前回ペギー・キテルソンさんのガラスオブジェクトを取り上げました。 今日はカレイドスコープルネッサンスの初期から30年以上制作を続けるチャールズ・カラディモスさんのガラスオブジェクトを取り上げたいと思います。
彼の作品の基本は、オーソドックスな2ミラーシステムであり、ドライセル (オイルが入っていないので、オブジェクトが重力に従って動き、ぶつかりながら混ざり合います)にこだわって創っています。初期の頃はいろいろなミラーシステムに挑戦し、オイルセルにも挑戦したことがありましたが、今ではこのスタイルに落ち着いています。
独特のオブジェクトがよく表れているのがこの写真です。
まず、黒いオブジェクトです。 一般的に、カラフルな万華鏡映像の中で黒が積極的に使われることはあまりありませんでした。カラディモスさんの以前の作品ではかなり多かったのですが、最近の作品では少ないながらも、アクセントやデザインとして効果的に使われています。
それから粒々が見えていますが、これらは透明な、細いガラスの筒(アンプルといいます)に小さなガラスの粒をいれたものです。なので、小さな粒はそのガラスアンプルの中だけで動きます。粒がばらばらになって見える模様とはまた別の面白さがありますね。
カラディモスさんの作品では、オブジェクトセルの背面(筒を持った時、一番奥の部分)から光を取り入れます。これも特徴の一つです。 背面のガラスは半透明で光を通すガラスを使っています。そのガラスの色模様や質感が独特なものは映りこんで、画像に変化を与えます。この写真の作品ではすりガラスを使っています。
ひとつの万華鏡の模様が、覗いた時に視野の中心にあって、全方向にシンメトリーが整っていると心地よいと感じます。そのためにカラディモスさんは「逆テイパードの2ミラーシステム」を取り入れています。「テイパード」とは先が細い状態を言うことばですが、逆になると、ミラーの幅が上と下で幅が違い、細い方(覗き口側)から太い方(オブジェクトセルに近い方)へ組まれていることを示します。一枚のミラーは縦長の台形になっています。長さや幅のバランスも、一番きれいに見えるように作家が決めます。同じ幅のミラーを組んだ時と比べて、覗いた時に中心がずれにくく、しかも大きな画像を見ることができます。
大きく見える分、ミラーを組んだ線や傷なども見えやすくなりますので、ミラー組みの技術が必要とされます。
カラディモスさんのこだわりは、正確なシンメトリー、回すたびにガラリと表情が変わる模様、複雑で組み合わせの面白さを生み出すオブジェクトの数々、黒い世界の中にくっきりと見える曼荼羅模様。 飽きることのない一期一会の連続です。
外観は、今までステンドガラスを窯でスランピングし、はんだ付けをして筒を作ってきましたが、最近、吹きガラスの筒で作品を制作したそうです。ウェブサイトで拝見しましたが、彼の新しい方向になるかもしれません。楽しみです。