万華鏡の楽しみ ガラス色の幸せ

万華鏡の魅力、ガラス色の幸せを伝えたいと思います

ドラゴンの隠れ家

2019-07-31 15:16:59 | 万華鏡ブログ

カレイドスコープ・エキスポで新作発表された作品の中でも、一番凝っていると思ったのが、スティーブン・グレイさんの「Dragon's Liar」です。上の写真だけでもいったいどんな万華鏡なんだろうと思わせますね。彼の言葉を借りれば、ドラゴンの心と体に入り込む感覚だそうです。
外観は複雑な機械のような作りです。 木材、金属、ガラス、アクリル、そしてギアやノブなどが組み合わされています。これだけたくさんの部品を組み合わせる設計もすごいけれど、さらにその部品を美しく創り上げるエネルギーも能力もすごいですね。メカの面白さとドラゴンのファンタジーを表現するために、金属部分の装飾デザインにも凝りました。もちろん木工部分の仕上げも素晴らしいです。

こちらからは見えませんが、ボディー向こうには回転するホイールがあり、アクリル板の湾曲したピースを配置しています。

アクリルのカーブにダイクロイックフィルムを張り、光を当てます。そこから生まれる色に染まった反射する光を、また透過する光を、独自に開発したミラーシステムを通して、見るのです。

映像に求めたのは、広がりと奥行きのある宇宙のような空間に展開する色模様。

誰も考えないようなアイディアを形にするスティーブン・グレイさんですが、1990年代には斬新な木工デザインと新しいミラーシステムのアイディアの万華鏡を数多く創作し、それらの貢献に対して、BKSの「創造的作品賞」を受賞していました。
数年前にBKSに復活してから、さらに歩みを進めています。今回はこの作品のために6枚のミラーを使ったシステムを考案しました。

今回、デモンストレーションでは、カレイドスコープルネッサンスの初期に発表した、パラソルカレイドスコープのミラー組みの過程を見せてくださいました。私は作家ではないので、鏡のカットにしても、組み合わせも想像もつかないことでしたが、興味深く拝見しました。見ていると簡単そうで、こんな仕組みだったのかと、その時は思いましたが、やっぱり、まだ理解が追いつかないところもあって、不思議な気持ちです。

ミラーシステムの先にカード(オブジェクトの代わり)を置いて覗いてみると、こんな映り方でした。ネガティブ・スペースを使うことで奥行きと立体感と連続性を生み出すそうです。 

黒い、深い部分があるからこそのパラソルイメージなんですね。
昨年結婚なさって、素敵な奥様と幸せそうでした。ジェロームに工房を構え、ますます意気軒高な作家さんです。

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素晴らしいコレクション(続き)

2019-07-17 11:51:13 | 万華鏡ブログ

前回に続き、カレイドスコープ・エキスポで披露されたネリー・ブライ所有のコレクションから少しご紹介します。
コージー・ベーカーさんのコレクションでさえ、彼女の没後まとまって保存されることは難しかったことを思うと、一点ものや限定版のこれらのコレクションをそろえていられることは、素晴らしく、万華鏡ファンにとっては、ありがたいことです。
上の写真で手前に見えているのはパレッティ―夫妻の1990年の”Whimsey"という作品です。彼らが木工の大型作品を創っていた時代です。たくさんのオブジェクトセルが用意されていますね。

こちらは右の2点がナップ夫妻の作品です。 ナップ夫妻は今年のエキスポでは、その技術を披露するデモンストレーションを行いましたが、万華鏡制作はもうしないそうです。 彼らは次の人生のステップに進む決断をしたことが発表されました。なんと自分たちでスクールバスを改良してモバイルハウスにし、アメリカ中を旅してまわるそうです。 万華鏡ファンとしては残念ですが、BKSの会員みんなで応援してこの旅立ちをお祝いしました。
左側の作品はスティーブン・グレイさんのパラソルカレイドスコープのひとつ、1991年に制作された"Aberrations within the eye chamber"です。彼は深い奥行き、立体感を演出する独自のミラーシステムを開発してきました。

次は同じくスティーブン・グレイさんの同時期の名作、”Phantasmis Stratumus"です。

木工のデザインの独創性は言うまでもなく、内部映像にも新たな世界を見せました。 「ほんの少しの真実とたくさんのイリュージョン」と彼は表現していますが、永遠につながる世界を筒の中の空間に生み出すことに情熱を傾けていた時代かなと思います。

ネリーブライのコレクションではありませんが、アーティスト自身が持ち込んで、こんな昔の作品も展示されました。

真鍮の管を使って、数種類の筒やオブジェクト(セルやマーブル)を見せるランプのような作品です。

 

無造作にたくさん並べられた貴重な万華鏡。記憶に留めたい作品は、まだまだたくさんありましたが、撮影の方はおいつきませんでした。

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素晴らしいコレクション 

2019-07-15 22:00:04 | 万華鏡ブログ

今年のカレイドスコープ・エキスポで大変見ごたえのあったのが、ネリー・ブライのメアリー・ウィルスさんによる「歴史的に重要な万華鏡コレクション」の展示でした。 ネリー・ブライというのはアリゾナ州ジェロームにある世界最大といわれる万華鏡専門店です。オーナーのメアリー・ウィルスさんが収集してきたコレクションの一部が会場で披露され、カレイドスコープルネッサンスの歴史を見ることができる素晴らしい機会でした。

これは1989年にヴァンコート社が制作したブッシュ・スコープ(19世紀後半アメリカで大量に生産されたといわれる万華鏡)のレプリカです。百年経って作り上げたレプリカですが、百年以上前のブッシュ・スコープの品質の高さを見せています。

コージー・ベーカーさんの本にも登場するような作品がたくさん並んでいます。 
上の写真でお気づきになった方もいらっしゃるかと思いますが、この中に中里保子さんの「ブック」という作品もありました。

特にメアリー・ウィルスさんはコーキー・ウィークスさんの作品を大変大切にしていらっしゃって、コレクションもたくさんあります。
ご存知のとおり、コーキーさんは万華鏡ルネッサンスの先頭を駆け抜けてきた創造力あふれる作家さんで、いろいろなアイディアを形にしてきた方です。 BKSでの受賞歴も多く、歴史的にも貴重な作品がたくさんあります。

素材も木、ガラス、真鍮など自由自在に使いこなし、ミラーシステムもたくさん開発なさいました。
左は「スター・エクスプロ―ジョン」という作品です。テイパードミラーシステム、両目で覗ける大きなアイホール、ミラーシステムの先が斜めにオブジェクトセルと合わさる形で、大きな星の爆発のような映像を生み出します。
いろいろな素材でこのタイプの作品がありますが、初めて私がこの種類の万華鏡を見たときに、外観のデザインの素敵さと中に展開する大きな、不思議な(その当時は本当に不思議でした)映像に驚いたことを思い出します。

右側は「フラワー」という作品で、先端部には丸いオブジェクトセルが付いていますが、大きなアイホールから見えるのは、このような映像です。

コーキーさんの作品は、このエキスポが終わってからジェロームのお店に伺ったときにも、コレクションを見せて頂きました。本当にすごい作家さんだなあと思います。 またご紹介したいと思います。
アメリカで復興した現代万華鏡の歴史は1970年代ぐらいからです。コージー・ベーカーさんが世界で始めての万華鏡展を開いたのが1985年、BKSを立ち上げたのが1986年、それから多くの作家が実に様々な作品を創り上げてきたこと、しっかりと歴史は刻まれていることを感じられるコレクションです。

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Desert Lace  砂漠のレース 

2019-07-10 23:13:46 | 万華鏡ブログ

アリゾナで開催されたカレイドスコープ・エキスポで、アリゾナならではの万華鏡が生まれました。 制作したのは、アリゾナ州ジェローム在住のシェリー・アンド・スティーブ・ホプキンス夫妻です。
その特徴は地元のサボテンを生かした万華鏡であること。 もともと木工の万華鏡を制作して25年の経歴をもつスティーブさんによる木の筒を飾るのは、サボテンの繊維です。

同じくアリゾナ州ジェローム在住のユニークなサボテンアーティストであるジョン・アンド・ローリ・ミーダー夫妻は、ウチワサボテンの一種である”プリックリーペア・カクタス”からデリケートで美しい繊維だけを取り出す方法を開発し、「砂漠のレース」としてアート作品を創っているそうです。

その「砂漠のレース」の繊細な模様を生かした万華鏡をホプキンス夫妻が制作しました。

オブジェクトセルをデザインするのはシェリーさん。 この作品ではオブジェクトにもサボテンの繊維が含まれ、独特の繊維の模様を生み出します。そのほか、銅、ランプワークによるターコイズ色のガラスオブジェクト、ビーズ、ダイクロイックフィルムやダイクロイックガラス、天然石、金属などの組み合わせで、映像もユニークで美しく展開します。 

アリゾナの赤い岩の色と銅とターコイズの組み合わせは、この地域を表す色合いです。 (景観を損なわないためにその地域にふさわしいデザインで出店するマクドナルドがありますが、セドナでは世界で唯一「M」の色がターコイズ色になっています。)

先端のオブジェクトセルは滑らかに回転するので、筒を回す必要はありません。大きめのアイホールから見える2ミラーシステム、5ポイントの映像は、オイルセルで、透明感のある青、銅色の輝き、赤い岩を思い起こさせる天然石、そしてサボテンの繊維模様が組み合わされ、ゆっくりと流れ、この地を愛する人たちよって作られた万華鏡であることが伝わってきます。

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小嶌淳さん・喜多里加さんの万華鏡展

2019-07-03 10:12:25 | 万華鏡ブログ

2019年7月2日から11日まで(8日休廊)銀座のギャルリー・ヴィヴァンさんで開催中の、「小嶌淳&喜多里加 万華鏡展」に伺いました。
素晴らしい作品が並んでいますが、トップにご紹介したのは「グリモワール」です。2017年の京都での万華鏡世界大会で初めて発表した作品です。小嶌さんの好きな謎めいた世界が演出されています。

ターンテーブルに載ったオブジェクトを映し出す万華鏡です。

喜多さんの創る陶器の筒はどれも個性的で存在感がありますね。

左は持ち上げて、先端のノブを回しながら、上から覗いて楽しみます。 縦置きの作品にはご覧のようにアイホールの埃を防ぐ蓋が付いています。3ミラーシステムの4ポイントの映像の繰り返しがきれいですね。

右側の作品はやはり持ち上げて覗き、筒全体を回して楽しみます。こちらは2ミラー4ポイントの映像です。第三面にダイクロイックガラスを使い、オブジェクトの色を映してオーラのような輝きを演出します。

こちらはワンドを交換して楽しむ作品です。少なめにオイルをいれたものやドライワンド、それぞれにユニークな映像が展開します。

ボディーを持ち上げて中のターンテーブルを交換できる瓶型の作品です。スイッチを入れるとターンテーブルが回り、照明が尽きます。

こちらはお洒落なスタンドのついた作品。 アイホールが2か所あり、二つのミラーシステムを組み込んでいます。

先端のノブを回して映像の変化を楽しみます。こんなに違う映像が楽しめてしまいます。

ご紹介したのはほんの一部、しかも一瞬の映像です。目の前を展開するその変化こそが素晴らしく、オイルの中をオブジェクトが流れるスピードも映像の自然な変化を生み出して、その世界に引き込まれる感じがします。 どの作品も見ごたえがあり、随所に作家さんのこだわりがありました。

手持ち型のアルケミストシリーズは、筒のデザイン、中のミラーシステムなど多種多彩な品ぞろえでした。 これはお気に入りのひとつ。

 それぞれの万華鏡がどれも覗いてもらうのを待っています。ぜひ足を運んでみていただきたいです。

 

 

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