行動力を持ち合わせる方です。絵画、ガラス工芸、刺繍など多彩な表現技術と、多用な素材を組み合わせて創る作品はほとんどが一点もので、丁寧な手作りです。ジュエリーを入れ込んだデザインなど、女性らしい作品が多いです。この万華鏡の筒に描かれた絵も彼女自身の手になるものです。リボンやビーズ細工を添え、クリスタルガラスを吊り下げてきれいな姿ですね。内部も淡い色合いのガラスオブジェクトやビーズがやわらかい映像となって展開します。
(このブログは明日からお休みです。次回は25日からの予定です。)
(このブログは明日からお休みです。次回は25日からの予定です。)
気持ちよさそうに横たわる虎の様子がユーモラスに表現されていますね。ポリマークレイという粘土で筒にデザインをしています。最近万華鏡にも使われるようになった素材で、どんな形にもなり、いろいろな色や質感を表現できるところが面白いところです。多少でこぼこして持ったときに手に馴染みにくいのが難点ですが、先端部がスムーズに回転する仕組みになっていれば、問題はありません。比較的新しい作家ジャクリーヌ・スミスの作品"Tiger Tale"です。作品が出来上がった時にはきっと愛着がわいて、ペットのようにそばに置いておきたくなるのではないでしょうか。
ポリマークレイは筒のデザインに使われるだけではなく、セルのオブジェクトとしても、とても面白い素材です。すでに何人かの作家がポリマークレイの小さな造形をオブジェクトとして使っています。カラフルな色合いをどのようにも組み合わせられ、形も思うままなので、楽しく、色鮮やかなポップな印象の映像が多いようです。ガラスとは違って透明感はないので、正面から光を取り入れるタイプの万華鏡には向きません。黒い背景でセルの横から光が入るタイプですと、黒に浮かび上がる映像が鮮やかです。ドライタイプとオイルタイプのどちらにも使えますが、ドライの場合はオブジェクトがぶつかり合って擦れることがあります。オイルタイプでは、デヴィッド・コリアーの作品が良く知られています。
ポリマークレイは筒のデザインに使われるだけではなく、セルのオブジェクトとしても、とても面白い素材です。すでに何人かの作家がポリマークレイの小さな造形をオブジェクトとして使っています。カラフルな色合いをどのようにも組み合わせられ、形も思うままなので、楽しく、色鮮やかなポップな印象の映像が多いようです。ガラスとは違って透明感はないので、正面から光を取り入れるタイプの万華鏡には向きません。黒い背景でセルの横から光が入るタイプですと、黒に浮かび上がる映像が鮮やかです。ドライタイプとオイルタイプのどちらにも使えますが、ドライの場合はオブジェクトがぶつかり合って擦れることがあります。オイルタイプでは、デヴィッド・コリアーの作品が良く知られています。
カレイドスコープルネッサンスという大きなうねりとなって万華鏡が新たなアートとして復活したのはアメリカでした。作家の数も圧倒的に多いのがアメリカですが、ザ・ブリュースター・カレイドスコープソサエティに属しながら独自の万華鏡を創りつづけているオーストラリアの作家をご紹介します。この作品は「アルカナカレイドスコープ」工房のロバート・クック&ジョスリン・テーによるもので、コージー・ベーカーを称えて創られた"Renascent"という作品です。全て手作りで、細部までのこだわりが職人芸と呼ぶにふさわしい万華鏡です。彼らの万華鏡のスタイルは金属による重厚感のある本体、パティーナと呼ばれる金属の仕上げ、ギアを多用したメカニックな作動、メノウやさまざまな自然石が組み込まれたホイール、テーマに沿ったこだわりの装飾が特徴です。よく見ると台座のところに12個のミニチュアの万華鏡や光学機器が飾られています。これらは取り外して、覗くこともできるそうです。パティーナというのは薬品を使って金属を酸化させ、きれいな色を出す仕上げ技術ですが、ロバートはさまざまな色合いを生み出す高い技術を持っています。この万華鏡もミラーシステムの工夫があります。4面のテイパードミラーシステム(鏡の幅が先端部に行くにしたがって細くなって、組み合わされているもの)をメインに、さらにサブシステムとしてミラーが仕組まれた独特のものだそうです。正直なところ、映像を見ただけでは仕組みがわかりませんでしたが立体的に目に飛び込んでくる映像は大きく印象的でした。