いろいろな万華鏡が生まれてくる中、2ミラー、ドライセルの作品に基本を感じる人も多いのではないでしょうか。
ドライセル独特の、オブジェクトがシャカシャカ動く音の心地よさ。そして、セルの回転を止めたときの静止した画像は一瞬時の流れを止めて、覗く人の目を惹きます。どこで止めるかは覗く人次第。 完璧なシンメトリーはデジタルアートで生み出すことができるかもしれませんが、作家の創る作品との対話ができるのが、万華鏡を覗く楽しみですね。
万華鏡の古典的なスタイルにこだわるチャールズ・カラディモスさんは、シンメトリーを生み出すために、ミラーシステムに工夫をして,アイホールから覗いた真正面に、曼荼羅画像の中心が来るようにしています。バランスのとれた画像表現には、秩序やリズム感、ハーモニー、そして安心感などがあり、覗く人の心や感情に沿うのかなと思います。
彼の作品の特徴のひとつにオブジェクトがあります。 いろいろなタイプを自ら加工して、独自の表現をしてきました。今までにもご紹介してきましたが、黒いオブジェクトも、ほかの作家さんには少ないかなと感じます。ランダムに動くオブジェクトの見せ方は作家さんの個性の現れるところですね。
長い作家歴の中で黒いオブジェクトのあり方も変わってきましたが、最近の作品では味を引き締める調味料みたいに、見た目は控えめだけど映像の魅力を生み出すポイントを押さえていると感じます。
そして、彼の作品には欠かせないドライアンプルというオブジェクト。 透明なガラスアンプルの中にガラスの粒を入れています。小さな粒の並びとかすかな動きが、静止する2次元の映像にリズム感や奥行き感を出すと思います。
黒いオブジェクトとドライアンプルによるカラディモスさんらしさを感じていただければと思い、大きめの写真にしました。
2枚目から4枚目の画像は、Spirit of Murano という作品のものです。ボディーのガラスも黒とさまざまな色が混ざり合うユニークな表情です。(1枚目はConu Scopeです)
カラディモスさんの作品は、シリーズごとの限定版がほとんどです。 万華鏡展などで見る機会がありましたら、ぜひ手に取って見てください。彼の卓越した画像と、アーティスト魂を感じることができると思います。