万華鏡の楽しみ ガラス色の幸せ

万華鏡の魅力、ガラス色の幸せを伝えたいと思います

カラディモスさんのオブジェクトとシンメトリーの技

2020-04-22 10:30:33 | 万華鏡ブログ

前回ペギー・キテルソンさんのガラスオブジェクトを取り上げました。 今日はカレイドスコープルネッサンスの初期から30年以上制作を続けるチャールズ・カラディモスさんのガラスオブジェクトを取り上げたいと思います。
彼の作品の基本は、オーソドックスな2ミラーシステムであり、ドライセル (オイルが入っていないので、オブジェクトが重力に従って動き、ぶつかりながら混ざり合います)にこだわって創っています。初期の頃はいろいろなミラーシステムに挑戦し、オイルセルにも挑戦したことがありましたが、今ではこのスタイルに落ち着いています。

独特のオブジェクトがよく表れているのがこの写真です。

まず、黒いオブジェクトです。 一般的に、カラフルな万華鏡映像の中で黒が積極的に使われることはあまりありませんでした。カラディモスさんの以前の作品ではかなり多かったのですが、最近の作品では少ないながらも、アクセントやデザインとして効果的に使われています。

それから粒々が見えていますが、これらは透明な、細いガラスの筒(アンプルといいます)に小さなガラスの粒をいれたものです。なので、小さな粒はそのガラスアンプルの中だけで動きます。粒がばらばらになって見える模様とはまた別の面白さがありますね。

カラディモスさんの作品では、オブジェクトセルの背面(筒を持った時、一番奥の部分)から光を取り入れます。これも特徴の一つです。 背面のガラスは半透明で光を通すガラスを使っています。そのガラスの色模様や質感が独特なものは映りこんで、画像に変化を与えます。この写真の作品ではすりガラスを使っています。

ひとつの万華鏡の模様が、覗いた時に視野の中心にあって、全方向にシンメトリーが整っていると心地よいと感じます。そのためにカラディモスさんは「逆テイパードの2ミラーシステム」を取り入れています。「テイパード」とは先が細い状態を言うことばですが、逆になると、ミラーの幅が上と下で幅が違い、細い方(覗き口側)から太い方(オブジェクトセルに近い方)へ組まれていることを示します。一枚のミラーは縦長の台形になっています。長さや幅のバランスも、一番きれいに見えるように作家が決めます。同じ幅のミラーを組んだ時と比べて、覗いた時に中心がずれにくく、しかも大きな画像を見ることができます。

大きく見える分、ミラーを組んだ線や傷なども見えやすくなりますので、ミラー組みの技術が必要とされます。

カラディモスさんのこだわりは、正確なシンメトリー、回すたびにガラリと表情が変わる模様、複雑で組み合わせの面白さを生み出すオブジェクトの数々、黒い世界の中にくっきりと見える曼荼羅模様。 飽きることのない一期一会の連続です。
外観は、今までステンドガラスを窯でスランピングし、はんだ付けをして筒を作ってきましたが、最近、吹きガラスの筒で作品を制作したそうです。ウェブサイトで拝見しましたが、彼の新しい方向になるかもしれません。楽しみです。

 

 

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オブジェクトは小さな造形作品

2020-04-13 21:54:11 | 万華鏡ブログ

このオブジェクトセルを見ただけで、ミラーの筒を通してどんな映像が展開するのだろうとわくわくしませんか? 
ペギー・キテルソンさんのオブジェクトセルはいつも本当に美しく、オイルの中で流れるような色模様の変化にうっとりします。アメリカでカレイドスコープルネッサンスの立役者であり、万華鏡のファーストレディと呼ばれたコージー・ベーカーさんも注目して、2002年、万華鏡本に彼女の個性的なオブジェクトをテーマの一つとして取り上げました。手作りのガラスオブジェクトは、バーナーワークによって伸ばしたり、ねじったり、色を重ねたりして一つ一つ作られます。それが作家さんごとに違っていて、万華鏡の個性になります。このセルのガラスオブジェクトはたくさんの花の姿をしています。ひとつひとつがペギーさんによるガラスの造形作品になっています。

中心の7ポイントの模様を映し出す2ミラーシステムですが、ミラーの第3面にダイクロイックガラスを使っていて、ガラスオブジェクトの色を映しこみながら、中心模様の周囲を彩ります。(注:ダイクロイックガラスとは、ガラスの表面に金属を蒸着させて、独特の反射や輝きのあるガラスですが、見る方向によって色が違って見える特徴があります。後でご紹介するこの万華鏡の本体にも、使われています。)

一つ一つの花がミラーシステムの枠で切り取られ、分割されたまま、反射により別の模様になっていきます。変化は持続的で、覗いている目の前でどんどん変化していきます。オイルの濃度によって、動くスピードも違ってきますので、その動き方も作家さんの個性の一つです。

このオブジェクトセルの魅力は花の造形だけでなく、ガラスの種類にもあります。輝きのあるガラスのオブジェクトによって、映像に深みや趣きが添えられていると思います。

もちろん万華鏡では、ランダムなかけらが思いがけず美しい映像になることも、混沌が秩序に変わることも私たちは知っています。そのうえで、作家さんの想いをオブジェクトひとつひとつに込めるというチャレンジも素晴らしいなあと思うのです。

このセルがついているのが、下の写真の万華鏡です。 着物が広げて飾られているようなデザインで、木枠の中で傾けて上部の覗き口から覗きます。

2017年京都で開催された万華鏡世界大会でも披露された作品と同じテーマですが、着物の模様も、オブジェクトセルの中身も一点ずつ違っています。久保田一竹さんの辻が花着物の連作「光響」に魅せられたペギーさんが大切に作り続けているシリーズなのです。

 

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